24/09/27
年収300万円未満世帯の3割「子どもの学外体験ゼロ」 体験欠如が貧困の連鎖を生むって本当?
貧困の連鎖とは、親の貧困が子の貧困につながることを言います。
その原因のひとつには、家計にしめる教育費が少ないことがあげられます。教育費が少ないと進学に支障があり、子どもが社会に出てから低賃金の仕事しか選べない、といった例を聞いたことがある人も多いでしょう。
しかし、原因はひとつではありません。
親の年収が少ないと、子の学校外の体験(学外体験)にも影響があり、ひいては貧困の連鎖にもつながりかねないとの調査結果が発表されました。
今回は、親の年収と子の学外体験の関係を見ていきたいと思います。
年収300万円未満の3割が、子の学外体験ゼロ
子どもの学びや体験の機会を支援する、公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンの調査によれば、世帯年収300万円未満の家庭の子どもの約3割が、1年を通じて学校外の体験活動を何もしていないことがわかりました。
<学校外の体験がない子どもの割合(直近1年間)>
公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン「子どもの「体験格差」実態調査」より抜粋
学校外の体験活動とは、たとえば次のようなものです。
・スポーツ・運動・・・野球、サッカー、水泳、武道など
・文化芸術活動・・・ピアノ、絵画、書道、囲碁、将棋など
・自然体験・・・キャンプ、登山、スキーなど
・社会体験・・・農業体験、ボランティアなど
・文化的体験・・・旅行、博物館、観劇、スポーツ観戦、お祭など
どの体験を見ても、子どもが喜びそうなものが多く、できるだけ多くのことをさせてあげたいと思う親も多いでしょう。 ところが、そんな学外体験が1年間ゼロだった子どもの割合は、年収300万円未満では約3割、年収600万円以上では約1割、実に3倍もの格差が生じているのです。
学外体験ゼロの原因は?
実際、学外体験にはお金のかかるものが多い印象です。
スポーツには道具のほかユニフォームや遠征費用、音楽には月謝と楽器、キャンプや旅行にも何かとお金がかかります。
子どもがやってみたいと思っていることがわかっても、させてあげられない理由に「経済的な余裕がないから」をあげる割合は、年収が少ないほど多くなっています。年収300万円未満の世帯では、56.3%と実に半数以上にのぼります。
<子どもがやってみたいと思う学校外の体験をさせてあげられなかった理由>
※「保護者に経済的な余裕がないから」と回答した人の割合
公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン「子どもの「体験格差」実態調査」より抜粋
では、学外体験が実際にいくらの支出になるか見てみましょう。学外体験の支出額は年収によって差があります。
<子どもの体験活動への年間支出額(合計)>
※体験活動に参加した回答者のみ集計
公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン「子どもの「体験格差」実態調査」より抜粋
年収300万円未満では年5万4690円(月4557.5円)、年収300~599万円では年7万5400円(月6283.3円)、年収600万円以上で年12万202円(1万16.8円)でした。
実際の支出は、体験活動が影響を受けるような、たとえば食費やガソリン代なども含めるともっと多くなるかもしれませんが、意外と超高額でもないと筆者は感じました。
家計の節約や、仕事の調整など、工夫次第で捻出できる金額なのではないでしょうか。
学外体験ゼロの影響は?
子どもたちは、様々な体験を通じて自分の強みや個性を発見し、伸ばすことができます。
また、意欲や自信、学ぶ力を育む、大切な機会を得ることもできるでしょう。
さらに、学校の先生や親だけではない多様な大人とつながり、学校とは異なるコミュニティを作ることも可能です。
逆に言えば、体験がない=体験の貧困は、これらの機会を失うことにもつながりかねません。
調査結果からは、体験の貧困が子どもの文化的・社会的なリソースの蓄積をさまたげ、そのため将来の進路・職業選択・所得にも影響を及ぼすことが読み取れます。
子の学外体験ゼロが、結果として経済的・文化的格差を親子二世代にわたって連鎖させてしまうことは、未来のためにも避けたいことです。
子の学外体験には情報も大切
さて、同調査では、同じ世帯年収300万円未満でも、保護者が小学生の頃に体験活動をしていると、子どもの学外体験が増えることも紹介されています。
保護者に小学生時代の学外体験があると、子どもの体験ゼロは17.4%と少ないのです。
逆に、保護者に学外体験がないと、子どもの体験ゼロは58.1%となっています。これは大きな差ですね。
このデータから、保護者自身の体験があれば、お金のかからない体験イベントを見つけるのも上手なのではないかなと感じました。学外体験=お金がかかる、と避けるのではなく、お金のかからない情報を積極的に得ることも、大切な育児スキルなのかもしれません。
子どもと一緒に学外体験を楽しめる時期は、人生のなかで限られています。そして、学外体験を通じて、自らの強みや個性を見つけて伸ばしたり、意欲・自信・学ぶ力を育んだり、さまざまな人と接したりすることが、学ぶ意欲、さらには経済格差の解消につながっていきます。
ぜひ、充実した時にしていただきたいと思います。
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タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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