24/07/19
ふるさと納税「ポイント付与禁止」で今後どうなる?楽天の「反対署名」は100万件を突破
好きな自治体を自分で選んで寄付をおこなうことができる制度「ふるさと納税」。寄付した金額のほとんどが所得税・住民税の控除対象になることや、さまざまな返礼品がもらえることに魅力を感じ、制度を利用したことがある人も多いのではないでしょうか。
そんなふるさと納税のルールが見直されるとの発表があり、話題になっています。今回は、変更点の一つ「ポータルサイトを通じたポイント付与禁止」について詳しく見ていきましょう。
2025年10月よりふるさと納税に伴うポイント付与を禁止
総務省は、2025年10月より「寄附者に対しポイント等を付与するポータルサイト等を通じた寄附募集を禁止」することを発表しました。
ふるさと納税ポータルサイトは、全国さまざまな自治体の返礼品を掲載し、寄付者がインターネット上で簡単に手続きをおこなうことができるサービスです。「ふるなび」「さとふる」「楽天ふるさと納税」などさまざまなサイトがあり、サイトを運営する各事業者は、寄付をおこなった人に独自のポイント還元をするなど工夫して集客を競っています。
総務省は、このポイント還元競争が過熱しすぎていることを問題視。「自治体を応援するというふるさと納税本来の目的からずれているのではないか」ということで、2025年10月より、ポイント還元を実施しているサイトを通じた寄付を禁止すると発表しました。つまり、各ふるさと納税ポータルサイトは、寄付者にポイント還元をおこなうことができなくなります。
具体的には、寄付することで付与されるポイントや、キャンペーンなどで得られるポイントが規制の対象です。なお、クレジットカードで決済した場合など、決済で得られる通常のポイントは付与されます。
また、これに先立って、2024年10月からはふるさと納税ポータルサイトが返礼品を強調するような宣伝をおこなったり、広告を出したりすることも禁止となります。
ポイント付与禁止を発表した総務省の意図とは
ふるさと納税を増やしたい各自治体は、ふるさと納税ポータルサイトを運営する会社に手数料を支払い、掲載してもらうことで集客をおこなっています。
総務省が懸念しているのは、この手数料が各自治体の経費となっており、ポイントという形で寄付者に戻っているのではないか、という点です。ポイント還元をなくすことで手数料を減らし、自治体の手元に多くお金が残るようにすることで、制度を健全化しようと考えています。
実際、ふるさと納税の制度はたびたび改正されてきました。近年では2023年10月に「ふるさと納税の経費は寄付額の5割以下にする」という基準が厳格化。これを受けて各自治体では返礼品の見直しや寄付額の引き上げなどが行われました。総務省としては、ふるさと納税の本来の目的を踏まえた運用をしたいと考えているようです。
楽天の「反対署名」は100万件を突破
ポイント付与禁止が実施されると、ふるさと納税ポータルサイトを運営するさまざまな会社に大きな影響が及ぶと考えられます。そのなかで、「楽天ふるさと納税」サイトを運営する楽天グループは、総務省が発表した規制について、強く反対を表明しました。
楽天グループ代表の三木谷氏は、ふるさと納税で還元するポイントの原資は楽天グループが負担していると説明。これを禁止することは、政府が民間原資のポイントまでも禁止することになる、と言及しました。
さらに、ポイント付与禁止について「地方自治体と民間の協力、連携体制を否定するものであり、各地域の自律的努力を無力化するもの」「地方の活性化という政府の方針にも大きく矛盾している」と強く批判。総務省の告示を撤回するべく、オンラインで「ふるさと納税へのポイント付与禁止に反対するネット署名」を集めています。2024年7月9日の同社のニュースリリースによると、反対署名が100万件を突破したとのこと。集まった声を代表して告示の撤回を政府や総務省に申し入れる予定だとしています。
ポイントは禁止されるのか……今後の動向に注目集まる
総務省が発表した「ふるさと納税サイトを通じたポイント付与禁止」と、それに対する楽天の反対表明について解説してきました。
ポイント付与を禁止することで、ふるさと納税制度の健全化が見込めるかもしれません。しかし、寄付をする側としては、ポイントがもらえなくなることがデメリットともいえるでしょう。
実際にポイント付与が禁止されるのか現時点ではまだわからないため、今後の動向に注目する必要があります。ただ「2024年10月よりふるさと納税の返礼品を強調する宣伝を禁止する旨を明確化する」という発表もありますから、それまでに2024年中のふるさと納税を済ませておくと安心でしょう。毎年ふるさと納税を年末におこなっている方もいるかもしれませんが、2024年は9月中に手続きをおこなうことをおすすめします。
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木下七夏 Webライター
大学卒業後金融機関に勤め、個人のお客さま向けの営業を担当。退職後にFP2級を取得し、フリーライターに。FPで学んだ知識や金融機関勤めの経験を生かして、生活にまつわるお金の疑問を分かりやすく噛み砕いて解説する記事を作成している。
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