24/05/18
介護保険料引き上げで過去最高更新中 2024年度は手取りいくら減る?
日本では40歳になるとすべての方が介護保険に加入し、介護保険料を負担することになります。一旦、介護保険に加入すると、その支払いは生涯続いていきます。そこで気になってくるのが介護保険料の額です。
介護保険料はずっと一定ではなく、自治体により3年に1回見直しが行われています。実際、朝日新聞の記事によると、2024年4月の見直しで主要74自治体の約半数以上が月額6500円以上の水準になっており、過去最高額を更新しつづけているとのことです。
特に65歳以上になるとほとんどの方が年金生活となるため、少ない年金から天引きされる介護保険料が今後も上がり続けたら、どうやって生活をしていったらよいか不安になりますよね。そこで今回は、65歳以上の人が支払う介護保険料について、もっとも保険料が高い大阪市を例に、手取り額への影響額を実例を交えてご紹介します。
介護保険料の負担は40歳になった月以降、生涯続く
介護保険制度は、高齢者の増加および介護期間の長期化に伴い創設された社会保険制度です。この制度は、必要とされる介護を社会全体で支えることを目的としています。
介護保険は強制加入の保険であり、日本国内に住んでいる人は40歳になると介護保険の被保険者となり、保険料を負担する義務を負います。その後、保険料の支払いは生涯にわたり続きます。65歳以上の高齢者は第1号被保険者、40〜64歳の現役世代は第2号被保険者と区分され、それぞれ保険料の徴収方法や金額の決め方、給付の要件が異なります。
<介護保険の第1号被保険者と第2号被保険者>
筆者作成
第1号被保険者は、要支援・要介護認定を受ければ、介護保険サービスが利用できます。しかし、第2号被保険者は、厚生労働省が定める16種類の特定疾患※に該当した場合のみ介護保険サービスの利用が可能となっています。
※厚生労働省が定める主な特定疾患
・がん(がん末期、回復の見込みがないものに限る)
・関節リウマチ
・骨折を伴う骨粗しょう症
・初老期における認知症等
・脳血管疾患(脳出血、脳梗塞等)
など
65歳に到達すると介護保険料の支払い方法が変わる
介護保険料は、会社員のような事業所に勤務する従業員の場合、毎月の給与から天引きされます。一方、自営業者(個人事業主含む)、未就業者の方は国民健康保険料に上乗せされて納付することになります。ただし、従業員の方にしても自営業者(個人事業主含む)、未就業者の方にしても、第1号被保険者である65歳に到達した月から介護保険料の支払い方法が以下の2つのいずれかに変わることになります。
●介護保険料の支払い方法①普通徴収
普通徴収による場合は、介護保険料を納付書または口座振替により年10期に分けて納付します。また、次に該当する被保険者は一時的に普通徴収となります。
・年金の年額が18万円未満の被保険者
・年度の途中で65歳なった被保険者
・年度の途中で他市町村より転入した被保険者
・年度の途中で所得段階が変わった被保険者
・年度の初め(4月1日)には年金を受給していなかった被保険者
・被保険者が年金の受給権を担保にお金を借りている場合または現況届が遅れた場合
●介護保険料の支払い方法②特別徴収
老齢福祉年金・寡婦年金・恩給等を除いた年金の受給額について、年額18万円以上になった被保険者が対象です。年金から年6回、介護保険料が天引きされることになります。
65歳以上の人(第1号被保険者)の介護保険料の決まり方
次に、65歳以上の人(第1号被保険者)の介護保険料の決まり方についても確認しておきましょう。
介護保険の第1号被保険者は、65歳以上の方であればどなたでも対象になります。ただし、介護保険料や介護保険の自己負担額は、第1号被保険者全てが共通の負担額ではなく、被保険者それぞれの所得により区分されています。介護保険料の所得区分は、保険者である各市区町村が独自に決定します。
例えば、大阪市の第1号被保険者(65歳以上)の介護保険料は、以下のように15段階に区分されています。
<大阪市の第1号被保険者の介護保険料>
大阪市ホームページ「介護保険料について」より
介護保険料の基準額引き上げで手取り額への影響はどのくらい?
中でも全国で最も保険料が引き上げられたのが、今回ご紹介する大阪市です。
大阪市では、2024年度から2026年度の3年間、65歳以上の人が支払う基準額をこれまでの8,094円から1,155円引き上げ、月9,249円とする方針を決めました。基準額が年間10万円を超える水準まで負担が大きく膨らむことになった大阪市では手取り額への影響はどのくらいになるのでしょうか。
●65歳以上の介護保険料シミュレーション(大阪市)
65歳以上の方が支払う介護保険料は本人の年金収入や世帯収入によって増減しますので、それぞれのパターンで保険料の額の増減を計算しています。特に本人の収入が少なくても、住民税を支払っている人が同世帯にいれば保険料が高くなりますのでいくつが具体例を挙げてご紹介いたします。なお、以下は大阪市の計算例で、基準額を9,249円とした場合で計算しています。実際の介護保険料はお住まいの市区町村によって倍率などが変わります。
・パターン①同じ世帯に住民税を課税されている人がおらず、本人の合計所得金額+年金収入が80万円以下(非課税)の方
→手取りはどのくらい減る?(2023年度比)>月額約387円減少(年間約4,644円減少)
同じ世帯に住民税を課税されている人がおらず、本人の公的年金等収入が80万円以下だとすると、介護保険料は月額約3,100円(年間約37,181円)になります。
※基準額×0.335が介護保険料になります。(第2段階)
・パターン②世帯に住民税が課税されている人がおり、本人の合計所得金額+年金収入が80万円以下(非課税)の方
→手取りはどのくらい減る?(2023年度比)>月額約981円減少(年間約11,772円減少)
同じ世帯に住民税を課税されている人がおり、本人の公的年金等収入が80万円以下だとすると、介護保険料は月額約7,861円(年間約94,340円)になります。
※基準額×0.85が介護保険料になります。(第5段階)
・パターン③世帯に住民税が課税されている人がおり、本人の合計所得金額+年金収入が80万円超(非課税)の方
→手取りはどのくらい減る?(2023年度比)>月額約1,155円減少(年間約13,860円減少)
同じ世帯に住民税を課税されている人がおり、本人の公的年金等収入が80万円超だとすると、介護保険料は月額約9,249円(年間約110,988円)になります。
※基準額×1.0が介護保険料になります。(第6段階)
・パターン④本人に住民税が課税されており、本人の合計所得金額が200万円以上300万円未満の方
→手取りはどのくらい減る?(2023年度比)>月額約1,733円減少(年間約20,796円減少)
本人の合計所得金額が200万円以上300万円未満で住民税を支払っている場合、介護保険料は月額約13,874円(年間約166,482円)になります。
※基準額×1.5が介護保険料になります。(第9段階)
上記のケースはすべてを網羅するものではありませんが、世帯に住民税が課税されている人がいる場合、年金が少なくても保険料は比較的高くなる傾向があります。また、本人の年金が多いために住民税が課税されている場合にも、今回の保険料の値上げの手取りへの影響が大きいことが分かりました。
介護保険料の負担は今後も増加
介護保険料が全国的に見ても高いことについて大阪市は、1人暮らしの高齢者の割合が高く、訪問介護などの介護サービスを利用する機会が多いことなどが背景にあると分析しています。介護保険料の基準額は、多くの自治体において引き上げとなる一方で、中には据え置き・引き下げとなった自治体も中にはあるようですが、今後の介護保険制度の傾向を判断すると、急速な高齢化が進む中、被保険者の負担は右肩上がりに増加する傾向にあることは明らかです。
介護保険料の金額もそれぞれ市区町村によって異なりますので、介護保険料の見直しについて詳細をお知りになりたい方は、お住まいの市区町村の窓口で尋ねてみることをおすすめします。
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KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。
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