24/04/21
60歳貯金ゼロの人がすべきことはたった1つ
老後は年金だけではお金が足りないといっても、実際に老後を迎えたときに貯蓄がない人もいます。「これからどうすればいいのか」と、老後の生活に不安を覚えるかもしれません。しかし、たとえ60歳貯蓄ゼロであっても、できることはあります。
今回は、60歳貯蓄ゼロで老後資金に不安を感じている人が、その不安を解決するためのたった1つの方法を解説します。
60歳で貯蓄ゼロの人はどのくらいいるの?
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査)令和5年(2023年)」によると、60代で全く貯蓄がないと答えている世帯は21%でした。60代の夫婦世帯のなんと5組に1組が、全く貯蓄がないという現実です。2022年と比べると、わずかながら増加しています。さらに金融資産を持っていると答えた人のうち、200万円未満の人は10.4%いることがわかりました。
<60歳夫婦代の貯蓄の分布(%)>
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査)令和5年(2023年)より筆者作成
老後の収入が年金だけの人にとって、貯蓄がない、もしくはあったとしてもわずかでは今後の生活に対して不安があるのではないでしょうか。毎日の生活費だけでなく、病気になったとき、さらに介護状態になったときのお金まで年金から捻出するのは難しいかもしれません。将来そうならないためには、やはり現役時代の準備が大切ですが、60歳を迎えてもまだできることはあります。
貯蓄が不安な人がやるべきたった1つのことは「働く期間を延ばす」こと
貯蓄がなく、定年後の生活に不安があるならば、やるべきことはたった1つ。定年後も働き続けることです。
<年齢階級別就業立の推移>
内閣府「令和5年版高齢社会白書」より
グラフは60歳以降の就業率の推移をまとめたものです。
60歳から64歳で働いている人の割合は2022年時点で73%。多くの人が働いていることがわかります。さらに65歳から69歳まで働いている人の割合も 50.8%と、2人に1人は働いています。さらに、70歳以上、75歳以上をみても働いている人の割合は、2011年から右肩上がりに増えています。
定年退職の年齢が上がっていることも原因の1つではあると思いますが、やはり年金だけでの生活に不安を感じる人もいるもではないでしょうか。
働く期間を延ばすメリットには、次のものがあります。
●収入が増える
働くことによって毎月の収入が増えます。収入があればもちろん、その分生活が安定します。令和5年版高齢社会白書によると、「働けるうちはいつまでも働きたい」「70歳くらいまで働きたい」と答えた人を合計すると約90%。高齢期でも高い就業意欲を持っています。
●厚生年金の加入期間が延び、将来もらえる年金額が増える
厚生年金の加入期間が延びることによって、もらえる年金の金額を増やすことができます。国民年金と違って、厚生年金は70歳まで加入することができるため、将来受け取る年金額を増やすことができるのです。
さらに、働いて収入があれば、年金の受給を遅らせる繰り下げ受給も選びやすくなります。繰り下げ受給では、年金受給を65歳以降1か月遅らせるごとに0.7%年金額を増やすことができます。
たとえば、70歳まで繰り下げることによって、年金額を42%も増やすことができます。仮に65歳での夫婦での受取年金額が250万円だとすると、70歳まで繰り下げすると355万円となり、年間105万円収入が増えたことになります。
一生涯働いて収入を得ることができればいいですが、やはり年齢とともに難しくなってくることは間違いありません。ですから、健康で働けるうちはできるだけ働き、将来の年金を増やすことを考えるといいでしょう。
●社会とのつながりが維持できる
仕事を続けることで、職場の人間関係など交流を通じて、社会とのつながりを維持することができます。これは、孤独感や誰からも必要とされていないというマイナスの感情を防ぎ、精神的な安定につながります。
定年後に社会とのつながりが減ることで、認知症のリスクが高まるという国立長寿医療研究センターの研究結果もあります。ですから、社会とのつながりを維持することは重要です。
●生きがいを感じることができる
仕事は収入を得るだけの手段ではなく、社会貢献や自己実現の場としても重要な役割を果たします。定年退職後も、自身の経験やスキルを活かして社会に貢献することができます。特に、定年退職後にしかできないような、専門性の高い仕事や、人との関わりを重視した仕事は、大きな生きがいを感じられるでしょう。
また、定年後はこれまでできなかったことに挑戦するチャンスです。趣味やボランティア活動など、自分が本当にやりたいことに時間を費やすことで、自己実現を達成でき充実した老後生活を送ることができます。
働く期間を延ばすためのポイント3つ
働く期間を延ばすためには、さまざまなことに気をつけなければなりません。そこで、働く期間を延ばすためのポイント3つをご紹介します。
① 体力と健康に気を配る
長く働くためには、体力と健康を維持することが重要です。常日頃から適度な運動やバランスの良い食事を心がけ、健康管理をしましょう。また、定期的な健康診断を受け、気になる症状があれば早めに医療機関を受診することも大切です。
② 新しいスキルを身につける
社会の変化に対応し、新たな仕事に挑戦するためには、新しいスキルを身につけることが重要です。ITスキルや語学など、自分の興味や目標に合ったスキルを学びましょう。
③ 積極的に情報収集をする
定年後の働き方には、再雇用制度やパート・アルバイト、起業など、様々な方法があります。自分に合った仕事を見つけるために、積極的に情報収集を行いましょう。書籍やインターネット、セミナーなどで収集することができます。また、ハローワークや転職エージェントなどを活用することで、自分に合った仕事を見つけやすくなります。まずは、自分が興味のある分野や、自身の体力や能力に合った仕事を探しましょう。
収入を増やすだけでなく支出も見直そう
お金を使いすぎていると感じる場合は、無駄な出費を減らすことも考えましょう。定期的に支払っているものがある場合には、見直しをすることもおすすめです。家計簿をつけることで、どこにお金を使っているのかを確認することができます。例えば、月々の携帯電話料金が高い場合、プラン変更や他社への乗り換えを検討します。
買い物前にはリストを作ることもおすすめします。 具体的に、何を買うかを決めておくことで、無駄な買い物をせずに済みます。
さらに、不要なものは売却することもおすすめです。 家にある不用品や、使わなくなったものをネットオークションやリサイクルショップで売ることで、お金を手に入れることができます。
加えて、医療費でなどは高額な出費になることも考えられますので、定期的な健康診断や予防を受け、生活習慣病にならないために、適度な運動やバランスのよい食事も大切です。
日常生活でのお金の使い方に注意することで、無理なく節約することができます。
資産運用を検討する
60歳になったからと言って、資産運用を始めるには遅くありません。できる限り働いて収入を増やすのであれば、その一部を資産運用することを検討してもいいかもしれません。
例えば70歳まで働くのであれば10年間積立することは可能です。
例えば毎月1万円ずつ新NISAで運用し、年利3%で増やせた場合、元本の120万円が約140万円になる計算です。何もしなければ、そのまま使ってしまうかもしれないお金を、先取りすることでさらにその先の将来のために準備することができます。さらに、預金ではなく投資信託で運用することで、預金をしていた場合と比べて増やすことができます。
それまで運用をしたことのない人が、いきなり始めるのは不安もあるし、恐怖もあることでしょう。そんなときは、専門家であるファイナンシャル・プランナーなどに相談するといいでしょう。
定年後もできるだけ長く働き続けよう
60歳以上で貯蓄ゼロの人や、老後の収入が年金だけの場合、病気や介護状態に陥ったときのお金が不安になることもあります。そこで、定年後もできるだけ長く働き続けることを検討しましょう。働くことで、厚生年金の加入期間が延び、年金を増やすことができます。また家計を見直して支出を減らすことも考えましょう。そうすると、貯蓄ゼロからでも老後の生活費を増やすことができます。
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黒須 かおり ファイナンシャルプランナー(CFP)
女性を中心に、一生涯を見守るFPとしてmoney&キャリアのコンサルティングを行う。幸せになるためのお金の知識など幅広い資金計画とライフプランのアドバイスを手がけている。金融機関にて資産形成のアドバイザーとしても活動中。FP Cafe登録パートナー
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