22/06/13
子供名義の口座を作るベストタイミングはいつ? プロが考える子供のお金教育に活かす方法
大人が銀行に自分の口座を開設するのと同様に、子供も子供名義の口座を銀行に開設できます。子供名義の口座は、保護者が手続きすることで、0歳からでも作れます。では、子供が生まれたらすぐに子供名義の金融機関の口座を作った方がいいのでしょうか? また、子供のお金教育に活かすにはどうするべきなのでしょうか。
今回は、子供名義の口座の活用法を解説します。
子供名義の口座を作る3つの目的
まずは、子供名義の口座を作る目的を考えてみましょう。子供名義の口座を持つ目的は、大きく3つに分けられます。
●目的1:子供の教育費に使うため
教育費は子供が希望する進路によって異なりますが、大学まで進学するなら1人あたり最低1000万円、すべて私立なら2000万円以上かかります。高校までの費用は家計からやりくりするのが基本ですが、大学の費用は半年に1回、まとまったお金を入金するので、家計で用意するのは大変です。
ですから、大学資金を用意するために子供名義の口座を使うことが考えられます。目安としては、大学入学までに500万円を準備しておきたいところです。
【大学の費用の目安】
著書「はじめてのFIRE」(宝島社)より
教育費のために子供口座を作るメリットには「手をつけにくい」「子供名義で資産運用する際に子供名義口座から引き落としになる」といったことが挙げられます。しかし、教育費の準備だけが目的なら必ずしも子供名義の口座で用意する必要はありません。親名義の口座で用意しても、教育費を貯めることはできるでしょう。
●目的2:子供が大きくなってから預金をあげるため
子供名義の口座でお金を貯め、子供の成人や結婚などの際にその預金をあげよう、と考える方もいます。子供もきっと喜ぶでしょう。
しかし、子供名義の口座で貯めたお金を譲渡する場合には、贈与税に注意が必要です。子供名義の預金が名義預金(口座名義と実際に管理を行う人物が異なる口座)と扱われると、贈与税の対象となる場合があるのです。
たとえば、子供名義の口座を作ってそこにお金を貯めておいても、子供自身が通帳や印鑑を管理していない場合には名義預金扱いされ、贈与税の課税対象になる可能性があります。お小遣いや生活費の仕送りなど、扶養義務者間で、生活費や教育費として贈与した財産には贈与税がかからず、一般的に非課税です。しかし、子供名義の口座のお金がそれらに該当しないと判断された場合は、贈与税がかかるというわけです。
これを防ぐには、学費などの資金が一定金額まで非課税で贈与できる「教育資金贈与」や、年間110万円以下の贈与が非課税となる「暦年贈与」を活用しましょう。
●目的3:子供が自分のお金を管理するため
お金の管理は、大人になっても大切ですし、ずっと続きます、そのお金の管理を、子供のときから自分でできるようになれば、大人になってもお金で困ることは少なくなるでしょう。
子供名義の口座活用で教えられるお金のことは、大きく分けて3つあります。
①自分でお金を管理することで使い方を意識できること
子供が親と同じように自分専用の口座を持つことで、『これは自分が管理する大切なお金』という意識が芽生えます。この意識が、お金の使い方を意識し大切に使うようになることにつながります。
子供に手渡すお金を「お駄賃制」から「お小遣い制&お小遣い帳管理」にすることでも、同様の効果があります。筆者も、子供が小学4年生になるタイミングでお駄賃制からお小遣い制にチェンジしました。
お駄賃制のときには、手渡していたお駄賃を全部使い切っていました。しかし、お小遣い制にすることで、自分のお金という意識が生まれ、本当に欲しいもの・必要なものだけを選んで買うようになりました。自分でお金の使い方を考えるようになったのです。
日々の生活の支出をお小遣い帳に記載して管理し、まとまったお金は子供名義の口座に入れ、親子で残高状況を共有します。
大切なのは、通帳記帳もお小遣い帳の記入も、親が作業を見てあげること。少しずつでも貯まっていく成果を一緒に喜び、褒めることで、それが小さな成功体験の積み重ねとなり、子供の金銭感覚を育てます。
②「貯蓄があるからお金の使い方の選択肢が増える」ことが学べる
貯蓄することで、「買いたいものがあってもお金がなければ我慢しなくてはいけない。だからお金はあったほうが良い」という感覚が学べます。貯蓄しないでいれば、いつまでたっても大きな買い物はできません。普段から、無駄遣いをしないことにもつながっていきます。
もっとも、貯蓄の目的は「お金をただ貯めること」ではなく、「貯めたお金を使うこと」にあります。子供も、1年、2年と長期間お金を貯めるのは容易ではありません。そこで、誕生日やクリスマスといった数ヵ月先のイベントに合わせて貯めたお金を使う習慣を取り入れるのがおすすめです。プレゼントを贈って感謝される経験を通じて、「貯蓄は自分のためだけではなく、誰かに感謝の気持ちを伝えたり、喜んでもらったりするために使える」ことが学べます。
通帳の記帳やお小遣い帳の記入は、ずっと続きます。最初は目新しいので面白がって自発的にやってくれるものの、やがて三日坊主になってしまうこともあるでしょう。そんなときにお金の管理を習慣化させるために、「今日は買い物をしたけどお小遣い帳は書かなくて良いの?」などと声をかけることは大事です。
しかし、子供のお金の使い方に口出ししないようにしましょう。たとえ大人から見て無駄遣いになりそうとわかっても、我慢して子供に失敗を経験させましょう。子供のときに失敗した経験がないばかりに、大人になってから浪費してしまう…というケースもあるからです。子供の「これは買う必要なかったな」という失敗の経験が、金銭感覚を養います。
③銀行の仕組みがわかる
銀行を実際に利用することで、銀行のしくみが自然と身につきます。銀行を活用するうちに「キャッシュカードを無くしたらどうする?」「ATM手数料がかかるのはなぜ?」「手数料はいくらかかる?」「手数料の金額が銀行によって変わるのはなぜ?」などと疑問が出てくるでしょう。それを親子で共有して学ぶことで、さらにお金のことを深く知ることができるでしょう。
子供名義の口座を作るベストタイミングはいつか?
子供名義の口座は0歳からでも作れるとお話ししました。とはいえ、早く作ってもあまり意味がありません。未就学児はもちろん、小学生になったばかりの時期だと、お小遣いとは違う大きな金額は「自分のお金」という感覚が薄くなる傾向にあるようです。
筆者の家庭では小学4年生で銀行口座を開設し、まずは金額が大きいお年玉などを貯金するために活用しました。ただ、お金教育に生かすには、少し時期が早かったかなとも思っています。
お金を管理する意識を早い段階から身につけるのもいいのですが、あまり早すぎてもかえってよくわからない…となってしまうかもしれません。子供が中学生になって、管理するお金が増えてきてから開設しても、決して遅くないでしょう。
まとめ
子供名義の口座は、子供の将来のための貯蓄だけでなく、家庭で子供の金銭感覚の育成に役立てる使い方もできます。ただ、子供名義の口座を作る前に、目的は整理しておきましょう。将来子供にあげる目的なら贈与税の課税対象にならないように要注意。お金教育が目的ならまずはお小遣い制&お小遣い帳からスタートするのがおすすめです。
子供のお金の教育、どうすればいいのかわからないという方も多いでしょう。今回の内容を参考に、ご家庭でのお金の教育を考えていただければ幸いです。
今回の内容は動画でも紹介しています。ぜひご覧ください。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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