18/10/25
熟年離婚した場合、老後に必要なお金はどうやって確保すればいい?
これから熟年離婚を考えている人、今すぐは無理だけれど子どもの手が離れたら…と考えている人は少なくないと思います。熟年離婚で心配なのはやはり老後の資金。
今回は、熟年離婚でお金を確保するために覚えておきたいことをお伝えします。
年金分割は必須。共働きでも忘れずに
多くの人にとって、老後の生活を支えるのは年金です。女性が熟年離婚する場合、年金分割により年金受取額を増やせることを知っておきましょう。
年金分割ができるのは、公的年金(国民年金、厚生年金)のうち、厚生年金のみです。公的年金は保険料の納付実績にもとづき支払われますが、年金分割では離婚時に厚生年金保険料の納付実績を分けることにより、将来の年金受取額が変わるしくみになっています。
年金分割には、次の2種類があります。
① 合意分割
夫婦合意の上、結婚していた期間中の厚生年金保険料納付実績を多い方から少ない方へ分割する方法です。共働きの夫婦でも、夫の収入の方が多い場合には、合意分割により妻の年金受取額を増やせます。合意分割では、分割の割合も夫婦間で決められますが、もらう側は最大で2分の1となっています。
② 3号分割
サラリーマンの妻である専業主婦(国民年金第3号被保険者)は、平成20年4月1日以降の厚生年金保険料納付実績については、夫と合意することなく自動的に2分の1を分割してもらうことができます。平成20年3月31日以前の納付実績については、専業主婦も合意分割により分割してもらう必要があります。
なお、合意分割する場合も3号分割する場合も、離婚後2年以内に年金事務所へ行って手続きしておく必要があります。
私的年金については当事者間で取り決めを
私的年金は、公的年金に上乗せする年金です。企業年金と呼ばれるものも私的年金に含まれます。企業年金には、将来の受取額が決まっている確定給付年金や、会社が掛金を払い従業員が運用する企業型確定拠出年金があります。厚生年金基金も企業年金の一種です。私的年金には、個人で加入する個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)や自営業者などが加入できる国民年金基金もあります。
私的年金は、年金分割の対象ではありません。ただし、私的年金の原資が婚姻期間中に夫婦で築いた財産である場合には、私的年金は財産分与の対象となると考えられます。離婚時に夫婦間で話し合って合意すれば、私的年金も分けることができます。
将来受け取る予定の私的年金を財産分与してもらう方法としては、受取見込額の半分を離婚時に現金で払ってもらう方法や、年金受取後に支払いを受ける約束をする方法が考えられます。いずれにしろ、金額の算定や支払方法の決め方などが複雑ですから、弁護士などに相談の上、取り決めを公正証書にしておきましょう。
将来の退職金も財産分与が受けられる
退職金は、勤続期間中の給料の一部を退職時に後払いするものと考えられます。そのため、退職金のうち婚姻期間中の給料に対応する部分は、財産分与の対象になります。裁判実務では、退職まで概ね10年以内であれば将来受け取る退職金についても財産分与する扱いになっていますが、13年後に支払われる退職金が財産分与の対象とされた判例もあります。
なお、将来の退職金の財産分与が受けられる場合でも、夫の会社から直接払ってもらえるわけではありません。上記の企業年金と同様、離婚時に夫婦間で取り決めしておく必要があります。退職金は金額が大きいですから、老後の資金として必ず確保しておきましょう。
家を売って老後資金にする場合の注意点
子供が既に独立している場合、離婚後一人で住むには家が広すぎるため、家を売却して老後資金に充てたいという方もいるでしょう。しかし、女性は一般に、離婚後家を借りにくくなってしまうため、家を引き継ぐ方向で考えるのがおすすめです。
家の売却時には仲介手数料などの経費もかかってしまうため、その分分与を受けられる財産も減ってしまいます。持家の財産分与では、住み続ける側が出て行く側に査定額の2分の1の清算金を支払うのが原則ですが、慰謝料や将来の退職金と相殺する形で清算できるケースもあります。
なお、家をもらう場合でも、登記費用(登録免許税、司法書士報酬)がかかるほか、翌年以降は固定資産税もかかります。家の売却価格を査定してもらった上で、弁護士などの専門家に相談して検討しましょう。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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