24/08/14
障害年金の特例が10年間延長へ!もらえる人の条件は
障害年金には特例措置があり、その要件に該当すると保険料の納付要件を満たしたことになって障害年金をもらうことができます。今回、厚生労働省は障害年金の特例措置を10年間延長するようです。障害年金の特例に該当し年金をもらうには、どのような条件を満たす必要があるのでしょうか?今回は、障害年金の受給要件や特例措置に概要するケースについて解説します。
障害年金の特例が10年延長される方針
障害年金の特例とは、国民年金保険料の納付要件の特例のことです。通常、障害年金をもらうには、初診日のある月の2ヵ月前までの直近1年間に、国民年金保険料(厚生年金保険料や共済組合の保険料も含む)の納付済期間と免除期間の合計が3分の2以上あることが納付要件となっています。ただ、この保険料納付要件は厳しいという意見があります。
そこで用意された障害年金特例措置では、初診日が2026年3月末日までの場合、以下の要件に該当すれば納付要件を満たしたものとみなされて、障害年金が支給されます。
・初診日において65歳未満であること
・初診日のある月の2ヵ月前までの直近1年間に保険料の未納期間がないこと
この要件は「直近1年要件」と呼ばれています。
厚生労働省は2024年7月30日に、この2026年3月末日までの障害年金特例措置を10年間延長する方針であることを明らかにしました。1985年から始まったこの特例措置はすでに3回延長されており、今回も正式に決まれば4回目の延長となります。報道によれば、2025年の年金制度改革に反映される見通しとのことです。
障害年金を受けられるのはどんな人?
障害年金とは、病気やケガによって日常生活や仕事に制限を受けている人に支給される年金です。障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があります。
ではここで、障害年金の支給対象となる人について、障害年金の種類別に見ていきましょう。
●障害基礎年金の受給要件
障害基礎年金をもらえるのは、以下の要件にすべて該当する人です。
○障害の原因となる病気やケガの初診日が、以下のいずれかに該当すること
・国民年金の加入期間
・20歳前または日本国内在住の60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間
(※老齢基礎年金を繰り上げ受給している方を除く)
○初診日のある月の2ヵ月前までの直近1年間に、保険料の納付済期間と免除期間の合計が3分の2以上あること
(※20歳前で年金制度に加入していない場合、この納付要件は不要)
○障害認定日における障害の状態が、障害等級の1級または2級に該当していること
●障害厚生年金の受給要件
障害厚生年金をもらえるのは、以下の要件にすべて該当する人です。
○厚生年金の被保険者期間に障害の原因となった病気やケガの初診日があること
○初診日の前日において保険料の納付要件を満たしていること
○障害認定日における障害の状態が、障害等級の1級・2級・3級のいずれかに該当していること
障害年金は、病気やケガがあったとしても、すぐにもらえるわけではありません。原則として、その病気やケガで初めて医師の診察を受けた「初診日」から1年6ヵ月後の「障害認定日」以降に請求することでもらうことができます。
障害年金の支給額
障害年金の支給額は障害年金の種類別に決められています。
●障害基礎年金の支給額
障害基礎年金の支給額は障害等級により異なり、支給額は毎年改定されます。2024年4月からの支給額は以下の通りです。
・障害等級1級の場合:102万円
・障害等級2級の場合:81万6000円
また、障害基礎年金の対象者に以下に該当する子がいる場合、子の加算額が上乗せされます。
・18歳になった年度の3月31日までの子
・20歳未満で障害等級1級・2級の状態にある子
・子の加算額
2人目まで:1人につき23万4800円
3人目以降:1人につき7万8300円
●障害厚生年金の支給額
障害厚生年金の支給額は、厚生年金の報酬比例部分により決まります。
・1級:報酬比例部分の年金額×1.25
・2級:報酬比例部分の年金額
・3級:報酬比例部分の年金額(※3級には最低保障額あり:61万2000円)
報酬比例部分の年金額は以下のように求めます。
<報酬比例部分の年金額=A+B>
A(2003年3月以前の加入期間)
=平均標準報酬月額(※1)×7.125/1000×2003年3月までの加入期間の月数
B(2003年4月以降の加入期間)
=平均標準報酬額(※2)×5.481/1000×2003年4月以降の加入期間の月数
(※1)平均標準報酬月額とは、2003年3月以前の被保険者期間にあたる標準報酬月額の総額を2003年3月以前の加入期間で割った額のこと。
(※2)平均標準報酬額とは、2003年4月以降の被保険者期間にあたる標準報酬月額の総額と標準賞与額の総額の合計額を、2003年4月以降の加入期間で割った額のこと。
また、1級と2級の該当者に加給年金の対象となる配偶者がいる場合、加給年金額が加算されます。
・加給年金額:234,800円
受給者に寄り添った対応に期待
障害年金には保険料の納付要件がありますが、初診日が2026年3月末日までになる場合、特例で納付要件を満たしたことになり障害年金が支給されます。
今回、厚生労働省は障害年金の特例を2026年3月末日から10年間延長する方針を明らかにしました。厚生労働省の資料には「障害年金の特例措置は今回で4回目となり、もう役割は終えている」という意見もあります。しかし、この特例措置によって障害年金をもらいながら生活を維持している人もいます。
すべての国民に対し最低限度の生活を保障する観点から、今後も受給者に寄り添った対応を期待したいです。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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