20/09/11
借金が返せない場合の3つの債務整理、任意整理・個人再生・自己破産の違いは?
家や車などの高額な買い物をするときは、どうしてもローンを組まなくてはならないことがあります。無理のない返済計画を立てて、その通りに返済できていれば問題はないのですが、無理のある借金だったり、先々の収入予測が曖昧だったりすると返済ができなくなることがあります。場合によっては、病気や事故などの不測の事態により返済が難しくなってしまうケースもあるのです。
借金の返済が困難になった場合は、債務の金額を減らしてもらったり、支払えないことを認めてもらったりする債務整理が必要です。
この債務整理には、代表的なものに任意整理、個人再生、自己破産といった方法があります。
今回はこの3つの方法の違いをご紹介します。
専門家に借金減額の交渉をしてもらう「任意整理」
「任意整理」は弁護士もしくは認定司法書士に依頼し、自分の代わり(代理人)に借金の減額の交渉をしてもらう制度です。法律的に効力がある方法ではありませんが、金融機関も比較的素直に交渉に応じてくれます。交渉して返済しなくてはならない借金の金額がきまったら、無利息で3年~5年かけて返済します。
●任意整理のメリット
・法律家に代理人になって資料作成や借入先との交渉をしてもらうため、法的知識もほとんど必要なく任せることができる
・法律家が「任意整理」の代理人になったことを、借入先に伝えた時点で利息と遅延損害金の発生がストップし、取り立ても止まる
・複数の金融機関から借り入れしていても、「任意整理」をする借入先を選ぶことができる
●任意整理のデメリット
・収入がなければ法律家は引き受けてくれない
・法律家への報酬がかかる
・法的な手続きではないので差し押さえなどは止めることはできない
・交渉が必ずうまくいくとは限らない
・5年間はブラックリスト
●手続き方法
弁護士や特定司法書士に相談。委任し、借入先に交渉をしてもらいます。
借金額を約5分の1にしてもらう「個人再生」
「個人再生」は民事再生法という法律を利用した債務整理の方法で、将来的に収入の見込みがある人が利用できます。借金の総額が5000万円以下(住宅ローンを除く)であれば、再生の計画をたてて、返済する借金の一部を免除してもらい、借金額を約5分の1に減額してもらう事ができます。
その後、減額された借金を3年間(特別な事情があれば5年)で分割返済していくという方法です。
個人再生は、借入先の同意が必要な場合と、必要でない場合があります。
●個人再生のメリット
・債務が減額されるため返済が楽になる
・住宅(自宅)を処分しないで債務整理ができる
・現在持っている財産を処分する必要がない
・手続きが開始されれば、差し押さえはされない
・家族にも知られず債務整理ができる
●個人再生のデメリット
・再生中に返済ができなくなった場合は手続きが無効となりすべての借金が元に戻る
・住宅ローンは減額されない
・5年~10年間はブラックリスト
・官報という国の発行する機関誌に名前と住所がのる
・手続きが煩雑なため、法律家へ依頼するため報酬と裁判所へ納めるお金(約50万円)が必要となる
●手続き方法
弁護士等に依頼し、地方裁判所へ申し立てをしてもらいます。要件を満たし書類に不備がなければ開始が決定します。借金額が確定後、再生計画書を作成したのち、裁判所が認めれば返済をスタートさせます。
借金を免除してもらう自己破産
「自己破産」は返済できない借金を自ら申請し法律によって免除してもらう制度です。
しかし、必ず借金が免除されるわけではありません。詐欺やギャンブル浪費などで作った借金は免除されないこともあります。
●自己破産のメリット
・無職や生活保護など収入のない人でも利用できる
・差し押さえを止めることができる
・税金など以外の借金が免除されるため精神的に楽になる
●自己破産のデメリット
・多くの財産を持てなくなるため、財産を処分しなくてはならないことがある
・官報という国の発行する機関誌に名前と住所がのる
・借金免除が認められるまで就けない職業がある
・場合によっては財産整理のための管財人が(弁護士)がつくため費用がかかる
・5年~10年間はブラックリスト
●手続き方法
住所地管轄の地方裁判所に本人または代理人である弁護士が申請をします。自己破産の申請と借金を免除してもらう「免責許可」の申請は別のため、同時に2つの申請をすることになります。
本人申請は書類等の作成を自分で行うため不備が多く、本人申請をあまり認めないという地域もあるので確認が必要です。
自己破産は最後の手段
借りたものは返すのが基本です。借金が返せない=自己破産と考えがちですが、他の方法を模索してもどうしても返済が難しかったり、病気などの事情があったりすれば仕方がありませんが、やはり失うものも多いので、返せないときにはしっかり先々を考えて、方法を吟味する必要がありあます。また、返済が厳しくなったら放っておかずにまずは借入先に相談し、返済スケジュールを変更してもらう交渉をしてみることも必要です。
しかし、そのようにならないためにはやはり、資金計画と返済計画が重要であることを認識したいものです。
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廣木 智代 ファイナンシャルプランナー(CFP)
結婚後、家業のスナックで手伝いをしていたが母の引退と共に廃業。家計の苦しさを埋めるための我が家の保険の見直しをきっかけに、お金に賢くなるお手伝いをするべくCFP資格を取得。心と体とお金の健康バランスを軸に、個別相談、セミナー、執筆を展開中。最近はラジオCRT栃木放送にて「賢くなる座談会」を放送中。FP Cafe登録パートナー
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