18/10/20
扶養の壁が「82万円」へ引き下げの可能性。パートの働き方はどう変わる?
専業主婦(夫)にパート収入があると、扶養を気にする方は多いと思います。
社会保険の扶養に入るためには、パートの年収を130万円(106万円)未満に抑える必要があるからです。
しかし、今後この条件が82万円に引き下げられる可能性があることをご存知でしょうか? パートで働く方の「新しい壁」となるかもしれません。
今回は、この82万円の壁について、事前に知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。
これまでの社会保険の壁は106万円または130万円だった
夫の社会保険の扶養になれるのは、原則として妻のパート年収が130万円未満(パート先の従業員が501人以上の場合、106万円未満)です。
厳密には、もう少し細かな要件があります。それぞれ、以下のすべてを満たせば社会保険の扶養に入ることができます。
〇130万円の壁
・見込み年収が130万円未満
・週の所定労働時間と月の所定労働日数が正社員の4分の3未満
・夫の年収の半分未満
〇106万円の壁
・週の所定労働時間が20時間未満
・雇用期間が1年未満の見込み
・給与が月額88,000円未満
・パート先の従業員が500人以下
今後、扶養の条件となるこの収入ラインが、82万円に引き下げられるかもしれません。そうなれば、年収が現在82万円以上の場合、扶養を維持するなら手取りが減ることになります。月収は6万8000円(年収82万円)に抑えなければならなくなり、月約2万円の収入減になるでしょう。
また、年収82万円を超える場合は、最低でも月1万2000円の社会保険料を負担することになります。
なお、82万円の壁ができれば106万円の壁はなくなります。また、夫の社会保険の扶養の条件に妻のパート先の従業員の数が関係なくなれば、130万円の壁もなくなるでしょう。
82万円の壁ができれば、社会保険に加入する人が増えます。
社会保険に加入するメリットもある
こう書くと、社会保険に加入することが、良くないことだと思われるかもしれません。
しかし、ただ単に社会保険料の負担が増えるだけではありません。
社会保険に加入するメリットは3つあります。
〇傷病手当金や出産手当金がもらえる
夫の扶養として社会保険に加入していても自分で加入しても病院の診察代や薬代は3割負担です。
しかし、扶養のままだと、妻は傷病手当金や出産手当金の対象になりません。妻が社会保険に加入すれば傷病手当金や出産手当金の支給対象になりますので、いざという時に心強いでしょう。
〇将来の年金が増える
夫の社会保険の扶養のままでは、年金は国民年金分にとどまります。社会保険に加入することで国民年金に厚生年金が上乗せされます。社会保険に加入した期間に応じて将来受け取る年金が増えることになります。
〇障害厚生年金、遺族厚生年金が手厚い
社会保険に加入すれば、夫にも障害厚生年金や遺族厚生年金を受け取る権利が生まれるなど、国民年金と比べて幅広く手厚い給付が期待できます。
「82万円の壁」の背景には、正社員だけでなくパート従業員にも社会保険のサービスを平等に受けられるようにする、という狙いがあるのです。
どうすれば手取りの年収を増やせるか?
82万円の壁は、すでに厚生労働省で検討されています。この法律を作るための会議は早くて2020年に行われるといいます。スムーズにいけば、その翌年の2021年から82万円の壁が誕生することになります。
そこで気になるのが、「82万円の壁ができたとき、自分はどうすれば手取りの年収を増やせるのか」だと思います。
タイプ別にまとめてみました。
〇2021年以降、82万円に抑えたほうがいい人
パート先の従業員数の要件がない場合、社会保険加入前に比べて手取りが増えるのは、年収96万円を超えてからです。パート年収が82万円以上96万円未満の場合は年収82万円と比べて手取りが少なくなります。ギリギリの人はパート年収を82万円に抑え、夫の社会保険の扶養のままが良いでしょう。
〇2021年以降、130万円(106万円)まで稼いでいい人
パート年収が96万円以上にできるならば、130万円(106万円)まで稼ぐのがいいでしょう。従業員数の要件は、82万円の壁がスタートする前にチェックしましょう。
〇2021年以降、130万円(106万円)以上稼いでいい人
パート先の従業員数の要件がある場合、社会保険加入前に比べて手取りが増えるのは、年収150万円を超えてからです。年収が130万円以上150万円未満の方は、130万円に抑えるか、150万円以上稼ぐかという選択肢が増えることになります。
まとめ
「82万円の壁」によって夫の社会保険の扶養を外れると、出費が増えて損してしまうという印象があるかもしれません。
しかし、妻が社会保険に加入することで、傷病手当金などの給付金も支給対象となり、さらに将来の年金が増えるなどのメリットがあります。
社会保険の扶養を外れ、おもいっきり働くという選択肢もアリかもしれません。
【関連記事もチェック】
・パート主婦必見!10月から最低賃金アップなのに手取りが減るって本当?
・パートで働く女性必見! 短時間労働者の社会保険適用拡大
・パート主婦がiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)の恩恵を得つつ働くならば〇〇万円以上
山田 香織 中小企業診断士、 1級ファイナンシャル・プランニング技能士
FP歴10年。会計事務所で11年間、経営・税務相談業務を経験した後、FP事務所を開業。
個人から中小企業者まで経営に関する相談実績がある。現在は、会計・税務の経験を活かして、家計・経営相談を受ける。執筆活動も積極的に行う。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう