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18/06/08

相続・税金・年金

おっさんずラブの素朴な疑問「部長の元妻(蝶子さん)の年金はどうなるの?」

今シーズンのヒットドラマ、「おっさんずラブ」を見ていた方も多かったのではないでしょうか。部長、春田、牧の恋の行方にハラハラドキドキでしたね。ドラマではハッピーエンドでめでたしめでたし。

しかし、ファイナンシャルプランナー目線からは、離婚した蝶子さんの年金はどうなるの? と心配になってしまいました。慰謝料の話も出ていなかったし。
そこで今回は、蝶子さんの老後資金について考えてみました。

離婚したら厚生年金部分は分割できる

会社員は厚生年金に加入しているので、部長も給与から厚生年金保険料を払っていたはずです。厚生年金に加入している会社員に養われている配偶者は、保険料を払わなくても、国民年金を受取れる仕組みになっています。扶養されている配偶者を、第3号被保険者と言います。

蝶子さんが専業主婦、もしくは働いていたとしても扶養の範囲内であれば、このケースにあてはまり、離婚をしても基礎年金部分は受取れることになります。ただし、離婚後はきちんと手続きをして、国民年金保険料を60歳まで支払わなければ満額受取ることはできません。

しかし、満額を受取ったとしても、年額77万9300円(2018年4月以降)ですから、1カ月あたり約6万5000円。これでは今までの暮らしぶりからすると、厳しい老後生活になってしまうのではないでしょうか。

そこで、離婚時の「年金分割制度」を利用すると、婚姻期間の厚生年金部分が元夫と元妻で分けることができます。つまり、蝶子さんの年金額を増やすことができます。

2007年に始まった離婚時の厚生年金の分割制度は、分割することに双方の合意、または裁判手続きによって按分割合を定める必要がありました。そのため、元妻が分割を希望しても、元夫が応じないために分割されないケースが多くありました。

その後2008年に、3号分割の制度ができて、2008年以降の第3号被保険者期間については、元夫婦のどちらか一方からの請求でも、厚生年金の保険料納付記録を2分の1に分割することができるようになりました。

年金分割の請求は、離婚後2年以内

専業主婦などの3号被保険者は、分割を受けなければ基礎年金のみの受取りです。婚姻関係にあった時期、夫の給与から支払われた保険料は夫婦のものという考えから、3号被保険者は元配偶者の合意がなくても分割ができるようになったのは大きなことでしょう。

分割請求は、離婚後2年を過ぎると請求できません。離婚前後は何かと大変なことが多いのですが、お金のことは後々まで影響する大切なことですので、忘れないようにしたいですね。

ドラマの中で、蝶子さんは働いていたようなセリフがありましたが、部長が帰って来た時に夕食を作っていたので、短時間のパートのような仕事で第3号被保険者と想像しました。
蝶子さんが分割請求すれば、2008年以降の年金保険料納付記録は2分の1が分割できるのですが、離婚後も仲が良かったですし、部長は優しくて男気もあるので、蝶子さんがお金で苦労するようなことはなさそうです。

再婚したら、年金はどうなる?

蝶子さんは50歳ですが大変魅力的な女性です。離婚後は部長の部下、まろ君といい雰囲気でした。
蝶子さんが再婚したら、分割された年金はどうなるのでしょうか。結論から言って、再婚しても分割された年金はそのまま、変わることはありません。元夫に戻るということはないのです。

これは、分割されたのは「保険料の納付記録」だからです。給付された年金の厚生年金部分を2分の1ずつ分けているのではなく、保険料の納付記録の分割。つまり、婚姻期間中は妻も保険料を払っていたものとして、将来の年金額が計算されるのです。

再婚しても年金面でのデメリットはないのですが、分割されて増える年金はいくらくらいなのでしょうか。
これは、部長が払った保険料にもよるので一概にはいえませんが、年金の受給モデルを参考にすれば、月数万円~5万円程度の増額になるでしょう。

厚生年金保険料は、収入が増えれば保険料も増えます。そして受取る年金額も増えます。部長は経済力もあり、年収も多そうでしたが、厚生年金の保険料は月の収入が63万5000円を超えると頭打ちで増えません。つまり、年金額は年収1000万円と1500万円で違いはないということです。

人生100年時代では、50代はまだ折り返し地点。新しいパートナーを求めて、離婚、再婚も珍しくなくなってきました。
部長と蝶子さんは、これからも仲良く良い関係が続いていきそうな感じでした。部長はフラれてしまったけれど、新しい幸せを見つけてほしいと思いました。

タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)

36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー

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