23/02/11
年金の確定申告が面倒くさい…やらなくても問題ないのか
毎年2月から3月になるとやってくる確定申告。さまざまな控除を利用すると税金が還付されるメリットがあります。その一方で、書類の管理や確定申告書の作成に手間がかかり、確定申告の手続きを面倒に感じる方も少なくないでしょう。
実は年金収入がある方のうち、一定の条件に当てはまれば確定申告が不要であることをご存知でしょうか。今回は、年金の確定申告不要制度についてお伝えします。
「たった9,000円しか還付されなかった」確定申告を面倒に感じたAさんの事例
年金受給者のAさんは、医療費控除と生命保険料控除を利用するために、毎年確定申告をしています。
病院や薬局でもらった領収書や保険会社から送られてくる生命保険料控除証明書をなくさないように保管し、確定申告に必要な書類を何枚も記入。繁忙期で混んでいる税務署に3時間も並んで手続きを済ませました。
1ヶ月半後に銀行で記帳したAさんは、通帳に記載された金額を見てがっかりしました。所得税の還付金がたった9,000円だったのです。
Aさんは、慣れない手続きにこんなに時間と労力をかけたのに、たった9,000円しか戻ってこないならメリットを感じない。面倒だからやらなくてもいいのではないかと感じたそうです。
確定申告不要制度とは?
確定申告不要制度とは、年金受給者の確定申告にかかる手間を減らすための制度です。
一定の条件に当てはまる方であれば、確定申告をする必要がありません。
確定申告不要制度の対象となるのは、以下の2つの条件のどちらにも当てはまる方です。
1. 公的年金等の収入金額の合計が400万円以下であり、かつその公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる
2. 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である
●確定申告が必要か不要かのフローチャート
政府広報オンラインより
つまり、もらっている年金額が400万円以下で、収入が年金のみであれば確定申告をしなくても問題ありません。
次に、公的年金が源泉徴収される場合と、平均年金月額について確認していきます。
公的年金から所得税と復興特別所得税が源泉徴収されるのは、65歳未満で108万円、65歳以上で158万円以上の老齢年金をもらっている方です。
また、厚生労働省の「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、厚生年金保険の老齢給付の平均年金月額(基礎年金月額を含む)は約14万6,000円。年換算すると175万円ほどです。収入が公的年金のみの方のうち、ほとんどの方が上記の条件に当てはまります。
ただし、公的年金以外に収入がある方は、確定申告不要制度に当てはまる場合でも、住民税の申告が必要です。確定申告不要制度は所得税のみが対象のため、注意しましょう。詳しくは、お住まいの市区町村に問い合わせることをおすすめします。
控除が使えるなら確定申告するのがおすすめ
このように、年金受給者のうち、ほとんどの方は確定申告をする必要がありません。
しかし、Aさんの事例のように還付される税金が年間9,000円であれば、20年続ければ18万円にもなります。これだけまとまった資金があれば、旅行や趣味のお金に使うこともできるでしょう。
また、メガバンクの1年定期預金の利率は0.002%なので、100万円を銀行に1年預けてもらえる利息は税引き後で16円です(2023年1月時点)。このことを踏まえると、数千円しか戻ってこない確定申告も、メリットのほうが大きく感じられるのではないでしょうか。
さらに、医療費控除はかかった医療費に応じて控除額が変わってきます。そのため、今後医療費が増えてくると、還付される税金も増えます。控除できるものがあるのであれば、毎年欠かさず確定申告を行った方がいいでしょう。
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たにぐち まりえ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士
新卒で大手銀行に入社し、個人営業に13年間従事。資産運用や相続対策、アパートローンなど、幅広い業務を経験。プライベートでは1児の母。出産を機にキャリアと育児の両立に悩み、自分らしく生きるためにコーチングを学ぶ。現在は金融系記事の執筆や、FP×コーチングで女性の人生を豊かにするための活動を行っている。
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