16/02/17
配偶者との離婚・死別で利用できる所得控除とは?
生命保険や住宅ローンの証明書が手元に届く季節となり、早くも勤務先へ書類の提出が始まっています。この証明書は、年末調整や確定申告で所得控除を受けるために必要なのですが、配偶者と離婚や死別した場合に利用できる所得控除があるのをご存知でしょうか。意外と知られていない寡婦(夫)控除のポイントを紹介します。
難しい用語も出てきますが、適宜、丁寧に解説していきますね。
そもそも「所得控除」ってなに?
「所得控除」とは、「税金を計算する前に所得から差し引かれる金額」のことで、所得控除が多くなるほど支払う税金が少なくなります。税金を払う金額が少なければ、使える金額が増えるので家計は助かりますよね。所得控除には、「生命保険料控除」「住宅ローン控除」の他に、最近話題の「ふるさと納税」をしたときに利用できる「寄付金控除」や、医療費がたくさんかかったときに利用できる「医療費控除」などがあります。
寡婦(夫)控除も所得控除のひとつで、サラリーマンであれば、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の所定欄に丸印をつけるだけで申請できます。個人事業主の場合、確定申告時に本人該当事項の寡婦(寡夫)控除欄にチェックすることで申請できます。離婚・死別となった年だけでなく、要件に当てはまる間ずっと使えるという特色があります。
「寡婦控除」ってなに?
女性の納税者が寡婦の場合に27万円の所得控除が受けられるのが「寡婦控除」ですが、そもそも「寡婦」って何?と思われる読者も少なくないでしょう。「寡婦」とは次のどちらかに当てはまる人です。
①夫と死別・離別したあと再婚していないか夫の生死が不明の人で、扶養親族がいる人
②夫と死別したあと再婚していない人で、合計所得金額が500万円以下であること
※扶養親族とは生計を一にし、合計所得金額38万円以下で他の家族の扶養親族となっていない人です。
また、次のすべての要件を満たす場合には【特定の寡婦】として35万円の控除が受けられます。
①夫と死別し、若しくは離婚したあと再婚していないか、夫の生死が不明の人
②扶養親族である子どもがいること。
③合計所得金額が500万円以下であること
寡婦控除の男性版の「寡夫控除」も合わせて覚えておきましょう。こちらは、男性の納税者が寡夫の場合に27万円の所得控除が受けられるのが「寡夫控除」です。要件は、寡婦控除より厳しく、前述の【特定の寡婦】と同じです。
会社に知られたくない場合はどうすればいい?
寡婦(夫)控除を受けるには、いつ離婚・死別したかを勤務先に伝える必要があります。会社に内緒で控除を受けたい場合は、年末調整で申請せず翌年に確定申告をしましょう。ただ残念なことに、婚姻していたことが前提で受けられる控除なので、事実婚には適用されません。お住まいの地域によっては、申し出により保育料が減免される場合などもあるようなので、詳しくは各自治体にお問い合わせください。
生活環境が変わると使える制度も変わります。対象になる控除がないかを確認しておくことも家計を管理するうえで大切なことですね。
年収300万円の会社員で17歳の子供を扶養している場合の例
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辻本 由香 おふたりさまの暮らしとお金プランナー
企業の会計や大手金融機関での営業など、お金に関する仕事に約30年従事。27歳で阪神大震災、43歳で乳がんを発症した経験から、備えることの大切さを伝える活動を始める。現在は奈良で独立系のFP事務所を開業。セミナーを主としながら、子どものいないご夫婦(DINKS・事実婚)やシングルの方の相談業務、執筆も行っている。著書『がんを生きぬくお金と仕事の相談室』(河出書房新社)。
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