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23/02/16

相続・税金・年金

2023年度の年金額はいくら?67歳以下と68歳以上で違うのは本当か

2023年度の年金額はいくら?67歳以下と68歳以上で違うのは本当か

50歳以上の場合、毎年の誕生月に届く「ねんきん定期便」には、将来もらう予定の年金額が記載されています。しかし、その年金額はあくまで目安の年金額であり、年金額は毎年見直されるルールとなっています。
今回は、2023年度にもらえる年金額はいくらなのかをご紹介。公的年金の年金額改定の基本の仕組みについて、分かりやすく解説いたします。

2023年度の年金額の満額は3年ぶりの増額改定に

このところ、物価の上昇(インフレ)の影響を強く感じている方も多いのではないでしょうか。物価が上昇したなら、本来はそれに合わせて年金額も増えないと、年金受給者の生活は苦しくなってしまいますよね。

年金額は、インフレ時などに年金の経済的価値を維持するため、毎年見直されるルールとなっています。厚生労働省は2023年度の公的年金の支給額を、すでに受給している68歳以上の人は前年度から1.9%、67歳以下で新しく受給を始める人は前年度から2.2%引き上げると発表しました。公的年金の支給額が増額改定するのは、2020年度以来、3年ぶりです。

過去3年間の国民年金の満額の推移は以下の通りです。

●過去3年間の国民年金の満額の推移

筆者作成

なお、2023年度の年金額は4月より適用されますので、実際に増額になった年金額が支給に反映されるのは4月・5月分の年金をまとめてもらう2023年6月からとなります。

年齢によって年金額が異なるのはなぜ?

これまでと違い、2023年度の国民年金の満額は、67歳以下の方と68歳以上の方で異なります。年金額が年齢により異なる金額となっている理由は、年金改定の仕組みにあります。

まず、年金受給者を「新規裁定者(新たに年金をもらい始める人)」と「既裁定者(既に年金をもらっている人)」とに分けています。新規裁定者と既裁定者では、年金の改定に用いる数字が異なります。新規裁定者の場合はまだ現役世代に近いため、現役世代の収入の変化に応じた「賃金変動率」、既裁定者の場合は年金受給世代であり、年金額の実質的な価値を維持するため「物価変動率」を利用して改定を行います。

2021年度、2022年度の改定では「物価変動率が賃金変動率を上回る場合は、賃金変動率に置き換える」といったルールが適用されたため、年齢による増減率の違いはありませんでした、しかし、2023年度は原則通りとなったため、増減率が年齢によって変わることになっています。

また、「67歳以下」「68歳以上」で区切られているのを不思議に思う方もいるでしょう。これは、賃金変動率の計算をするときに2~4年度前の3年平均から算出していることが理由です。

もし、年金額を直近年度のみの賃金変動率で計算してしまうと、年金額はコロナショックのような一時的で大きな経済変動の影響をもろに受けてしまいます。そこで、対象年度中に到達する年齢が67歳以下の受給者を「新規裁定者」、68歳以上の受給者を「既裁定者」として扱い、直近年度の影響を和らげているのです。

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「マクロ経済スライド」により、実質的には目減り

総務省の2023年1月20日の発表によると、賃金変動率は前年(2021年)比2.8%増で、物価変動率は前年(2021年)比2.5%増でした。

上で説明した通り、これがそのまま年金額に連動すれば、新規裁定者の年金額増加率は2.8%、既裁定者の年金額増加率は2.5%増で改定となるはずです。しかし、実際の上昇率はそれよりも0.3~0.6%少ない1.9~2.2%増にとどまっています。世の中の物価と賃金は上がったのに、年金額の上昇率はどうしてそれよりも低くなっているのでしょうか。

それには、「マクロ経済スライド」が関係しています。マクロ経済スライドとは、社会情勢(現役世代の人口減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整するしくみです。

実は、年金額の見直しは2段階で行われています。現役世代の賃金や世の中の物価の変動を反映する本来の改定に加えて、2005年4月からは高齢化の進行や現役世代の増減により年金額の伸びを抑えるための調整率であるマクロ経済スライドが実施されることになりました(各種の条件によりマクロ経済スライドが発動されない年度もあります)

2023年度の年金額は、マクロスライドで以下のように調整されています。

●2023年度の「マクロスライド調整率」

筆者作成

2023年度は物価や賃金がプラスとなりましたが、マクロ経済スライドによってそこから0.6%が差し引かれるため、年金額は67歳以下で2.2%増、68歳以上で1.9%増にとどまるというわけです。年金額は、物価ほどに増えていないので、実質的には目減りすることになります。

在職老齢年金の支給停止額は1万円の引き上げに

また、65歳以降も厚生年金の被保険者となる形で働く場合、給与と年金との調整の仕組み(在職老齢年金)における「年金支給停止額」も、「賃金変動率」に応じて以下の通り改定が行われます。なお、年金支給停止額の改定は、1万円単位で改定されます

(改定前:2022年度)
年金支給停止額(月額換算額)=(基本月額+総報酬月額相当額-基準額47万円)÷2
(改定後:2023年度)
年金支給停止額(月額換算額)=(基本月額+総報酬月額相当額-基準額48万円)÷2

2022年度の47万円から、2023年度は48万円に1万円ほど引き上げされますので、年金を受給しながら働く方にとっては、朗報といえるでしょう。

とはいえ、年金月額と給与月額との合計額が48万円を超えなければ、年金は減額される心配はないので、従業員の方であれば年金が全額もらえるか一部支給停止で済む方が多いでしょう。しかし、特に経営者や会社役員の方の場合で役員報酬を多くもらっている場合、年金月額と給与月額との合計額が48万円を超えると、特別支給の老齢厚生年金や老齢厚生年金(報酬比例部分)は一部または全額が支給停止となってしまいますので注意しましょう。

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まとめ

2023年度の年金額は増額になったとはいえ、物価の上昇と同じ程度には増えていないので実質的には目減りしているということが分かりました。公的年金制度を維持するためとはいえ、物価の上昇に伴い、年金などの収入が増えなくては、実際の生活は苦しいままです。

この先もこのまま物価上昇が続くとしたら、年金だけではますます生活が苦しくなるかもしれません。たとえば資産運用をしたり、65歳以降も働き続けたりするなどして、目減り分を補う工夫が大切になってくるでしょう。なるべく早い段階から年金の目減りへの対策を考えておくことが必要です。

KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士

長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。

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