22/08/16
知らない人多数!配偶者控除・配偶者特別控除 誰がいくら節税になる?
税金の仕組みはわかりづらい部分も多く、聞いたことはあっても詳しくは知らない、ということは珍しくありません。実は、「配偶者控除」もそのひとつ。
今回は、意外と知られていない配偶者控除について、お伝えします。
8割以上の人が配偶者控除をきちんと理解していない
保険サイト「コのほけん!」を運営する Sasuke Financial Labの調査「配偶者控除の廃止と子育て支援策の所得制限に関するアンケート調査」によれば、配偶者控除の制度について、「詳しく知っている」と回答した人はわずかに15.1%。「知っているが詳しくない」と回答した人は52.7%にものぼりました(2022年7月2日公表)。
●配偶者控除の制度についてどのくらい知っている?
Sasuke Financial Lab「配偶者控除の廃止と子育て支援策の所得制限に関するアンケート調査」より
配偶者控除のことを「知らない」人も32.2%いますので、合わせて8割以上の人が配偶者控除のことをきちんと知らないことになります。
所得控除は所得を差し引いて所得税を安くできる仕組み
配偶者控除のことを理解するには、まず所得控除を理解しておく必要があります。
所得税は所得に対してかかる税金ですが、同じ年収なら誰でも同じ税額になるわけではありません。たとえば、一人暮らしの独身の人と、家族を養っている人が同じ年収だからといって同じ税金がかかるのは、不公平だからです。
そのため、養う家族=扶養家族がいる人や高額の医療費がかかった人など、一定の要件に当てはまる人の税金を所得から差し引く(控除する)ことで、所得税を安くできる仕組みがあります。これが所得控除です。
所得税の金額の決まり方を見ていきましょう。
まず、収入から経費(会社員の場合、給与所得控除)を差し引き、給与所得を計算します。
給与所得から、所得控除を差し引いたものが、所得(課税所得)です。
そして、所得に応じて、5%〜45%の税率をかけて、所得税が計算されます。
ですから同じ収入でも、所得控除が多ければ所得が減って、所得税が減るというわけです。
所得控除には、扶養家族がいる人のための「扶養控除」、高額の医療費がかかった人のための「医療費控除」、生命保険料を支払った人のための「生命保険料控除」など、15種類あります。これら所得控除のひとつに「配偶者控除」があります。
一定の所得以下の配偶者がいるときに受けられる「配偶者控除」
配偶者控除は、配偶者がいるときに受けられる所得控除です。配偶者控除は、納税者本人の所得が1000万円以下である場合に受けられます。
配偶者控除を受けるには、以下の4つの要件をすべて満たすことが必要です。
・民法上の配偶者である(内縁関係は該当しません)
・納税者と生計を一にしている
・年間の合計所得が48万円以下(給与のみなら給与収入が103万円以下)
・青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていない、または白色申告者の事業専従者でない
たとえば、夫が会社員で年間所得が1000万円以下、妻がパートで年収103万円以下、という場合には夫は配偶者控除が利用できます。
配偶者控除の金額は、夫の所得によって決まります。
●配偶者控除の金額
筆者作成
なお、老人控除対象配偶者とは、控除対象配偶者のうち、その年12月31日時点で年齢が70歳以上の方のことです。
配偶者が一定の所得を超えても受けられる「配偶者特別控除」
配偶者控除は、配偶者の所得が48万円を超えると受けられません。しかし、配偶者の所得が48万円を超えても、配偶者の所得金額に応じて、一定の所得控除が受けられる場合があります。
これが、配偶者特別控除です。
配偶者特別控除は、配偶者の合計所得が、48万円を超えて、133万円以下の場合に受けられます。その他の要件は、配偶者控除と同じです。
●配偶者特別控除の金額
筆者作成
配偶者控除の節税額を試算してみよう
では実際に、配偶者控除を利用するとどのくらい税金が安くなるのでしょうか。
たとえば、所得税率5%の人に配偶者がいて、配偶者控除を利用できる要件を満たしているとすると、上の表より38万円の配偶者控除が受けられます(配偶者が老人控除対象配偶者ではない場合)。
所得税率は5%ですから、所得税は1万9000円安くなります。
38万円×5%=1万9000円
また、仮に所得税率が10%であれば、所得税は3万8000円安くなります。
38万円×10%=3万8000円
配偶者控除は、給与所得者であれば年末調整の書類に記入することで計算されます。また、個人事業主やフリーランスの場合は確定申告のときに申請することで計算されます。面倒がらずに記入して配偶者控除を受けましょう。
まとめ
今のところ要件を満たす配偶者がいないからといって、配偶者控除を知らなくていい、とは限りません。配偶者控除は夫婦の働き方に影響を及ぼし、社会人全体の働き方にも無関係ではありません。
公平な税金の仕組みについて理解を深めておくことは、今後ますます重要になるでしょう。
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タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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