22/07/04
住民税が非課税になる年金収入はいくら?地域によって違うのは本当か
給付金の対象になるかどうかの基準で、「住民税非課税世帯」という言葉を耳にされたことがあるのではないでしょうか。所得税の課税は日本全国一律ですが、住民税は、地域の事情を考慮して住民税の課税基準が異なっています。住民税が非課税になると、国民健康保険料や高額療養費などの優遇措置があり、生活面での負担が軽減されます。
今回は、収入の変化にも安心して生活できるよう、住民税の課税のしくみについて学んでいきましょう。
住民税が非課税になる場合とは
住民税は、所得に関わらず一定額を負担する「均等割」と、所得の金額に応じて負担する「所得割」の2つで構成されています。住民税非課税世帯とは、世帯の全員が住民税の「均等割」と「所得割」の両方とも非課税である世帯のことをいいます。
住民税の均等割・所得割がともに非課税となる人は、次のような人です。
●均等割・所得割がともに非課税となる人
・生活保護法による生活扶助を受けている人
・障害者・未成年者・寡婦または寡夫で、前年中の合計所得金額が135万円以下の人
・前年中の合計所得金額が市区町村の条例で定める額以下の人
均等割にも所得割にも非課税の基準がありますが、地域ごとの生活水準や物価の変動には差があるため、自治体の条例で課税に関する内容が異なります。また、自治体の裁量で税率設定を行ってもよいことになっています。
たとえば、均等割の非課税基準は、以下の計算式のとおりです。前年の所得の合計金額が算定した金額以下である人には、住民税の均等割が課税されません。
<扶養親族がいる場合>
35万円×(本人、同一生計配偶者及び扶養親族の合計数)+31万円 以下
<扶養親族がいない場合>
45万円 以下
住民税の均等割の非課税の基準は、各市区町村で異なり、対象扶養配偶者や扶養親族の有無でも所得金額が変わってきます。ということは、住んでいる場所によって、住民税が非課税になるかどうかが影響することになります。
なお、地域に差を設ける考え方は、生活保護にもあります。「級地制度」といって、地域ごとの格差を是正するため、お住まいの自治体の級地ごとに支給額に差を設けています。これと同じように、住民税においては物価の高い地域から、1級地・2級地・3級地と区分され、課税される基準が変わります。
住民税が非課税になるおおよその目安
それでは、収入が公的年金だけの場合、いくらまでなら住民税が非課税になるのでしょうか。東京23区内の場合で、65歳未満と65歳以上、配偶者の有無によってどのように変わるのか試算してみましょう。
<公的年金等控除>
65歳未満 60万円
65歳以上 110万円
●単身(65歳未満)の場合
公的年金から公的年金等控除を差し引いた金額が45万円以下になればよいので、
60万円(控除)+45万円=105万円
●単身(65歳以上)の場合
110万円(控除)+45万円=155万円
●夫婦世帯(65歳未満)の場合
60万円(控除)+(35万円×2+31万円)=161万円
●夫婦世帯(65歳以上)の場合
110万円(控除)+(35万円×2+31万円)=211万円
※夫婦世帯は、公的年金受給者が配偶者を扶養する場合
このように、年齢や控除対象配偶者がいるかどうかで、年金に住民税がかからない金額が違ってきます。
自治体で違う住民税非課税の範囲
住民税が非課税になる場合は、自治体ごとに違うことから、他の自治体で均等割が非課税になる場合を見ておきましょう。収入が公的年金だけだと仮定します。
たとえば、京都府京田辺市の場合には、
<扶養対象配偶者・扶養親族がいる場合>
31万5000円×(本人、同一生計配偶者及び扶養親族の合計数)+28万9000円 以下
<扶養親族のいない場合>
前年中の合計所得金額41万5000円 以下
となっています。
京田辺市で住民税が非課税になる場合は、次の金額になります。
・単身 65歳未満 101万5000円 以下
・単身 65歳以上 151万5000円 以下
・夫婦世帯 65歳未満 151万9000円 以下
・夫婦世帯 65歳以上 201万9000円 以下
※夫婦世帯は、公的年金受給者が配偶者を扶養する場合
また、埼玉県坂戸市の場合では、
<扶養対象配偶者・扶養親族がいる場合>
28万円×(本人、同一生計配偶者及び扶養親族の合計数)+26万8000円 以下
<扶養親族がいない場合>
前年中の合計所得金額38万円 以下
となっています。
坂戸市で住民税が非課税になる場合は、次の金額になります。
・単身 65歳未満 98万円 以下
・単身 65歳以上 148万円 以下
・夫婦世帯 65歳未満 142万8000円 以下
・夫婦世帯 65歳以上 192万8000円 以下
※夫婦世帯は、公的年金受給者が配偶者を扶養する場合
このように、住民税が非課税になる要件は自治体ごとに異なるので、詳しいことはお住まいの自治体で確認しましょう。
所得の計算で注意すること
所得税は、納税義務者のすべての所得に対して課税することを原則にしています。公的年金は、所得の分類のうち「雑所得」になりますが、すべての年金に課税されるわけではありません。税金を課さない所得を非課税所得といいます。
非課税所得には、「傷病者や遺族などの受け取る恩給、年金」が含まれています。公的年金は、控除を差し引いた部分が所得額とされますが、障害年金と遺族年金は非課税なので、所得の計算に含めません。同じ年金といっても、非課税になるものがあることには注意しましょう。
住民税の金額は、国民健康保険料や介護保険料を決める基準にもなります。受け取る年金額が多いほうが安心しますが、年金額が増えれば税負担や保険料の負担も増えることを心にとめておきましょう。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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