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25/01/05

相続・税金・年金

退職所得課税・年金課税の改悪は続き、大増税の可能性も【税制改正大綱から読み解く税金の話】

退職所得課税・年金課税の改悪は続き、大増税の可能性も【税制改正大綱から読み解く税金の話】

自民・公明両党が決定・公表した税制改正大綱。2025年の税制改正大綱では「年収の壁」をめぐる改正が話題になったほか、子育て支援や企業型DC(企業型確定拠出年金)・iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金限度額の引き上げなども盛り込まれました。

税制改正大綱には、翌年度の税制改正の内容だけでなく、今後の「検討事項」も記載されています。検討事項はまだ決定ではありませんが、今後改正になるかもしれない問題や改正の方向性などが示されています。今回は2025年の税制改正大綱のなかから、増税につながる可能性が高い「退職所得課税」「年金課税」について、一緒に確認していきましょう。

退職所得課税の見直しはある?

私たちが得た収入から、必要経費を引いた金額を所得といいます。所得は全部で10種類。そのひとつ、一時金で受け取る退職金やiDeCoの資産のことを退職所得といいます。

退職所得の金額は、次の計算式で計算します。

●退職所得の計算式

退職所得=(一時金 ― 退職所得控除)×1/2
※勤続年数が5年以下の場合、退職所得が300万円を超えると1/2を適用できない

退職所得の金額は、上の式のとおり、一時金から退職所得控除を引き、さらにそれを「2分の1」にして計算します。退職金にかかる税金(所得税・住民税)は、この退職所得に所定の税率をかけて計算されます。ですから、退職所得控除が多いほど税金は少なくなりますし、一時金で受け取った金額より退職所得控除のほうが多ければ税金はゼロになります。つまり、退職所得控除によって、一時金にかかる所得税や住民税を大きく減らすことができるのです。

この退職所得控除の金額は、以下の計算式で計算します。

●退職所得控除の計算式

【勤続年数20年以下】

40万円×勤続年数・加入期間
※80万円未満の場合80万円

【勤続年数20年超】

800万円+70万円×(勤続年数・加入期間-20年)

退職所得控除の金額は、勤続年数が20年以下なら年40万円ずつ増え、21年目以降は年70万円ずつ増えます。つまり、21年目以降は退職所得控除の優遇が大きくなるのです。なお、
退職所得控除の金額は、退職金の場合は勤続年数、iDeCoの場合は加入期間で計算されます。

2025年の税制改正大綱では、この退職所得課税に関して、次のように記載されています。

退職所得課税については、勤続年数が20年を超えると1年あたりの退職所得控除額が増加する仕組みが転職の増加等の働き方の多様化に対応していないといった指摘もある。

自由民主党・公明党「令和7年度税制改正大綱」より

勤続年数が20年を超えたほうが退職金を受け取るうえで有利だとなれば、なるべく転職しないようにするでしょう。しかし、若年層を中心にいろいろな働き方が広まるなか、こうした制度は実態にそぐわないので見直したほうがいいのではないか、というのが政府の考えのようです。

●退職所得控除の見直しで税金はどれくらい増える?

仮に、退職所得控除の「20年超」の部分が年70万円から年40万円になったとします。この場合、勤続年数が20年超の方が使える退職所得控除の金額がこれまでより年30万円ずつ減ります。すると、勤続38年の方の退職所得控除は540万円減ります。

【勤続38年の方の退職所得控除は?】

・現行制度
800万円+70万円×(38年-20年)=2,060万円
・見直し後
40万円×38年=1,520万円
(退職所得控除の差額)540万円

現行制度では、退職金が2,060万円もらえても税金がかかりません。しかし見直し後に2,060万円もらえたとすると、退職所得は270万円になります。

【勤続38年・退職金2,060万円の方の退職所得は?】

・現行制度
(2,060万円 ―2,060万円)×1/2=0円(退職所得なし=退職金への課税なし)
・見直し後
(2,060万円 ―1,520万円)×1/2=270万円

見直し後の場合、所得税は10%(住民税は所得税率にかかわらず一律10%)ですので、
・所得税:270万円×10%−9万7,500円=17万2,500円
・住民税:270万円×10%=27万円
(合計)44万2,500円
税金は合わせて44万2,500円も増えてしまうことになります。

もちろん、退職所得課税の20年超の部分が40万円になるというのは、まだ決まった話ではありません。しかし、控除のルール変更により所得控除が減ると、それにしたがって税金が増え、老後の生活のプランの変更を余儀なくされるかもしれません。

年金課税の見直しはある?

給与所得のある年金受給者の場合、給与所得控除と公的年金等控除の2つの控除を収入から差し引けます。それによって、給与収入のみの人と給与+年金の人で、同じ収入額だったとしても税金の負担が異なります。これでは公平ではないということで、給与所得控除と公的年金等控除の合計額の上限を 280万円と定め、税負担の差を減らすことを検討しています。こちらは、2026年の税制改正で法制化される見込みです。

財務省の資料によると、給与収入のみの人と給与+年金の人では、控除額に次のような違いがあります。

<年⾦・給与双⽅の収⼊がある場合と給与収⼊のみの場合の概算控除額の違い>

財務省「活力ある長寿社会に向けたライフコースに中立な税制について」より

青のグラフが給与+年金の人、赤のグラフが給与収入のみの人の控除額を表します。年金は年200万円で試算されています。具体的な控除額は、

・給与年500万円+年金年200万円の人の控除額…約264万円
・給与年500万円の人の控除額…約180万円
・給与年800万円+年金年200万円の人の控除額…約310万円
・給与年800万円の人の控除額…約195万円

となっています。
同じ年収でも、給与+年金の人のほうが多く控除されることがわかります。

この例の場合、給与所得控除と公的年金等控除の合計額の上限が280万円になれば、上のうち「給与年800万円+年金年200万円」の人は30万円ほど控除額が減ることになるため、税金が増えることにつながります。

●在職老齢年金見直しへの布石?

また、政府は在職老齢年金の見直しも検討しています。
在職老齢年金は、60歳以上の働く高齢者の給与と年金の合計が50万円(2024年度)を超えた場合に、厚生年金の一部または全部が支給停止となる制度です。年金をたくさんもらいながら働くと厚生年金が減る仕組みになっているため、働き控えをする高齢者が少なくないと指摘されています。

政府は、在職老齢年金の現状50万円の基準を62万円または71万円に引き上げること、あるいは在職老齢年金の制度そのものを廃止することを検討しています。それによって、高齢者の働き控えは緩和できるかもしれません。ただ、これを実施する際に給与所得控除+公的年金等控除に上限がないと、ますます税負担の差が広がってしまう可能性があります。

給与所得控除と公的年金等控除の合計額の上限を定めるのは、在職老齢年金の引き上げ、あるいは廃止の布石ととらえることもできるかもしれません。
実際、税制改正大綱にも、

年金課税については、公的年金等控除が給与所得を得ている年金受給者にも適用されるため、給与所得控除と公的年金等控除の両方の適用により、同じ収入額でも給与収入のみの者と、給与収入と公的年金等を有する者の間で税負担が異なることについて、公平性の観点から指摘がなされてきた。 年金制度改革の中で在職老齢年金制度の見直しが検討されているが、在職老齢年金支給停止調整額の引上げが行われると、給与収入を得つつより多くの年金を受け取る者が増えることが想定され、税負担の公平性の問題がより大きく顕在化する。

自由民主党・公明党「令和7年度税制改正大綱」より

とあります。ここでお話ししたとおりのことですね。

在職老齢年金の上限が引き上げられると、高所得者の受け取る年金が増えることにつながるとして、批判する声もあります。また年金給付額が増えると、年金の財源が減ることにつながり、将来世代の給付水準が低下する可能性があります。
一方で、厚生年金保険料の基準となる標準報酬月額の上限(現状65万円)の引き上げも検討されています。高所得者は年金が増える一方で保険料の負担も増える可能性があります。収入増、負担増のバランスがどのようになるのか、今後の動向をチェックしましょう。

退職所得課税と年金課税について、税制改正大綱の内容と今後の予定を紹介してきました。いずれも、まだ決定していない要素を含みますが、多くはやはり、増税につながりかねないものです。税金をめぐる制度がどのように変わるのか、危機感を持って注目していただければと思います。

畠山 憲一 Mocha編集長

1979年東京生まれ、埼玉育ち。大学卒業後、経済のことをまったく知らないままマネー本を扱う編集プロダクション・出版社に勤務。そこでゼロから学びつつ十余年にわたり書籍・ムック・雑誌記事などの作成に携わる。その経験を生かし、マネー初心者がわからないところ・つまずきやすいところをやさしく解説することを得意にしている。2018年より現職。ファイナンシャル・プランニング技能士2級。教員免許も保有。趣味はランニング。

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