23/01/28
復興特別所得税、毎年いくら納めている?延長されるのは本当か
2022年12月に閣議決定された税制改正大綱には、国の防衛力の抜本的な強化に必要な財源の1兆円強を増税で賄うことが盛り込まれ、大きな話題になりました。増税する税目としては、法人税、たばこ税、復興特別所得税の3つが示されています。
今回は、この中の「復興特別所得税」を紹介します。復興特別所得税という響きにピンとこないかもしれませんが、所得税を納めている方であれば、誰もが納めている税金です。そもそも復興特別所得税とはどんな税金で、どのくらい納めているのか、今後の延長の方針までわかりやすく紹介します。
そもそも復興特別所得税とはどんな税金?
復興特別所得税は、東日本大震災からの復興のための施策に必要な財源の確保をするために2011年(平成23年)に創設された税金です。復興特別所得税は、東日本大震災で被災された方々の支援、公営住宅の再建、まちづくり、産業・生業(なりわい)の再生、原子力災害からの復興・再生などに充てられます。
個人で所得税を納める義務のある方は、所得税とあわせて、復興特別所得税も納める義務があります。サラリーマンなどの給与所得者は、2013年(平成25年)1月1日以降に支払を受ける給与等から復興特別所得税が源泉徴収されています。自営業者やフリーランスの方は、確定申告をして、所得税と復興特別所得税額を一緒に申告・納税します。
復興特別所得税は「基準所得税×2.1%」
復興特別所得税の課税のもとになるのは、その年分の「基準所得税額」です。通常、わたしたちが納める所得税の場合は、課税総所得金額がもとになり、税率をかけて計算します。しかし、復興特別所得税を計算するときは、同じ課税所得に対して税率をかけるのではなく、算出された所得税に対し、2.1%をかけて計算します。課税所得ではなく、所得税額が基準になる点に注意しましょう。
復興特別所得税を計算するときは、次のとおりの手順で行います。
●復興特別所得税の計算手順
① 年間の所得税額を計算
課税総所得金額(A)×税率(B)-控除額(C)=基準所得税額
② 復興特別所得税を計算
基準所得税額×2.1%=復興特別所得税額(1円未満は切り捨て)
●所得税・復興特別所得税の計算例
たとえば、以下のAさんの所得税・復興特別所得税は次のように計算します。
【Aさんの設定】
・年齢40歳未満
・年収:300万円
・給与所得控除:98万円(自営業者であれば経費にあたる)
・各種所得控除:扶養家族なし基礎控除48万円、社会保険料控除43万円
・課税総所得金額:300万円-98万円-(48万円+43万円)=111万円
【所得税の税率】
国税庁のウェブサイトより
①年間の所得税を計算
課税総所得金額は111万円のため、税率は5%、控除額は「0」です。
111万円×5%=5万5500円
②復興特別所得税を計算
①で計算した所得税額に2.1%を掛けます。
5万5500円×2.1%=1165円(1円未満は切り捨て)
実際に納める税金は①+②になるので「5万5500円+1165円=56665円」になります。
復興特別所得税はいつまで延長される?
復興特別所得税は、2013年(平成25年)から、2037年(令和19年)まで、毎年所得税と復興特別所得税を併せて納税して、25年間で約7兆5000億円の復興財源を確保する予定で始まりました。
ところが、台湾有事や北朝鮮危機など、日本の安全が脅かされそうな状況もあり、防衛費を増額する必要に迫られました。2022年12月にあった岸田文雄首相の説明では「個人の所得税の負担が増加するような措置は行わない」とのことでしたが、これは、先述した課税総所得金額に税率を掛けて計算する所得税は増税の対象にならないということであり、所得税額に2.1%を掛けて計算する復興特別所得税は別扱いだったようなのです。
2022 年(令和4年) 12 月 16 日発表の「2023 年度税制改正大綱」には、次のように記載されています。
「所得税額に対し、当分の間、税率1%の新たな付加税を課す。現下の家計を取り巻く状況に配慮し、復興特別所得税の税率を1%引き下げるとともに、課税期間を延長する。延長期間は、復興事業の着実な実施に影響を与えないよう、 復興財源の総額を確実に確保するために必要な長さとする」
「2023 年度税制改正大綱」より
税制改正大綱によると、2024年以降の適切な時期より、所得税額に対し、当分の間、税率1%の新たな付加税が課されるかわりに、復興特別所得税の税率2.1%のうち、1%が引き下げられます。また、復興特別所得税の防衛費への活用によって復興予算の総額が減らないよう「復興特別所得税」の徴収期間を2050年代まで延長することを検討しています。これが実現すれば、防衛費のうち2000億円程度がまかなえる計算ですが、復興特別所得税の負担はさらに続くことになります。
まとめ
復興特別所得税は、もともと2037年(令和19年)までかかる税金なので、しばらくは現状維持ですが、今後課税期間が延びた場合、負担が長期化することが見込まれます。今後の動向にも注目しておきましょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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