24/05/06
公務員の「定年延長」で給与・退職金はどうなるのか
人手不足を背景に定年退職の年齢を引き上げる企業が増えています。民間企業では65歳までの雇用確保が義務付けられ、定年制の廃止や70歳まで働き続けることも可能になりました。一方、公務員の定年は2023年度以降、段階的に引き上げられています。
もっとも、同じ職場環境で働き続けられるといっても、今後の給与や退職金がどうなるのか気になるところです。
今回は、公務員の定年延長について解説していきます。
公務員の定年は今後どうなる?
年金の受給開始年齢は、65歳からです。しかし、60歳で定年となると、年金開始期間までの間無収入になります。公務員はこれまで一部の職種を除いて60歳定年であったため、60歳以降も働く場合には今までと違う職種や職場で働かざるを得ませんでした。定年が延長されれば、慣れた環境で安心して働くことができ、経済的にも安定が期待できます。
公務員の定年の引き上げは、2023年度(令和5年度)にスタートし、2031年度(令和13年度)までに段階的に行われます。具体的には、以下のように2年に1歳ずつ延びていき、最終的には65歳まで延長されます。
<公務員の定年>
筆者作成
60歳以降の公務員の働き方
最終的に公務員の定年は65歳となりますが、60歳から定年退職までの働き方は、フルタイムで働く方法と短時間勤務でゆとりを持って働く方法があります。主に、次のような選択肢があります。
(1)フルタイム(役職定年制を経て定年まで働く)
管理監督職(課長や部長などのように、部下を育てる立場にある役職)に就いている人は、60歳の誕生日からその後最初に来る4月1日までの期間に、非管理監督職に降任して働きます。
(2)フルタイム(非管理監督職のまま定年まで働く)
非管理監督職に就いている人は、そのまま非管理監督職で定年まで働くことができます。
(3)一旦退職をして、定年前再任用短時間勤務制によって働く
60歳に達した日以後の定年前退職者が対象で、本来の定年退職相当日まで働くことができる制度です。勤務時間は週15時間30分~31時間までの範囲内で、原則1日の勤務時間は7時間45分以内としています。1日の勤務時間を短くしたり、週休日を増やしたりするなど、多様な勤務体系を選択することができます。
(4)暫定再任用制度
定年の引き上げ期間中において、定年退職後に65歳まで再任用できる制度です。定年退職者や定年前再任用の任期満了の退職者、25年以上勤務で退職後5年以内の人などが対象です。任期は1年以内で、あらかじめ本人に同意を得たうえで更新することができます。勤務時間は、定年前再任短時間勤務制と同じです。この制度は、65歳まで働き続けられるように設置されたものなので、令和14年3月末までの制度になります。
定年延長で基本給や退職金はどう変わる?
定年延長によって、60歳から定年までの給与は、60歳のときの7割相当の水準になります。給与が7割水準になるタイミングは、60歳の誕生日を迎えた日以後に最初に来る4月1日以降になります。この日を「特定日」といいます。
諸手当については、7割水準になる手当と7割水準にならない手当に分けられます。7割水準とするものは、以下のものです。
・地域手当
・夜勤手当
・期末・勤勉手当
・超過勤務手当
・休日給
・広域異動手当、特地勤務手当など
また、定年退職で最も気になるのは、退職金ではないでしょうか。退職事由は、退職金の額を計算するのに用いられ、支給率に影響します。自己都合退職にくらべて、定年を理由に退職した方が多く退職金がもらえるしくみになっています。また、給与の額が高ければ高いほど、退職金も高くなります。
●公務員の退職金の計算方法
退職時の給料月額×支給額×調整率
2024年の段階では、定年の引き上げが段階的に行われている途中であるため、退職金は給与が7割水準になる前の部分と7割水準になった後に分けて計算され、不利益にならないようなしくみが取られています。そして、当分の間、60歳以降であれば定年前であっても退職事由を「定年」とすることができる措置がとられています。
60歳以降もフルタイムで働く場合には、定年退職時に退職金が出ます。
なお、定年前再任用短時間勤務制や暫定再任用制度を選んだ場合の退職金を受け取るタイミングは、1回目の退職時です。その後短時間勤務で働く場合には退職金はありません。
いつまで働くかを考えておこう
鹿児島県の県職員においては、定年が61歳となった2023年度末までに6割超の人が60歳で退職するという報道がされました。すでに再就職の目途が立っているので、60歳退職をする人が多いのではないかとの見方がされています。退職金を受け取るタイミングを前もって計画していた人もいるでしょう。
定年延長により、年金受給まで間に収入が得られることで経済安定を図ることができます。それだけではなく、勤続年数が長くなると退職所得控除額が増えるため、手取りが多くなる可能性もあります。フルタイムで65歳まで働くことが一番よい働き方かは人により異なるため一概には言えませんが、短時間働いて規則正しい生活をしながら健康であり続けるという選択肢を選ぶこともできます。
退職をする時期も個人の判断で選べるようになると、ますます自分のライフプランをどうするのかが問われることになります。老後の生活がどうなるかを想定しつつ、いつまで働くかを考えておきましょう。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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