23/01/26
「マイナ保険証」で医療費控除をする手順や注意点
2021年10月から、医療機関や薬局の窓口でマイナンバーカードを健康保険証として利用できるようになりました。マイナンバーカードを健康保険証と紐づけすることで、確定申告での医療費控除の手続きがこれまでよりも簡単にできるようになります。
今回は、「マイナ保険証」で医療費控除をする手続きや注意点についてご紹介します。
医療費控除のしくみ
医療費控除は、1年間に支払った医療費が家族の分も含めて一定額を超えた場合に、税務署に確定申告をすると所得税を一部返してくれる制度です。
支払った医療費の合計額から保険などで補てんされた金額を差し引いた金額が10万円(総所得200万円未満の人は所得の5%)を超えた部分が医療費控除の額となります。ただし、支払った医療費に応じて税金を計算し直す仕組みなので、医療費控除の額がそのまま全部戻ってくるわけではありません。
なお、医療費控除の対象となるのは、その年の1月1日から12月31日までに支払った金額に限られます。その年中に治療が終わっていたとしても、医療費を支払ったのがその翌年の場合には、実際に医療費を支払った年の医療費控除の対象になるので注意しましょう。
●医療費控除の対象になる費用の例
医療費控除の対象となる医療費には、医療機関に支払った診療費や、治療に必要な医薬品の購入費のほか、病院までの交通費、入院や介護にかかる一定の費用などがあります。自分だけでなく、生計が同じ家族の医療費も控除の対象になります。
医薬品の購入費については、医師の処方によるものだけでなくドラッグストアなどで購入したものも対象となります。タクシー代は、急を要する病状の場合や公共交通機関が動いていない時間に利用する場合には、医療費控除の対象となります。
なお、病気の予防や美容のための費用は医療費控除の対象外です。
マイナ保険証で医療費控除をする手順
マイナ保険証で医療費控除をする手順は、次のとおりです。
●マイナ保険証で医療費控除をする手順1:マイナンバーカードを取得する
マイナ保険証で医療費控除をするには、大前提としてマイナンバーカードを取得している必要があります。マイナンバーカードを持っていない人は、まずカードの交付申請をしましょう。
●マイナ保険証で医療費控除をする手順2:マイナンバーカードを健康保険証として登録する
マイナンバーカードを取得したら、健康保険証として利用するための「初回登録」を行います。スマートフォンやパソコンのほか、セブン銀行ATMからも初回登録ができます。また、区役所などの窓口で対応している自治体もあります。
スマホやパソコンから登録する場合は、マイナポータルを利用します。パソコンで登録するにはICカードリーダーが必要なので、スマホでの登録がおすすめです。スマホの場合は、マイナポータルアプリをインストールして、マイナンバーカード取得時に設定した利用者証明用電子証明書の暗証番号4ケタの入力とマイナンバーカードの読み取りで登録が完了します。
なお、マイナンバーカードを健康保険証として登録しても、従来の健康保険証も引き続き使用できます。
●マイナ保険証で医療費控除をする手順3:マイナポータルで医療費通知情報を確認する
マイナンバーカードを健康保険証として登録すると、マイナポータル上で医療費の情報を確認できるようになります。
マイナポータルから確認できるのは、2021年9月以降に保険医療機関・保険薬局の窓口で支払った、公的医療保険に係る医療費の情報です。その他、受診した医療機関の名称や医療費控除の窓口負担額なども閲覧できます。医療費通知情報は受診した月の翌々月11日より閲覧できます。
●マイナ保険証で医療費控除をする手順4:国税庁ホームページで確定申告書を作成する
マイナポータルは国税庁の「確定申告書等作成コーナー」と連携しており、マイナポータルの医療費通知情報のデータを「確定申告書等作成コーナー」に自動転記することができます。確定申告書に1年間の医療費を自動入力できるため、確定申告の医療費控除が簡単になります。
マイナポータルから確認できるのは、2021年9月以降の医療費データなので、2022年分の確定申告からは1年分の確定申告ができるようになっています。
なお、「確定申告書等作成コーナー」をオンライン申請した場合、マイナポータルから自動転記した医療費については領収書を保存する必要はありません。
マイナ保険証で医療費控除をする際の注意点
マイナ保険証で医療費控除をする際には、以下の点に注意しましょう。
●マイナ保険証で医療費控除をする注意点①:保険診療以外のものは反映されない
マイナポータルで管理できる情報は、保険医療機関・保険薬局の窓口で支払った公的医療保険に係る医療費のみです。
自由診療分や通院費、ドラッグストアでの医薬品購入などマイナ保険証と紐づいていない情報は連携されないので注意してください。通院費は金額をメモしておく、ドラッグストアのレシートはきちんと保管しておくなど、対応しましょう。
なお、従来の健康保険証で病院や薬局にかかった医療費は、保険番号で紐づいているため、マイナ保険証を使用していなくてもマイナポータルで確認できます。
●マイナ保険証で医療費控除をする注意点②:1年間分のデータ反映は2月になる
マイナポータルの医療費通知情報は、受診した月の翌々月11日に更新されますが、確定申告に利用するための1年間分の医療費通知情報は、原則として翌年の2月9日に申告年分の1月から12月分までの情報が一括で取得可能となります。
確定申告の申告期限は通常2月16日から3月15日までですが、還付申告(税金が戻ってくる)の場合は2月15日より前に申告することもできます。2月9日以前に還付申告したい場合は医療費の自動入力ができないので注意しましょう。
●マイナ保険証で医療費控除をする注意点③:家族分は代理人設定が必要
医療費控除は家族分をまとめて申告することもできますが、マイナポータルで取得可能な医療費通知情報は、本人分のみになります。
家族分の医療費も合算して申告したい場合は、マイナポータルでの代理人設定が必要です。本人と家族の間で代理人設定をする場合、その家族もマイナンバーカードを取得している必要があります。
まとめ
マイナ保険証にすれば、医療費の領収書の保管が不要になったり、確定申告のデータ入力の手間が省けたりします。
1年間の医療費が10万円を超えると医療費控除で税金が安くなります。確定申告をすれば払い過ぎた税金が戻ってくるので、マイナンバーカードを有効活用して手続きをしてみましょう。
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目黒 桂 ファイナンシャルプランナー
税理士事務所勤務後、企業にて経理・経営企画業務に従事。その後、出版社に転職し雑誌編集に携わる。金融・税務関連の執筆を中心に雑誌やWEB媒体でも活動中。
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