23/01/03
2023年から始めたい「お金の貯め方」5選
2019年から続くコロナ禍で、人々の生活や考え方なども変わりました。将来への不安を口にする人も少なくありません。将来が不透明だからと言って何もしないでいると、不安はその通りになってしまうかもしれません。将来が不透明だからこそ、何かあったとき複数の選択をできる方がいいですよね。そのためには、やはりお金の準備は必要です。
新年は気持ちも切り替わり、何かを始めるにはとてもいいタイミング。2023年はぜひ、貯蓄上手を目指してみましょう。今回は、2023年から始めたい「お金の貯め方」5選を紹介します。
お金の貯め方にはコツがある
ただ闇雲にお金を貯めようとしても、なかなか貯まるものではありません。お金の貯め方にはやり方とコツがあります。これをつかめば貯蓄は難しくありません。まずは、貯蓄上手になるためのポイントを押さえましょう。
●貯蓄上手になるためには
「たくさん貯蓄がある人はきっと収入が多い人だ」と思っていませんか。収入が多いからと言って必ずしも貯蓄が多いわけではありません。マネー相談をしていると、収入のわりに貯蓄額が少ないと感じる人もいます。そういう人の家計を見ると、共通点が大きく2つあります。それは、貯蓄をする金額の目安を決めていないことと、自分のお金の使い方の傾向を知らないことです。
貯蓄をする金額は目的によるので、誰にとっても同じ金額とは限りません。しかし、やりたいことを叶えるためにはある程度目安が必要です。貯蓄の目安は、金額ではなく割合で考えます。収入のどのくらいの割合を貯蓄するのか、その中で、目的の時間に応じて、貯め方を変えていきます。
目標とするのは、手取り収入の10%から20%です。例えば、手取り収入20万円の人であれば2万円〜4万円、手取りが増えて25万円になったら2.5万円〜5万円という感じです。
ですので、まずは目標とする貯蓄割合を決めましょう。
また、自分のお金の使い方の傾向を知ることも大切です。どんなことにお金を使っているのか、どんな支出は削ることができないのかをきちんと知っていますか。ただなんとなくお金を使っていると、いくらあっても足りなくなります。
削ることのできない、こだわりのある支出はそのままとして、そうでない支出は見直してその分を貯蓄に回すようにしましょう。
ただ支出を減らして我慢するだけの節約方法では長続きしません。無理をしなくてもできる節約をするために、自分のお金の使い方傾向を確認しておきましょう。
そのうえで、以下の貯め方のコツを押さえて、お金が貯まる仕組みを利用すれば、お金は上手に貯まっていくでしょう。
●お金の貯め方のコツ①:先取り貯蓄をする
貯蓄上手になるためのコツは何と言っても「先取り貯蓄」をすることです。毎月の貯蓄割合から考えた金額が決まったら、先取りの仕組みを作りましょう。
毎月の所得税や住民税を普段あまり意識していないのは、給与をもらう時に先取りされてしまっているから。先取りだから支払っている感じがしないのです。この「あまり意識しない」という感覚を貯蓄に上手に取り入れると、お金は貯まっていきます。
●お金の貯め方のコツ②:目的別に貯蓄する
お金を貯めるもうひとつのコツは、お金を目的別に貯めることです。
お金は将来必要になることのために貯めるものです。しかし、必要になる金額や貯める期間は人それぞれ違います。住宅の頭金、子供の大学のための資金、老後の資金など、目的も違えば、必要になるまでの時間も違います。ですから、その目的と時間によって貯め方を変えることがコツなのです。
貯蓄を一つにまとめておくと、必要な金額がわからなくなってしまうこともあります。何かあるごとに貯蓄口座から支出していると、必要な金額が貯まっていないことも考えられるからです。ですから、目的別に金額と期間を決めて、それぞれにあった方法で貯めていくことが大切なのです。
期間や目標金額を決めると、「あといくらで目標達成」「あと何ヶ月で目標達成」などと、ゴールがはっきりするので、モチベーションを保ちやすくなるでしょう。
また、貯める時間が長期であればつみたてNISA(ニーサ・少額投資非課税制度)やiDeCoなど、時間を味方につけてコツコツと積立する仕組みも取り入れるといいでしょう。
先取り貯蓄できる仕組みでお金を貯める
先取り貯蓄は、自分で毎月お金を取り分けようとすると、つい甘えが出てしまう場合もあります。何より、手間がかかって面倒です。そこで、先取り貯蓄のできる仕組みを取り入れましょう。先取り貯蓄のできるお金の貯め方を5つ紹介します。
●お金の貯め方①:財形貯蓄
財形貯蓄は会社に財形貯蓄の制度がある会社員や国家公務員、地方公務員などが使える制度で、毎月のお給料やボーナスから天引きして貯めることができます。財形貯蓄には、一般財形貯蓄、住宅財形貯蓄、財形年金貯蓄の目的別の3種類があります。
・一般財形貯蓄
一般財形貯蓄は、貯蓄の目的は特に決められていない貯蓄です。一般財形貯蓄は、たとえば旅行の費用や、教育費、車の購入など幅広い目的に活用できる貯蓄です。基本的には3年以上の積み立てが必要ですが、1年以上たてば引き出すことが可能です。
・財形住宅貯蓄
財形住宅貯蓄は、自宅の購入やリフォームのための資金を貯めることを目的とした貯蓄です。55歳未満の従業員や公務員などが対象で、5年以上の積立が必要ですが、条件を満たせば5年未満でも引き出すことは可能です。
財形住宅貯蓄のメリットは、次に紹介する財形年金貯蓄と合わせて残高550万円までであれば利子などが非課税になることです。ただし、目的以外の理由で引き出してしまうと、過去5年分の利子に課税されるので、注意が必要です。
・財形年金貯蓄
財形年金貯蓄は、老後の資産形成が目的の貯蓄です。55歳未満の従業員や公務員が利用することができ、5年以上の積立が必要です。60歳になったら、5年から20年の間でお金をもらうことができます。財形住宅貯蓄と合わせて550万円(保険などの場合は385万円まで)までであれば利子などは非課税になります。しかし、目的以外の払い出しには財形住宅貯蓄と同じく、過去5年分の利子に課税されます。
財形貯蓄のメリットは、給与をもらう前に天引きして貯めるという、強力な強制力にあります。引き出すときに会社に申請をする必要があるのも、無駄遣いを防ぐことにつながるでしょう。また、住宅財形貯蓄と財形年金貯蓄では利子などが非課税になります。現在の超低金利では高い利子はあまり望めませんが、メリットといえるでしょう。
しかし、財形住宅貯蓄や財形年金貯蓄は使用目的が決まっているため、それ以外の目的引き出したりする場合は、過去に遡って課税されるので引き出す際は注意が必要です。
さらに、財形貯蓄の中でも保険タイプで運用している場合には、解約するタイミングによって元本割れする可能性もあります。
●お金の貯め方②:積立定期預金
積立定期預金は毎月お給料が振り込まれる普通預金から決まった金額を指定した日に自動で積み立てる制度です。財形貯蓄ほど大きな強制力はないものの、お給料を引き出す前に積立の指定をしておけば、財形貯蓄と同様に先取り貯蓄ができます。財形貯蓄の制度がない会社に勤めている場合は、自分で銀行などの金融機関に申し込んで、積立定期預金による天引きの仕組みを作りましょう。
●お金の貯め方③:目的別貯蓄口座
先取り貯蓄をする際に、車の購入、住宅の頭金、海外旅行の費用など、目的ごとに金融機関を変え、「目的別貯蓄口座」を用意して貯めるようにすれば、達成度がわかりやすく、モチベーションアップにつながります。
ひとつの金融機関内で複数の口座を管理できるところもあります。たとえばSBI銀行の普通預金では、入金すると目的別に口座を作ることができ、インターネットバンキングを使って自分で振り分けることができます。
また、GMOあおぞらネット銀行の「つかいわけ口座」でもそれぞれ別の口座を作ることができ、元になる親口座から自動で振り分け設定することもできます。
●お金の貯め方④:つみたてNISA
子供の教育資金や老後の生活資金など、中長期のお金を貯めるにはつみたてNISAも活用するといいでしょう。つみたてNISAは投資信託を自分で選び、運用しながら積み立てていく仕組みです。
【2023年のつみたてNISAの特徴】
・1年間40万円(毎月約3万3000円)の投資で得られた利益にかかる税金が非課税
・非課税で投資できる期間は20年間
・投資方法は積み立てのみ
・運用商品は金融庁の基準をクリアした投資信託・ETF(上場投資信託)のみ
つみたてNISAでは融庁の基準をクリアした投資信託・ETFに投資します。預金とは異なり積み立てた金額が保証されるわけではありません。しかし、年間40万円まで、積み立てた金額の運用益が非課税になるメリットを生かせば、将来預金や定期預金よりも増える可能性があります。
投資信託は、複数の人からお金を集めて、そのお金を運用の専門家が複数の資産に投資をする金融商品です。運用に関する知識があまりなくても、手軽に始めることができることが特徴です。
投資信託の運用方針には、大きく分けて「アクティブ運用」と「インデックス運用」があります。アクティブ運用は、目標とするベンチマーク(たとえば「日経平均株価」「S&P500」といった指数・指標)よりも高い運用効果を目指す投資信託です。それに対してインデックス運用は、目標とするベンチマークに沿った運用効果を目指す投資信託です。
とはいえ、アクティブ運用の方がより高い運用成果を得られるとは限りません。一般的に、インデックス運用よりもアクティブ運用の方がリスクが高く、高いリターンが得られる可能性もありますが、インデックス運用の投資信託に勝てないアクティブ運用の投資信託も相応にあります。また運用中のコスト(信託報酬)もインデックス運用よりアクティブ運用のほうが高く設定されている点には注意が必要です。
実は、NISAの制度は2024年から新しい制度に変わることが決まりました。
【2024年以降の新しいNISAの特徴】
・制度の恒久化
・非課税保有期間の無期限
・年間投資額の増額(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)
・生涯非課税投資金額の設定(一人当たり1800万円)
2024年以降、NISAは新しい制度に移行します。新しいNISAでは、NISAの制度そのものが恒久化されるため、いつでも投資をスタートできます。また、つみたてNISAの非課税保有期間は20年でしたが、改正後は無期限で保有を続けることができます。
そのうえで、年間投資額が大幅にアップします。つみたてNISA同様の投資ができるつみたて投資枠は40万円から120万円、一般NISA同様の投資ができる成長投資枠は120万円から240万円になります。
さらに、つみたて投資枠と成長投資枠は併用ができるようになります。すでにつみたてNISAを利用している人は、今のままの積立金額を維持してもいいし、増やすこともできます。
そして、生涯投資枠1800万円の範囲内であれば、無期限に非課税投資が可能。いったん売却して生涯投資枠に空きが出たら、その中で再度非課税投資ができるようになります。
例えば、今までどおり年間40万円積み立てたとすると、45年間非課税で積立をすることができます。老後のお金を準備するのであれば、十分な期間ではないでしょうか。
新しく口座を開設する必要があるのかなど、詳細はまだ発表されていないので、今度の発表にも注目していきましょう。
●お金の貯め方⑤:iDeCo
老後の年金の上乗せを考えるのであればiDeCoもぜひ検討しましょう。iDeCoは、掛金を自分で運用して、60歳以降にその結果を受け取ることができる制度です。
【iDeCoの特徴】
・掛金は全額所得控除となり、所得税、住民税の軽減
・運用している期間、運用益は非課税
・受け取る時、退職所得控除、公的年金等控除の対象になる
・運用商品は自分で選択する
・口座管理手数料がかかる
iDeCoはつみたてNISA同様運用益が非課税になるメリットがあります。それに加えて、所得税や住民税が軽減されますし、受け取るも税金を安くする仕組みが使えます。
iDeCoは60歳まで引き出すことができないので、強制的にお金を貯めることができます。最低積立金額は5000円から。自営業・公務員・会社員・専業主婦(夫)など、加入する年金制度により積み立てられる上限の金額は異なります。
iDeCoは2022年に大幅な改訂がありました。
まず、iDeCoで積立ができる「加入期間」が5年延長され、65歳未満までとなりました。加入期間が長くなることで、より掛金を多く出し、老後資金を手厚く用意できるでしょう。しかし、60歳以降も加入できる人は、会社員のように厚生年金に加入しているか、国民年金に任意加入している人に限られます。自営業者や専業主婦(夫)のような、国民年金に加入していない人は、引き続き60歳未満までしか加入できません。
それでも、50歳を超えていて、iDeCoに加入するかどうか迷っている人にとって、積立期間の延長は、加入を後押しすることになるかもしれませんね。若いときからiDeCoに加入している人にとっては、65歳まで加入できるようになったことで今までよりも自分年金を増やすことができます。
それから、iDeCoの老齢給付金の受給開始時期が「60歳〜70歳」から「60歳〜75歳」に5年間延長されました。老齢給付金の受け取り開始の時期の選択肢が増えたことで、自分のライフプランに合わせた計画が立てやすくなります。老齢給付金は受け取り開始まで非課税で運用が続けられるので、5年長く非課税で運用ができるようになっています。
さらに、これまで企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入しているものの、規約がなくiDeCoに加入できなかったという人でも、iDeCoを併用して加入することができるようになりました。ただし、企業型DCでマッチング拠出している場合は、iDeCoに加入することができないため、どちらかを選択する必要があります。
今までiDeCoに加入できなかった人がiDeCoに加入することで、自分年金を作れるとともに、所得控除によって所得税や住民税の軽減効果があるため、資産形成に追い風にもなるでしょう。
実際、国民年金基金連合会の資料によると、企業型DCとiDeCo併用ができるようになった2022年10月のiDeCo新規加入者数のうち、企業型のある人の加入者数が前年同月と比べて300%を超えています。このように、注目の高さがうかがえます。
●iDeCoの新規加入者数(2022年10月)
国民年金基金連合会「iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入等の概況(2022年10月)」より
チリも積もれば貯金も増える
貯蓄を始めようと思ってもなかなか始められない人は、ちりつも貯蓄から始めてみるといいでしょう。買い物したお釣りや、財布の中の小銭を1日の終わりに全て貯金箱に入れるという方法でもいいですし、500円玉だけを貯金箱に入れるという方法でも構いません。
買い物したお釣りを貯めるアプリなどを使ってもいいかもしれません。
ちりつも貯蓄のいいところは、頑張らなくても知らない間に貯まっているということです。知らない間というのは先取り貯蓄と通じるところもありますね。お金が貯まっていくことを実感しやすいことと、楽しみながらできることもメリットです。
まとめ
お金を貯めるには、毎月の貯蓄額の割合を決めて先取り貯蓄すること、強制力のある仕組みを上手に使うことです。さらに目的別に貯める仕組みを作っておけば、後は知らない間に目標金額を貯めることができます。なんとなく始めるよりは目的をもって始めた方が長続きします。2023年は貯蓄上手を目指していきましょう。
【関連記事もチェック】
・「64歳で退職するとお得」は本当?失業給付は65歳退職といくら違うのか
・令和でも「昭和生まれの親」のお金の常識にとらわれる人の残念な末路
・「10月の給与が減った」と驚いたら必ず確認すべき給与明細の項目
・定年後に意外とかかる6つの「大きな出費」
・年金受給者でも確定申告でお金が戻る! 1月に届く「公的年金等の源泉徴収票」3つのチェックポイント
黒須 かおり ファイナンシャルプランナー(CFP)
女性を中心に、一生涯を見守るFPとしてmoney&キャリアのコンサルティングを行う。幸せになるためのお金の知識など幅広い資金計画とライフプランのアドバイスを手がけている。金融機関にて資産形成のアドバイザーとしても活動中。FP Cafe登録パートナー
この記事が気に入ったら
いいね!しよう