22/12/03
【2022年10月から】75歳以上「年金月17万円」医療費2割負担になっても家計は余裕なのか
2022年10月から、後期高齢者の医療費負担が変わりました。後期高齢者の医療費の自己負担は収入に応じて変わる仕組みで、従来は1割負担と3割負担の2区分でしたが、これまで1割負担だった人のうち収入が一定以上の世帯は2割負担になり、3区分となりました。
自己負担が1割から2割になったら、医療費の支出は倍増です。家計への影響は少なくないと思われますが、実際にはどうなるのでしょうか。
医療費の自己負担が2割になる人とは?
医療費の自己負担「2割」となる対象は、後期高齢者医療制度に加入している人です。基本的に75歳以上の方ですが、65~74歳で、一定の障害の状態にあると広域連合(後期高齢者医療制度の運営を担っている団体)から認定を受けた方も含みます。
課税所得が28万円未満ならば、1割負担です。課税所得は住民税納税通知書の「課税標準」の額で、前年の収入から、各種控除を差し引いた金額です。28万円以上の人が世帯にいなければ、1割負担です。
たとえば、75歳以上の単身者で収入が老齢年金のみ、1年で150万円の収入だとしたら、公的年金控除110万円と基礎控除43万円を差し引くと、その時点で課税収入が0円ですから、課税所得は28万円未満です。この場合は1割負担です。
課税所得が28万円以上あった場合には、収入によって1割負担か、2割負担になります。この2割負担が今回新たに設けられました。
ひとつの世帯に、75歳以上の人が1人だけで、「年金収入+その他の合計所得金額」が200万円未満なら1割、200万円以上なら2割です。
ひとつの世帯に、75歳以上の人が2人以上で、「年金収入+その他の合計所得金額」が320万円未満なら1割、320万円以上なら2割です。
課税所得が145万円以上の「現役並み所得者」は3割負担です。医療費の自己負担割合は、世帯単位で判定するので、同じ世帯の75歳以上の人も3割負担です。
たとえば、夫80歳、妻78歳の夫婦がいて、夫が現役並み所得者であれば夫婦とも3割負担です。
●窓口負担割合の判定フローチャート
厚生労働省の資料より
なお、2025年9月末までは、2割負担となる人の窓口負担割合の引き上げ負担増加額が1か月3000円までに抑えられる配慮措置も設けられています。
単身世帯で2割負担になったら?
後期高齢者の単身世帯で2割負担になるのは、年金収入とその他の合計所得金額が200万円以上の人。つまり収入が年金のみであれば、1カ月あたり17万円受け取っていれば2割負担ということです。
厚生労働省の調べによれば、75歳以上の医療費は、医科・歯科・薬局を含めてひとり当たり年93万600円。1カ月で7万7550円です。今までの1割負担であれば約7800円ですが、2割負担になれば倍の約1万5500円になります。
とはいえ、高齢単身無職世帯の家計費は、平均で約14万5000円です(総務省調べ)。もちろん約7800円の出費増は大きいですが、年金収入が月17万円あれば約2万5000円の黒字なので、医療費負担が2割になってもなんとかなりそうです。
夫婦世帯で2割負担の場合には?
後期高齢者の夫婦世帯で2割負担になるのは、年金収入とその他の合計所得金額が320万円以上の場合。たとえば、夫の年金が年250万円、妻の年金が年78万円だった場合、2割負担になる可能性があります。
75歳以上の医療費はひとりで月7万7550円かかりますから、1割負担なら夫婦で約1万5500円だったところ、2割負担になると倍の約3万1000円です。
夫婦高齢者無職世帯の家計費は、平均で約25万5000円です(総務省調べ)。年金収入が夫婦で月約27万円なので、約1万5000円の黒字。医療費の負担増が約1万5500円となるとギリギリの家計になりかねないですね。
まとめ
医療費負担が1割から2割になった人は、75歳以上の20%にあたる約370万人です。ご紹介してきたように、医療費負担が2割になるのは収入が一定以上の人が対象。「家計は余裕」とまではいえないものの、2割になったからといって家計に大きな負担になることは少ないでしょう。
しかし、これはあくまで平均値で考えた場合です。慢性疾患で定期的に通院するのであれば医療費の支出も計画的に考えられますが、急な入院や手術など、一時的に大きな支出が必要になることもあります。
リスクを避けるには、緊急予備資金の備えと、日ごろの健康管理が、今後ますます大切になっていくといえそうです。
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タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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