22/08/21
手元にまとまったお金がある時の投資方法、「積み立て」ではなく「一度に投資」が正解
たとえば手元に余裕資金が600万円あるとしましょう。
運用してみようと思っても、相場がまだ上がるようにも、そろそろ下がるようにも、どちらにも見えてしまいます。投資したくても、万が一にでも相場が急落して大損するのが怖くて投資する勇気が出ないかもしれません。それであれば、一度に投資する方法以外に、少しずつ積立てるという方法も検討したいところです。実際のところ、どちらの方法を取るべきなのでしょうか。
資産形成の確率計算ができる「シミュレータ」の活用
選択肢が複数あるとき、どれを選ぶかは冷静に比較検討したいものです。それなのに、資産運用となると、将来どうなるかは時の運のように扱われています。何とか将来の資産運用の成果を予測する方法はないのでしょうか。
ここで、私たちが開発した「ふくろう倶楽部」をご紹介させてください。ふくろう倶楽部は相場の暴落による悪影響を最小限に抑えつつ世界経済の成長の果実を得ることを目的とした「ふくろう君」というロボットアドバイザーを中心としたサービスです。登録が必要ですが誰でも無料で利用できます。
このふくろう倶楽部には「資産形成シミュレータ」という機能が搭載されています。このシミュレータを使えば、どのように運用すれば何年後にいくらくらいになりそうか将来の運用成果を予測してくれます。さらに、元本割れする確率も分かる優れものです。では、この資産形成シミュレータを使って、この問題の答えを見つけていきましょう。
一度に600万円投資すると10年後はどうなる?
まずは余裕資金600万円を一度に先進国株式に投資する投資信託(為替ヘッジなし)に投資してみましょう。投資期間は10年として、10年後の投資成果を予測します。
シミュレーションの結果は下図のようになります。
●600万円を先進国株式(為替ヘッジなし)に一度に投資した場合
ふくろう君(出典=ふくろう倶楽部)
このように10年後の投資成果は大きくばらけます。先進国株式はリターンも高いですが、リスクも高い、ハイリスク・ハイリターンの投資商品です。リスクが高いほど、将来の投資成果の予測範囲が大きく広がります。
まず注目していただきたいのが実現確率50%で1590万円(約2.65倍)になっていることです。実現確率50%ということは100人いれば50人は1590万円以上になっていることを意味します。これはかなり夢がありますね。
一方で、実現確率90%のところに目を移すと724万円(約1.21倍)です。こちらはかなり現実的な数字になっていますが、それでもプラスで終わっているので、まだいいでしょう。気になるのは元本割れしてしまう確率ですが5.637%。20回に1回は10年運用してもマイナスで終わってしまうという予測は、確率が高いのか低いのか正直なところ微妙な数字です。
10年間、月5万円ずつ積立てたらどうなる?
次に先ほどと同じ先進国株式投資信託(為替ヘッジなし)に月5万円ずつ10年間積立投資(合計600万円)を行った場合をシミュレーションし、10年後の予測をしてみます。
シミュレーション結果は下図のようになりました。
●先進国株式(為替ヘッジなし)に10年間、月5万円ずつ積立投資した場合
ふくろう君(出典=ふくろう倶楽部)
実現確率50%の運用予測は1012万円(約1.69倍)と一括して投資した場合よりもかなり小さくなってしまいます。つぎに実現確率90%の運用予測を見ると581万円(約0.97倍)と何と元本割れしています。気になる元本割れ確率は12.478%と一括して投資するよりもかなり高くなってしまいまいた。一度に投資するよりも積立投資の方が安全なイメージがあるのですが、いったいどういうことなのでしょうか。
運用期間が長くなるほど元本割れ確率は小さくなる
将来の年リターンがプラスであると仮定すれば、実現確率50%の赤いラインは右肩上がりになります。このラインの上下に確率分布が広がりますが、運用期間が長くなるほど赤いラインが上がっていくので元本割れ確率は小さくなります。
積立投資する場合を考えると、最初の月に投資したお金は10年間の運用期間がありますが、最後に投資したお金は1か月だけの運用期間がありません。積立投資は毎月新しいお金が投資されていくので、一括で投資する方法に比べると平均的な投資期間が短くなってしまいます。そのため、10年後の収益が小さくなり、元本割れ確率は高くなってしまうのです。
この結果を見ると、すでにまとまったお金があるならば、一度に投資した方が合理的と言えるでしょう。もちろん、これは積立投資を否定する結果ではありません。一括して投資してすぐに経済ショックに遭遇してしまい大きく損をしてしまう。そんなことになれば目も当てられません。私もそんな目に遭ってしまえばとても落ち込むでしょう。
どうしても怖いなら、少しずつ積立投資すればいいのです。ただ、世界経済が成長を続けるなら、暴落に遭遇してもいずれ回復し、大きな収益を生んでくれることが期待できるという結果は知っておきたいところです。
このシミュレータは過去の運用データを活用して構築されていますので、将来この結果通りになるとは限りません。それでも、こうして計算すると、投資方法の違いによる傾向の差を理解したり、特徴をつかんだりすることができるでしょう。投資判断をする前に、ぜひご活用ください。
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藤川 太 生活デザイン代表/ファイナンシャル・プランナー(CFP®)
2001年に「家計の見直し相談センター」を開設以来、3万世帯を超える家計の見直しや資産形成相談を行ってきた。2022年には無料の資産形成アドバイスサービス「ふくろう倶楽部」をスタートさせた。『やっぱりサラリーマンは2度破産する』など著書・監修書多数。
生活デザイン株式会社:https://enfp.co.jp/
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