22/07/08
年金から引かれる税金・社会保険料はいくら? 実際の手取りはどうなるのか
50歳以降になると、ねんきん定期便には将来受け取れる年金の見込額が掲載されます。年金受取の準備として事前におおよその受取り金額を把握することができますので、とても便利ですよね。ですが、ねんきん定期便に記載されている金額=受取額ではありません。なぜなら、年金は額面通りの金額を受け取れるわけではなく、受取時には税金や社会保険料が天引きされるからです。
今回は、「ねんきん定期便の金額から税金・社会保険料が引かれたあとの手取り額はおおよそいくらか」について、手取り額を具体的な実例でご紹介したいと思います。将来、年金でうまくやりくりするためにぜひご参考にしていただければと思います。
振り込まれる年金は「額面」ではなく「手取り」
年金からは、税金や社会保険料が天引きされます。会社員の給与の「額面」と「手取り」の関係と同じく、年金も一般的に「源泉徴収」や「特別徴収」という仕組みによって税金や社会保険料が天引きされた残りが手取りとなります。
老齢年金から天引きされる税金と社会保険料には、「所得税」「住民税」「介護保険料」「国民健康保険料もしくは後期高齢者医療保険料※」があります。
※健康保険料は、75歳未満なら「国民健康保険料」、75歳以上なら「後期高齢者医療保険料」が天引きされます。
●年金の「額面」と「手取り」のイメージ
筆者作成
「額面」の金額を聞いただけで喜んでいると、いろいろと引かれた「手取り」の金額が、思った以上に少なくてがっかりしてしまうかもしれません。
税金・社会保険料の金額はどう決まる?
年金から天引きされる税金・社会保険料の金額はどのように決まるのか、簡単に紹介します。
●年金から天引きされる税金①:所得税
年金に所得税がかかるときは、必ず年金から天引きされるものとなります。年金の所得の種類は「雑所得」となります。65歳以上の方の場合、公的年金の雑所得の計算では所得控除額(110万円+各種控除)が適用されます。
①年金額が110万円以下の場合は、「雑所得」はゼロとなり非課税
②年金額が110万円超の場合は、以下の式で所得税額を決定する
[所得税の決まり方]
所得税=[年金収入額−所得控除額(110万円+各種控除)]×5.105%(所得税率5%×復興特別所得税率0.105%)
※「各種控除額」のうち、基礎控除48万円は誰でもあるものなので、65歳以上の場合は「年金が158万円以下」なら所得税はかからないことになります。
●年金から天引きされる税金②住民税
住民税は前年の所得を基準に税額が決まります。住民税が年金から天引きされる条件は、老齢もしくは退職を理由として受給している年金で、年間の年金額が18万円以上の人です。所得税と同様、所得控除以内の方であれば、住民税が非課税となることもあります。
[住民税の決まり方]
住民税=[(年金額-各種控除額)×住民税の税率]-調整控除額+均等割額
住民税は、所得金額(所得控除額(110万円+各種控除))から社会保険料、控除額を差し引いた額に、各市町村で定められた住民税の税率をかけて、さらに調整控除額を引きます。そして一律の均等割を加えて計算します。
●天引きされる社会保険料①介護保険料
介護保険料は、65歳以上の方のうち、老齢もしくは退職、障害または死亡を理由として受給している年金から引かれる社会保険料です。65歳以上の年金受給者は介護保険の「第1号被保険者」として保険料が引かれます。
[介護保険料の決まり方]
介護保険料の金額は所得を10段階に分けて計算します。
5段階の人を基準額とし、基準額×0.3~基準額×1.8で計算します。
●天引きされる社会保険料②国民健康保険料(後期高齢者医療保険料)
65歳以上75歳未満の人の年金から引かれるものとして「国民健康保険料」があります。
また、75歳以上の人、もしくは65歳以上75歳未満でも、重度障害などが理由で後期高齢者医療保険制度に該当する人は、「後期高齢者医療保険料」が引かれます。
[国民健康保険料の決まり方]
国民健康保険料には、基本的に平等割・均等割・所得割の3つの計算方法があり、それらを合計して世帯ごとで保険料が計算されます。受給する公的年金の増額による影響が生じるのは所得割の部分です。また、国民健康保険料には軽減措置(7割・5割・3割・2割軽減など)が設けられています。
年金の額面が月額15万円の人の年金手取り額は?
年金の額面(支給額)が月額15万円(年間180万円)の場合の税金や社会保険料の負担額は、以下の通りです。
●年金額面月額15万円の方の年金手取り額
筆者作成
年金が額面で月額15万円というのは、平均的な会社員の受給額に近く、該当する方も多いと思います。しかし、額面が15万円であっても、そこから税金が0.2万円、社会保険料が1.2万円引かれるので、目安の手取り額は月13.6万円になってしまいます。年間に換算すると、年180万円の年金から16万円の税金が引かれることになるため、年間の手取りは164万円に。年金の手取りは年金受給額の9割程度(90.8%)にダウンしてしまうのです。
なお、国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料は住んでいる都道府県、市町村によって計算方法がそれぞれ異なってきます。軽減措置の対象なども含めて、各市区町村のホームページ上で確認できる場合もあります。より詳細に知りたい場合には、各市区町村の担当部署に尋ねてみることをおすすめします。
まとめ
社会保険料は少子高齢化にともなって、さらに負担が増えることが予想されています。年金受給者の負担が増えることはあっても、軽くなることは考えにくいでしょう。実際に受け取れる年金の額を正確に把握するためにも、社会保険料の徴収額は自分で確認しておくことが大切ですね。
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KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。
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