23/01/07
ねんきん定期便「放置」で起こる3つの悲しい末路
毎年の誕生日に送られてくる「ねんきん定期便」。「来ていたような気がするけど、見ないままどこかにいっちゃった」「数字がたくさんあって、どこを見ればいいのかわからない」などという声がよく聞かれます。
今回は、ねんきん定期便をチェックせず放置した結果起こる3つの不都合なことと、ねんきん定期便が届いたらとるべきたった1つの行動をご紹介いたします。
年に1回のことですので、手元に届いている方は今すぐ、ない方は次回届いたときに、ぜひ行動してみるようにしてください。
年金の状況が確認できるねんきん定期便
ねんきん定期便は、これまでの年金加入期間や加入実績に応じた年金額、保険料納付額、最近の月別納付状況などが確認できる書類です。日本年金機構が毎年1回、誕生月に国民年金および厚生年金の加入者の方に対して、年金加入記録の確認と年金制度について理解を深めてもらうことを目的として送付しています。
●ねんきん定期便の区分と内容
通常、ねんきん定期便はハガキで届きますが、35歳、45歳、59歳の誕生月には封書のねんきん定期便が届きます。また封書のねんきん定期便には、年金加入記録の確認方法を記載したパンフレットや、年金加入記録に「もれ」や「誤り」があった場合に提出する年金加入記録回答票が同封されています。もれや誤りがない場合には、回答する必要はありません。
封書のねんきん定期便は、毎年送られるねんきん定期便の中でも特に重要な通知となるので、必ず手元に保管するようにしましょう。
ねんきん定期便、放置で起こる3つの悲しい末路
重要なねんきん定期便とはいえ、複雑な書類を見るのは少し面倒に感じるという方も多いでしょう。とはいえ、放置すると不都合なことが起きる可能性があります。それを防ぐためのねんきん定期便のチェックポイントと対処法を3つ紹介します。
●ねんきん定期便(50歳未満・表面)
●ねんきん定期便、放置で起こる悲しい末路①:「もれ」や「誤り」の原因に
→住所・氏名が一致しているかチェックしよう
ねんきん定期便が届いたら、上の①の宛名の住所氏名が現在の住所氏名と一致しているか、必ず確認するようにしましょう。特に直近で結婚や離婚した場合、変更手続きがなされておらず、以前の名義や旧住所のままになっている場合もあります。誕生月になってもねんきん定期便が届かない場合も同様です。
厚生年金に加入している会社員は勤務先の年金担当部署に、国民年金に加入している自営業者は役所や年金事務所の窓口に問い合わせてみましょう。
【表示されている氏名が異なっている場合の対処法】
厚生年金保険に加入している方は勤務先の事業所へ、国民年金に加入している方はお住まいの市区町村役場へ、厚生年金保険・共済組合等に加入している方の配偶者は、配偶者の勤務先の事業所へ変更の申し出をします。
●ねんきん定期便、放置で起こる悲しい末路②:うっかり「未納」に気づかない
→未納となっている期間がないかをチェックしよう
「最近の月別状況です」の部分を開いて未納の有無を確認しましょう。未納の有無は②の「国民年金(第1号・第3号)納付状況」の部分で確認できます。ここには年金の加入や変更履歴などの記録が記載されていて、会社を辞めて国民年金に切り替わった時期や、専業主婦になって夫の扶養に入った時期などを確認することができます。
転職や離職経験がある人は、年金が切り替わるタイミングでうっかり国民年金が未納になっているケースもあります。未納の場合、将来の年金額が減ってしまうばかりか、老齢年金だけでなく、遺族年金や障害年金の受給にも支障をきたすことがあるので、いざというときにこれらの年金を受給できるよう、できるだけ支払っておくことをおすすめします。
【未納があった場合の対処法】
年金の未納が続いた場合、まず納付督励といって、封書やはがきで保険料支払いの案内が届きます。通常は2年前までの分であればさかのぼって納めることができます。案内にしたがってすみやかに納付をしてください。
年金保険料はできるだけ全額支払うことをおすすめしますが、やむを得ない場合は放置せず、免除や猶予申請を行いましょう。免除や猶予から10年以内であれば、保険料を後から納める(追納する)ことも可能です。
●ねんきん定期便、放置で起こる悲しい末路③:手続きの不備がある場合も
→標準報酬月額や標準賞与額の部分をチェックしよう
「最近の月別状況です」の③にある「厚生年金保険」の部分で、内容に「もれ」や「誤り」がないか確認します。具体的には、記載されている標準報酬月額や標準賞与額の部分を確認して下さい。実際に保険料を支払ったのに記載がなかったり、給与の大きな変動があったのにそのままになっていたりしないかをチェックしましょう。
一時期勤務していた企業が手続きをちゃんとしておらず、加入がない時期がある、といったケースが考えられます。昔のことになると覚えてないことが多いため、転職などがあった際には、できるだけわすれずチェックをしましょう。
【年金加入記録にもれや誤りがある場合の対処法】
年金加入記録回答票に必要事項を記入して、同封の返信用封筒で返送するか、お近くの年金事務所に提出して下さい。最寄りの年金事務所は、日本年金機構のホームページで場所を確認することができます。
50歳未満のねんきん定期便では将来もらえる年金額は分からない
以上3つのポイントを確認すれば、年金保険料をきちんと払っているのに年金額にちゃんと反映されないといった最悪の事態は免れます。では、肝心の将来もらえる年金額はどこを見ればよいのでしょう。
50歳以降の方に送られるねんきん定期便には、このまま60歳まで払い込みを続けた場合の「老齢年金の種類と見込み額」がハガキのうら面に記載されるようになります。途中で仕事を辞めたり、保険料の払い込みが停止になったりしなければ、ほぼ記載通りの年金をもらえることになるので、これをもとに老後の生活設計を立てることが可能になります。
しかしながら、50歳未満の方に送られるねんきん定期便の場合、現時点での保険料の払い込み期間に応じた金額しか記載されていません。年齢が若い20代~30代の人は年金加入期間が短いため「これまでの加入実績に応じた年金額」の少なさに驚くかもしれません。つまり、50歳未満の場合、今後の加入が全く考慮されていないため、実際の年金額とはかけはなれた金額になってしまうのです。
●ねんきん定期便(50歳未満・裏面)
ねんきん定期便が来たら、とるべきたった1つの行動
そこで、筆者は50歳以下の方に向けては、ねんきん定期便が送られてきたら、たった1つだけアクションを起こすことをおすすめしております。それは、ねんきん定期便が届いたら、アクセスキーを利用して「ねんきんネット」に登録すること、たったこれだけです。ねんきんネットは、日本年金機構のウェブサイトからアクセスできます。また、マイナンバーカード取得者が利用できる「マイナポータル」からも利用可能です。
ねんきん定期便はとても重要な書類なのですが、なにしろハガキなので、記載できる情報量に限りがあります。あなたが本当に知りたい情報を補完してくれる強い味方が、ねんきんネットなのです。また、一定期間(1年間以上)ログインしていないと日本年金機構から定期的に確認を促すメールが送られてきますので、うっかり年金加入履歴を見ないまま数年間放置してしまうという事態も防げます。
ここでは、ねんきんネットで活用したい3つの機能をご紹介します。
●ねんきんネットの便利な機能①:情報量と更新頻度が格段に違う[年金記録照会]
例えば、はがきで届くねんきん定期便の年金記録は直近1年間のみの記載しかありませんが、ねんきんネットにアクセスすれば、あなたの20歳からのすべての年金記録が確認できます。また、年金記録照会も以下のようにより詳細な情報が確認できます。
【ねんきんネットの[年金記録照会]で確認できること】
・これまでの年金加入履歴
・厚生年金加入記録
資格取得/喪失年月日・お勤め先の名称・標準報酬月額/標準賞与額 など
・国民年金加入記録
各月の納付状況 など
国民年金保険料を納付していない期間や厚生年金保険の標準報酬月額に大幅な変更がある場合など、特に注意して確認すべき年金記録がアイコンで分かりやすく表示されるため確認も簡単です。
【ねんきんネットの[年金記録照会]画面イメージ】
また、更新頻度についても、ねんきんネットが圧倒的に有利です。ねんきん定期便のはがきが届くのは年に1回のみですが、ねんきんネットは自動的に最新の情報に更新され、いつでもアクセスして情報を確認できます。
●便利な機能②:充実したシミュレーションがうれしい[年金見込額試算]
さらにおすすめなのが、シミュレーション機能です。50歳未満の方であれば特に、この先ずっと定年まで今の会社に勤めるという前提条件は通用しないかもしれません。ねんきんネットの優れた点は、これからの働き方によって将来もらえる年金がいくらになるのかを簡単にシミュレーションできるところです。
将来もらう年金見込み額は、60歳までに会社員で働くのか、自営業者として働くのか、また保険料はいくら納めるのかによって金額が異なります。そこで、今後の職業や収入についての質問に答えるだけで、それぞれのケースで年金見込額試算ができます。また繰上げ受給や繰下げ受給を選択した場合の年金見込額の試算も可能です。そのため、年金受給開始年齢によってもらえる金額がどのように変動するかを実際の数字を目で見て確認できます。
●便利な機能③:年金記録の管理・保存が簡単(電子版ねんきん定期便)
「電子版 ねんきん定期便」は、毎年はがきで送られてくるねんきん定期便の内容をインターネットで確認することができるサービスです。電子版ねんきん定期便の閲覧・PDFファイルのダウンロードをすることで、年金記録の管理・保存が簡単にできるようになります。
電子版のねんきん定期便ははがきで送られてくるレイアウトがそのまま採用されているため、いままでハガキで確認することに慣れている方でも違和感なく利用できるものになっています。
一度、ねんきんネットに登録さえ完了すれば、ねんきんネット利用者へは、誕生月に電子版のねんきん定期便のお知らせが届くようになります。このお知らせメールは、郵送されるねんきん定期便よりも1~2カ月ほど早く内容を確認できるのもありがたいですね。
なお、「ねんきんネット」内で、はがき版のねんきん定期便の郵送を停止することもできます。郵便物をチェックするのが億劫な人や、紛失してしまうといった懸念がある人は電子版ねんきん定期便を利用するのもおすすめです。
ねんきんネットへの登録は、ねんきん定期便があればとても簡単
ねんきんネットを利用するためには、新規ご利用登録(ユーザーIDの申請)が必要です。通常、このユーザーIDはインターネットでの手続き後、5日程度で郵送されてきます。この利用登録が面倒で、ねんきんネットの登録をためらう方も少なくありません。しかし、ねんきん定期便のハガキに記載されている“お客様のアクセスキー”と基礎年金番号(年金手帳に記載)を使用すれば、ユーザーIDの申請はスキップして、その日のうちに「ねんきんネット」の登録まで完了し、簡単にアクセスすることができるのです。なお、ねんきん定期便に記載されているアクセスキーを使用できる期間は3カ月間なのでご注意ください。
●ねんきん定期便のアクセスキー(50歳未満・裏面)
手軽な「公的年金シミュレーター」も使える
年金の見込み受給額は、日本年金機構が運用している「ねんきんネット」でも試算可能ですが、上記の通り、利用登録が必要で、本人確認のための手続きがネックという声もあります。
そこで、厚生労働省は「公的年金シミュレーター」を開発し、2022年4月25日から試験運用を開始しています。「公的年金シミュレーター」は、スマートフォンで簡単に年金額の試算ができるツールです。
2022年4月以降、ねんきん定期便の表面の右下には、二次元コードが付いています。この二次元コードをスマートフォンで読み取り、生年月日を入力すると将来の年金見込額を試算できるというものです。
●公的年金シミュレーターの二次元バーコード
ねんきん定期便の二次元コードを読み取り、生年月日を入力すると、自動的に現在の働き方を続けた場合の年金見込み額がグラフで表示されるようになっています。さらに、年金受け取り開始年齢や就業完了年齢などの諸条件を変えたいときには、スライドバーやプラスマイナスボタンを操作するだけで将来もらえる年金額の試算が変わり、その都度グラフで再表示されるようになっています。
ただし、公的年金シミュレーターの資産額はあくまで参考の金額です。公的年金シミュレーターでは自分の過去の納付状況等の確認まではできません。また、より詳細に条件を設定して年金見込み受給額を把握したい場合にも、前述の日本年金機構「ねんきんネット」を利用することをおすすめします。
まとめ
ねんきん定期便が届いたら、アクセスキーを使ってすぐに「ねんきんネット」に登録する!これこそが、ねんきん定期便、放置で起こる悲しい末路を防ぎ、老後の不安を解消するためにとるべき、たった1つのアクションです。
老後の備えは現実を知ることから始まります。自分の年金がいくらもらえるのかを「ねんきんネット」を使って把握することは、現実に即した働き方のシフトチェンジや老後の生活設計にとても役立つはずです。ねんきん定期便が届いたら、ねんきんネットを始めるきっかけと捉えてみるのはいかがでしょうか。
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KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。
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