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22/05/08

資産運用・経済

年金未納の場合「追納」と「投資」どっちを優先すべきか

年金未納の場合「追納」と「投資」どっちを優先すべきか

国民年金保険料は20歳から60歳までの40年支払うのが原則。しかし、何らかの理由で免除・猶予・未納になることもあります。まとまった資金が用意できたら、追納することで本来の年金額がもらえますが、中には「そのお金で投資に回したほうが儲かる」と思う方もいるかもしれません。では、年金未納の場合、追納と投資のどっちを優先すべきなのでしょうか。一緒に考えてみましょう。

国民年金保険料の納付月数は追納・任意加入で増やせる

国民年金保険料は、自営業やフリーランスなどの第1号被保険者の場合、自分で納める必要があります。ですが、所得が少ない等の理由で国民年金保険料が払えない場合には、国民年金保険料の免除制度や納付猶予制度を利用することで、国民年金保険料の免除や支払いの猶予が受けられます。また、免除制度や納付猶予制度を使わずに国民年金保険料を納めないままでいると未納の扱いとなってしまいます。

本来納めるべき国民年金保険料を納めずにいると、将来受け取れる年金額は減ってしまいます。ですが、後から国民年金保険料を納めることができる追納をすれば、本来の年金額を受け取ることができます。

追納には、期限があります。未納は納付期限から2年以内、免除制度や納付猶予制度を使っている場合は10年以内です。免除や猶予の追納を3年目以降に行う場合は、所定の加算額が追加されるので、追納を希望であれば、早めに手続きを取って頂くのが良いでしょう。

追納の期限が過ぎ、国民年金保険料の未納期間がある場合も、60歳から65歳未満であれば、国民年金に任意加入し、納付月数を増やすことができます。納付月数が増えれば年金額を増やせますし、40年に達すれば老齢基礎年金を満額受給できるようになります。こちらも期間が限られていますので、未納期間がある方は早めに利用するのが良いでしょう。

将来もらえる年金の差はいくら?

国民年金保険料を追納または任意加入で納付した場合、受け取れる年金額はいくら違うのかを見ていきましょう。ここでは、仮に1年分を追納したとします。

国民年金保険料は毎年多少変動します。2022年度の1か月あたりの国民年金保険料は1万6590円です。したがって、1年で19万9080円、およそ20万円になります。

一方、国民年金の受給額は、満額×納付月数/480月で計算されます。
480月すべて納付して満額受給できる場合の1年あたりの年金額は、77万7800円(2022年度)ですので、1年間(12か月)分を追納すると、65歳以降でもらえる年金額は、約2万円(77万7800円×12月/480月=1万9445円)を増やすことができます。
ですので、1年間約20万円の追納分は、10年ほどで元が取れることになります。

仮に、65歳から90歳までの25年間年金をもらえるとすると、年金の総額は約50万円。1年間の追加支払いが約20万円なので、相殺してトータルで約30万円のプラスとなります。

また、繰下げ受給を行えば受給額をさらに増やすことも可能です。繰下げ受給とは、本来65歳からもらえる年金を66歳から75歳までの間に遅らせることで、受給年金額を増やせる仕組みです。1か月遅らせるごとに0.7%、10年間で最大84%増えます。年金額が月14万円(年168万円)の方が10年間繰り下げると、単純計算で年金額は月約25.8万円(年約309万円)に増えます。

繰下げ受給は率で増えていくので、元となる年金額が多くなるほど、年金額の増加分も多くなります。余裕資金があり、すぐに使う予定がないのであれば、できるだけ満額受給できるように追納し、繰下げ受給で受取額を増やすことをお勧めします。

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「追納」と「投資」の違い

ここまで、年金の追納と繰下げ受給で年金額がいくら増えるかを見てきました。しかし中には、投資をしたらもっと増やすことが可能なのではと思う方もいらっしゃるかと思います。しかし、投資は年金の追納とは明らかに違います。

最大の違いは、投資はプラスになることもあればマイナスになることもあることです。年金額が多くないのに、投資で失敗してしまうと、年金も資産も増えないことになり、老後がますます不安定になってしまいます。

将来の大切な老後資金を用意するのであれば、まずは追納や任意加入で、受取額が見える年金を満額受け取れるようにしましょう。そのうえで、老後のお金を投資で上乗せすると、すべてを投資に回した時よりも安心して将来の資産形成を行うことができます。また、追納の保険料は社会保険料控除の対象となりますので、税制面でもメリットがあります。

何より、国民年金保険料を納めることは国民の義務です。支払うことが困難な時には、免除や猶予の制度を利用するべきですが、余剰資金ができたのであれば、年金の追納・任意加入を優先しましょう。

まとめ

年金は受取額が見える制度です。中には、国民年金保険料の免除・猶予・未納によって、国民年金が満額受給できる納付月数に達していない人もいるでしょう。しかし、まとまった資金ができたのであれば、投資よりもまずは年金の追納・任意加入を優先。年金を満額受け取れるようにしてから、投資を活用して老後資金の準備を行うことをお勧めします。

小塚歩 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)

大手証券会社、IRリサーチ会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。FP事務所 まいまねい 代表。人生100年時代だからこそ、もっと金融を身近に感じてほしく、セミナー活動を通して、金融リテラシーや金融教育を広めるセミナー講師。得意分野は投資・金融資産運用。

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