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23/01/16

資産運用・経済

退職金をいくら運用に回すべき?定年前後の資産運用戦略と運用先をプロが解説

退職金をいくら運用に回すべき?定年前後の資産運用戦略と運用先をプロが解説

定年後であっても、お金を増やすには投資が欠かせません。しかし、虎の子の退職金をみすみす減らすような投資になってしまったら目も当てられません。今回は、定年前後の資産運用戦略と退職金の運用方法、おすすめの運用先を解説します。

お金を減らさずに増やす運用が大切

資産運用の基本は「コア・サテライト戦略」。資産を安定的に運用する「コア」と、積極的に運用する「サテライト」に分け、資産を守りながら利益を狙う方法です。定年前後であってもなくても、この点は変わりません。

●コア・サテライト戦略のイメージ

著書「定年前後のお金の教科書」(宝島社)より

コアは総資産の7割から9割と多めに確保します。コア資産としては、現預金、定期預金、投資信託のインデックスファンドやバランスファンド、不動産、金(Gold)、国内や米国の債券などがあります。コア資産の役割は、長期運用で堅実に増やすことです。コア資産は比較的値動きが安定しており、長期的に右肩上がりで増える期待ができます。

対するサテライトは残りの1割から3割で運用します。サテライト資産としては、日本株、米国株、投資信託のアクティブファンド、FX(外国為替証拠金取引)などがあります。サテライト資産の役割は、大きな値動きを生かして積極投資を行い利益を狙うことです。

コア・サテライト戦略を利用することで、お金を減らさずに増やす運用を目指すことが大切です。

定年前後に目指したいポートフォリオ

ポートフォリオとは、どんな資産にいくら投資するかを表す、資産配分のことです。定年前後に目指したいポートフォリオは、次のとおりです。

●コア資産

・個人向け国債
・退職金専用定期
・預貯金
・インデックスファンド
・バランスファンド
・ETF

●サテライト資産

・日本株
・米国株
・アクティブファンド

定年前も定年後も、ポートフォリオを組む際はコア・サテライト戦略を心掛けましょう。
コア資産で、つみたてNISAやiDeCoのような非課税口座を活用する場合は、インデックスファンドやバランスファンドが安定成長資産としておすすめです。非課税口座をフル活用した上で、課税口座で投資信託やETFを積み立ててもいいでしょう。
サテライト資産は株式がおすすめです。株主優待を狙う人は日本株を購入しましょう。配当狙いであれば、米国株がおすすめです。

いずれにしても、コア資産を多めにするという基本方針は継続しましょう。定年前後で資産配分を大きく変更する必要はありません。あえて調整するのであれば、サテライト資産をやや減らす程度で十分でしょう。

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退職金の運用先はどうする?

退職後に資産運用を行う場合、退職金を投資の元本に充てるケースが多いでしょう。しかし、だからといって退職金を全額投資に回すのはおすすめできません。投資は「冷静に判断すること」が必要不可欠ですが、全額投資してしまうと冷静さを欠いてしまいやすいからです。

では、退職金はいくら投資に回すのがいいのでしょうか。
退職金をもらう前の預貯金額によっても変わるのですが、たとえば退職金が2000万円であれば1000万円と、半分を預貯金や個人向け国債などの安全資産に割くとよいでしょう。

残りの半分のお金を投資に回す場合は、投資のタイミングを複数回に分けましょう。たとえば、
・月に50万円投資・計20回
・月に100万円投資・計10回
・1景気サイクルの5年間で積立投資
などです。購入するタイミングを分散すると、平均購入単価を下げることができ(ドルコスト平均法)、利益が出しやすくなる期待ができます。投資先は投資信託やETFがおすすめです。

個人向け国債・退職金専用定期を活用しよう

国が発行している「個人向け国債」は、毎年2回利息を受け取れ、満期になると全額返済される商品です。

●個人向け国債の種類

著書「定年前後のお金の教科書」(宝島社)より

個人向け国債には、発行時の利息が満期まで変わらず満期が3年の「固定3年」、同じく金利が変わらず満期が5年の「固定5年」。半年ごとに利息が変わり満期が10年の「変動10年」の3種類があります。

変動金利といっても、金利は0.05%より下がりません。それどころか、金利が上がればその分利益も増えるため、変動10年がおすすめです。実際、変動10年の利率は0.33%まで上昇しています(2023年2月発行分)。

また、リスクを取らずにお金を増やすなら、「退職金専用定期」もおすすめです。退職金専用定期は、「退職金限定」「退職から○カ月以内(○年以内)」といった金融機関ごとの条件を満たせば、普通預金より高い金利で預けられるサービスです。

ただし、高い金利を受け取れるのは最初の1回のみです。住んでいる地域の複数の銀行に退職金専用定期があれば、金利が下がったタイミングでほかの金融機関に乗り換えるとよいでしょう。

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おすすめの投資信託・ETFは?

iDeCoやつみたてNISAといった非課税制度をフル活用するには、投資信託を利用するのがおすすめです。一方、一般NISAや特定口座で投資を行う場合には、ETFを利用するといいでしょう。具体的に、どのような投資信託・ETFがおすすめなのか、指針と主な投資信託をまとめて紹介します。

●リスクを抑えたいなら…4資産均等型のバランスファンド

ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)(信託報酬:0.154%)

●やや強気なら…8資産均等型のバランスファンド

eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)(信託報酬:0.154%)

●積極的にリスクを取るなら…全世界株・米国株全体・NASDAQ100に投資する投資信託・ETF

・全世界株
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)(信託報酬:年0.05775%)
バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)(経費率:0.07%)
・米国株全体
SBI・V・全米株式インデックス・ファンド(信託報酬:0.0938%)
バンガード・トータル・ストック・マーケットETF(VTI)(経費率:0.03%)
・NASDAQ100
インベスコ・QQQ・トラストシリーズETF(QQQ)(経費率:0.20%)

●暴落相場にも強さを発揮…米国増配株に投資するETF

バンガード・米国増配株式ETF(VIG)(経費率:0.06%)

定年前後の人におすすめできない投資も

投資は老後の資産形成に役立ちますが、定年前後の人にはおすすめできないものもあります。

●定年前後におすすめできない投資1:退職金運用プラン

退職金運用プランは、定期預金と投資信託やファンドラップなどの商品をセットにした商品。多くの場合、資産の半分を定期預金に預け、もう半分を投資信託で運用します。
定期預金の部分では、3ヶ月間や6ヶ月間など期間は短いですが、年利5〜7%と高い金利が提示されているため、お得に感じるでしょう。しかし、投資信託の部分では購入時手数料や信託報酬が高く設定されているため、トータルで損するようにできています。

●定年前後におすすめできない投資2:オプション付き投資信託・仕組債

オプション付き投資信託には、株式やREITに投資をしつつ、オプション取引を行い利益の上乗せをする「カバードコール型」や「通貨選択型」などがあります。
また、仕組債は債券にオプションなどを組み込んだ商品。元本や利息の支払いに、株価指数や為替などの金融指標の変化による条件が付与されて、条件のない債券よりも高い利回りが提示されています。
しかし、どちらも手数料が高く、仕組みも非常に複雑です。リスクもとても高いので、定年前後の運用には不向きです。

●定年前後におすすめできない投資3:外貨建て保険

外貨建て保険は、保険料の支払いや保険金の受け取りが外貨で行われる保険です。米ドルや豪ドルといった外貨で保険料を支払い、保険金などを受け取るときも外貨で受け取ります。「外貨は金利が高いので、円建ての保険よりも高い利回りが期待できる」「元本が保証されている」などとよさそうですが、外貨建て保険の「元本保証」は、あくまで外貨ベースです。多少金利が得られても、外貨を円に戻したときに、為替レートの値動き次第で金利以上に損をする可能性があります。
また、外貨建て保険は販売手数料の高い商品なので、金融機関の「勧誘」も熱心。近年国民生活センターへの相談件数が増加しているほどです。

●定年前後におすすめできない投資4:外貨預金

外貨預金は、日本円以外の通貨(外貨)で預金することです。為替レートが預けたときより円安になれば為替差益が得られるというメリットはあるのですが、逆に円高になれば損失が続いてしまいます。そのうえ、日本円を外貨にするとき、外貨を日本円にするときにそれぞれ高い手数料がかかります。

●定年前後におすすめできない投資5:毎月分配型の投資信託

毎月分配型の投資信託では、毎月分配金をもらうことができます。お小遣いのように毎月分配金がもらえるのは一見嬉しいかもしれませんが、おすすめできません。
毎月分配型の投資信託は、運用で利益が出ているときにはその利益から分配金を支払いますが、運用で利益が出なかったときは元本を取り崩して分配金を支払ってしまいます。すると、分配金の分だけ元本が減ってしまうため、お金がなかなか増えていかないのです。

また、複利効果の面から考えると、分配金は受け取るよりも再び投資に回した方が効率よく資産を増やせるでしょう。毎月分配金を受け取ると、複利効果を生かすことができなくなってしまいます。さらに、毎月分配型の投資信託は信託報酬などの手数料が高く設定されているのも問題です。

●定年前後におすすめできない投資6:不動産投資

不動産を購入して貸すことで家賃を得る不動産投資自体は、悪い投資ではありません。しかし、定年後は住宅ローンをなかなか借りられません。また、住宅ローンが借りられないからと、退職金で一括購入すると、今度は元を取るまでに時間がかかってしまいます。
仮に3,000万円の物件を購入して家賃10万円で貸し出しても、元が取れるのは単純計算で25年後。退職金を減らす可能性の高い商品だといえます。

まとめ

資産運用の基本は「コア・サテライト戦略」です。お金を減らさずに増やす運用を目指すことは、定年前後であってもそうでなくても変わりません。資産の7割から9割を占めるコア資産には個人向け国債(特に変動10年)、退職金専用定期、預貯金、インデックスファンド、バランスファンド、ETFなどを利用。残りの1割から3割のサテライト資産には日本株、米国株、アクティブファンドを利用しましょう。定年前後で資産配分を大きく変える必要はありませんが、サテライト資産をやや減らすのも一つの手です。

退職金は全額投資するのはNG。半分は安全資産に組み入れましょう。残りの半分は投資のタイミングを複数回に分けて投資しましょう。おすすめの投資先は投資信託・ETF。リスク許容度に合わせて選ぶようにしましょう。

退職金では買ってはいけない金融商品もあります。いずれも手数料が高くて損しやすい商品ですので、買わないように注意しましょう。

せっかく手にした退職金を大きく減らすのは悲しいことです。着実に増やせる投資を心がけましょう。

今回の記事は動画でも紹介しています。ぜひご覧ください。

頼藤 太希 マネーコンサルタント

(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki

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