25/01/13
60歳貯蓄ゼロ・退職金ゼロの人が取るべき5つの生存戦略
60歳といえば、これまでにコツコツと貯めてきた貯蓄がまとまった金額になり、数年後にやってくる定年退職で退職金が入ることで、金銭的に余裕が出てきそうな年代といえます。しかし、中には住宅ローンの支払いなどの諸事情により貯金を使い果たし、退職金も見込めない人がいます。そんな貯蓄も退職金もゼロの人は、生きていくために何をするべきなのでしょうか?今回は、貯蓄や退職金ゼロの人が老後を生きていくための生存戦略となる5つの方法をご紹介します。
60代で貯蓄ゼロの人はどれくらいいる?
60代で貯蓄がゼロという人は少なからずいるようです。金融広報中央委員会が実施した「家計の金融行動に関する世論調査(2023年)」の総世帯における調査結果によると、60歳代で金融資産非保有(貯蓄ゼロ)の人は全体の24.6%でした。つまり、60歳代の約4分の1が貯蓄ゼロということです。
貯蓄ゼロ・退職金ゼロの人は老齢年金だけが頼りの収入になります。しかし、年金だけで生活していくのは少々大変かもしれません。 総務省が公表する「家計調査年報(家計収支編)2023年平均結果の概要」によると、65歳以上夫婦のみの無職世帯では1ヵ月の実収入が244,580円のところ、消費支出は250,959円、非消費支出(税金や社会保険料など)は31,538円で、生活費が37,916円不足するという結果が出ています。
<夫婦高齢者無職世帯の家計収支>
総務省「家計調査年報(家計収支編)2023年平均結果の概要」より
また、65歳以上の単身無職世帯では、実収入が126,905円のところ、消費支出が145,430円、非消費支出が12,243円で、生活費が30,768円不足しています。
<高齢単身無職世帯の家計収支>
総務省「家計調査年報(家計収支編)2023年平均結果の概要」より
家計調査の結果を見ると、年金収入だけの生活は厳しくなるため、貯蓄ゼロや退職金ゼロの人は何らかの対策が必要になるでしょう。
では、60歳で貯蓄ゼロ・退職金ゼロの人は、生存戦略として何をすべきなのでしょうか?
貯金ゼロ・退職金ゼロの生存戦略①:まずは働く
貯蓄も退職金もゼロの人は、定期収入を作るために働くことが重要です。定年退職の後も無理のない範囲内で働いて収入を得て、生活費を工面していきましょう。また、60歳で退職する場合、その後も再雇用で厚生年金に加入して働けば、老齢年金の受給額を増額できます。厚生年金には70歳まで加入可能。仮に年間給与300万円で60歳から70歳までの10年働いた場合、年金額は月額1万3100円増える計算です(2024年度)。
貯金ゼロ・退職金ゼロの生存戦略②:収入の一部をNISAで運用する
定年退職後も働いて得られた収入の一部を貯蓄に回すとよいでしょう。少額ずつ銀行預金で貯めていくのもよいですが、さらに一部をNISAのつみたて投資枠で運用するのもおすすめです。NISAは1,000円程度から始めることができ、金融機関によっては100円から投資できるところもあります。
運用には元本割れなどのリスクはつきものですが、つみたて投資枠なら金融庁が認める低コストの投資信託で運用ができ、毎月決まった金額を積立投資していくので、リスクを抑えることができます。可能な範囲でよいので、NISAを利用し、運用を長く続けることをおすすめします。
貯金ゼロ・退職金ゼロの生存戦略③:生活福祉資金貸付制度を利用する
働いて収入を得たいところですが、事情により十分に働けないときは、国の救済制度の1つである「生活福祉資金貸付制度」を利用する方法もあります。
生活福祉資金貸付制度とは、低所得者世帯や障害者世帯、65歳以上の高齢者世帯に対し、生活の安定や経済的自立を図るため、生活福祉資金などを借りられる制度で、社会福祉協議会が貸付を行っています。たとえば「生活支援費」では、生活を再建するまでの間に必要な生活費として、原則3か月間(最大12か月間まで延長可)、月20万円(二人以上世帯)・月15万円(単身世帯)の貸付が受けられます。 貸付なので返済が必要ですが、どうしても生活が成り立たないときは、一時的な救済として社会福祉協議会に相談してみましょう。
貯金ゼロ・退職金ゼロの生存戦略④:持ち家があれば不動産担保型生活資金を利用する
生活福祉資金貸付制度の中には、不動産担保型生活資金の貸付があります。これは、持ち家(一戸建て)がある65歳以上の高齢者世帯が利用できるもので、自宅に住み続けながら、自宅を担保として生活資金を借りることができる制度です。貸付限度額は土地の評価額の70%、月30万円以内となっています。利用を検討するときは、社会福祉協議会に相談してみましょう。
貯金ゼロ・退職金ゼロの生存戦略⑤:生活保護を利用する
受給できる年金額も少なく、働くこともできない状況のときは、生活保護制度を利用するのも1つの方法です。生活保護制度は、生活に困窮する人に対し、健康で文化的な最低限度の生活を保障する制度で、収入が最低生活費の金額に満たない場合、収入と最低生活費の差額を保護費として受け取ることができます。
生活保護を受けるには、まず自分が働き、不動産などの資産を処分して収入を得て、それでも生活費を工面できないときに利用できる制度です。万が一の時は、最後のセイフティーネットとして検討してみましょう。
生活を維持するために行動しよう
60歳で貯蓄ゼロ、なおかつ退職金もゼロのときは、定年退職後も働いて、収入を得るのが一番の対策です。また、収入を得るだけでなく支出も見直し、無駄な出費をなくすことも重要な対策の1つです。ただ、事情により生活費を工面することができないときは、国の救済制度を利用することを検討してみましょう。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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