24/12/15
退職時に損しないために「絶対」確認すべき4つの手続き
仕事を退職するときには、さまざまな手続きがあります。退職はスムーズに進めたいものですが、手続きについてはわかりにくいことも多いのではないでしょうか。そのうえ、手続きの仕方によっては、損してしまうこともあります。そこで今回は、退職時に損しないためにあらかじめ確認しておいたほうがよい手続きを4つお伝えします。
退職時の手続き①:健康保険は3つの選択肢から
勤務先で社会保険に加入している場合、退職するとそれまで加入していた健康保険もやめることになり、保険証は返却します(マイナ保険証は返却不要)。
その後新たに再雇用・再就職する場合には、新たな勤め先の健康保険に加入しますが、そうではない場合は、どの保険に加入するかの選択肢が大きく3つあります。
損をしないポイントは、加入したいと思う保険の手続き期限をチェックしておくことです。
●①任意継続
任意継続は、それまで加入していた健康保険に継続して加入する方法です。手続きは退職後20日以内です。詳しくは保険証に記載されている保険者に確認するのが確実。保険証の返却前にしておきましょう。加入できる期間は最長2年です。
被扶養者がいる場合、それまでと同様に、保険料は本人の分だけになることがメリットです。
注意点は、保険料がそれまでの約2倍になること。在職中の保険料は労使折半なので、本人は保険料の半額を負担すればよかったのですが、退職後は全額自己負担です。
●②国民健康保険
国民健康保険は、会社勤めではない人が加入する健康保険です。手続きは退職後14日以内に、お住まいの自治体の窓口です。
保険料は前年の収入が計算のもとになるので、退職して収入がグッと下がる人は気を付けてください。退職1年目の保険料は、たとえ収入がなかったとしても高くなってしまいがちです。
保険料は、役所に問い合わせれば試算も可能。任意継続と比較して選ぶことができます。「1年目は任意継続、2年目は国民健康保険」とすることもできるようになっています。
もし、保険料の支払いが難しい場合には、軽減・減免ができる場合があるので、早めに役所の窓口に相談しましょう。
●③家族の被扶養者になる
退職後の収入が、130万円未満(60歳以上や障害年金受給者は180万円未満)なら、家族の被扶養者になることができます。たとえば、妻(夫)が退職して無収入になるので、夫(妻)の被扶養者として夫(妻)の勤務先の健康保険に加入する、といった形です。手続きは原則、退職日から5日以内と短く設定されています。手続きは夫(妻)がしますが、期限などは早めに確認しておくと安心です。
主なメリットは、保険料の負担がないこと。任意継続や国民健康保険よりも出費を抑えられます。デメリットは、妻(夫)が病気やケガで療養が必要になっても、傷病手当金が受け取れないことなどです。
退職時の手続き②:厚生年金は退職後の働き方によって3通りの年金に
勤務先の厚生年金に加入している人が退職した場合、退職後の働き方によって3通りにわかれます。損をしないポイントは、まずは加入することになる年金を把握すること。そして、退職日をいつにするか決めることです。
●第1号被保険者
退職後は無職、もしくは社会保険に加入しない働き方であれば、国民年金に加入することになります。なお、配偶者の扶養になる場合には、第3号被保険者(後述します)になります。
第1号被保険者の保険料は、月払いで1万6980円(2024年度)。収入が少ない、無い、といった場合には免除や猶予の申請ができます。
早めに自治体窓口などに相談し、未納の期間を作らないようにしましょう。将来に受け取る年金額が減ってしまうことにつながります。
●第2号被保険者
退職後、就職した勤務先で厚生年金に加入する会社員や公務員は、第2号被保険者です。また、パートやアルバイトであっても、
・週の所定労働時間が20時間以上
・所定内賃金が月額8.8万円以上
・2か月を超える雇用の見込みがある
・学生ではない
・従業員数51人以上の企業で働いている
の条件を満たしていると、社会保険に加入するため、厚生年金にも加入することになります。
保険料の負担は必要ですが、国民年金に加えて厚生年金も受け取れるので、将来受け取る年金額のアップにつながります。
●第3号被保険者
退職後、配偶者の被扶養者になるのであれば、第3号被保険者になります。この場合、保険料の負担はありません。
手続きは配偶者が勤務先で行います。健康保険とあわせて手続きすることが一般的です。
●退職日に注意
年金を受け取る場合には、一般的に、厚生年金の加入月数が多いほうが有利です。
厚生年金の加入月にカウントできるのは、月末最終日に厚生年金に加入していた月。つまり月末に退職すれば、その月は厚生年金に加入しているので、加入月数にカウントされます。
ただ、保険に加入していれば保険料の負担も必要です。
保険料は、一般的に翌月の給料から差し引きます。たとえば、12月の給料からは、11月分の保険料が差し引かれています。
もし、12月末で退職すると、12月分の保険料を差し引くはずの1月給与はないので、12月給与から11月分と12月分の2カ月分の保険料が差し引かれます。
つまり、手取りが減ってしまうということに注意しましょう。
退職時の手続き③:税金は、所得税・住民税ごとに考える
所得税は、毎月の給与から概算の金額が差し引かれています。
差し引かれた税金の金額は、退職する時に受取る源泉徴収票に記されています。
源泉徴収票は、転職先に提出して、年末調整をしてもらいます。しかし、年内に転職しないなどの場合、年末調整が行われていない状態なので、正しい税額が収められていません。多くの場合、所得税は納めすぎになっています。
これを取り戻すためには、翌年に確定申告すればOK。確定申告で払い過ぎた所得税があれば、戻ってきます。その際に源泉徴収票が必要なので、なくさずにとっておきましょう。
住民税も、給与から差し引かれます。
退職が1~5月の場合には、退職月から5月までの納税額の合計を、最後の給与から一括で徴収されます。その後は、6月頃から送られてくる納付書で納税します。
退職が6~12月の場合には、退職後に送られてくる納付書に従って分割払いします。ただし、退職時に給与などから一括で納付することも可能です。一括納付ができるかどうかは、勤務先に確認します。希望する場合には早めに確認しておきましょう。
退職時の手続き④:失業給付(雇用保険の基本手当)
失業給付は、仕事を退職した人が安心して新しい仕事を探して就職できるように支給される給付です。
失業給付を受け取るには、「働く意思と能力があるが、失業状態である」ことが条件です。ですから、ハローワークで求職活動をして働く意思を示し、離職票で失業状態を証明します。
失業保険の支給には、7日間の待期期間があります。
会社から解雇されたり、会社が倒産したりと、失業がやむを得ない事情(会社都合退職)であれば、待期期間の後に支給されます。
自己都合退職の場合には、待期期間後さらに2カ月(2025年4月からは原則1カ月)の給付制限期間を経て支給されます。
会社都合退職の場合には、離職票にその旨が間違いなく記載されているか、しっかり確認しておきましょう。受け取れるはずの期間に失業保険がもらえないのは、その後の生活設計にも影響してしまいます。
損しない退職には早めの準備を
退職や再就職は、キャリアプランに影響する大きな出来事です。
仕事の内容、給与、評価基準など、考えることは多岐にわたるでしょう。
とはいえ、社会保険の仕組みなどは、退職時に知っているだけで損をしない選択ができます。
後悔しない退職をして、さらなるステップアップにつなげていただきたいと思います。
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タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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