24/10/18
ソフトバンク、ソニー、三井住友…株式分割を行う企業増加中。分割後は株価上昇するって本当?
近年、株式分割を行う企業が増えつつあります。2023年に株式分割を行った企業数は約150社なのに対し、2024年は9月末時点で190社と年々増加傾向です。今回は株式分割の概要や近年実施する企業が増えている理由を解説したうえで、株式分割後の株価推移について例をあげて紹介します。株式投資に興味のある方はぜひチェックしてみてください。
株式分割はとは?投資家にどんなメリットがある?
株式分割とは、既に発行されている株式を分割することです。株式分割によって発行済み株式数は増えますが、基本的に株式全体の価値は変わりません。株式分割の比率は、「1:2」「1:5」「1:10」というように表され、企業が自由に決めることができます。
たとえば株価1000円の株式を「1:2」の割合で分割する場合、分割後の株価は500円になります。通常、国内株式の売買単位は100株なので、分割前は10万円払わないと買えなかった銘柄が5万円で買えるようになるわけです。このように、株式分割の割合に応じて投資単位あたりの株価が下がるため、投資家はより少ない資金で投資できるようになります。
また、すでに保有している銘柄が株式分割を行う場合は、保有している株式数が増えるため、「株式分割で200株に増えた株式のうち、100株だけを売却する」というように売買の自由度が高まる可能性もあります。
●株式分割を行う企業が増えているのはなぜ?
近年株式分割を行う企業が増えている要因の一つに、東証が2023年3月に発表した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」が挙げられます。これは個人投資家が投資しやすい環境を整備するための施策です。この施策によると、株価は投資単位あたり「50万円未満」が望ましいとされ、株価がそれ以上の企業は投資単位の引下げに関する考え方および方針等を開示するよう義務づけられています。
また、2024年1月に制度が拡充した新NISAの影響で、増加しつつある個人投資家を取り込む狙いも、株式分割を行う企業側にあると考えられます。
2024年10月には以下のような有名企業でも株式分割が行われています。
<2024年10月の主な株式分割銘柄>
各社ウェブサイトを参考に筆者作成
株式分割によって株価はどう変わる?
株式分割は短期的には株価を上昇させる要因となります。投資単位あたりの株価が下がり、多くの投資家が購入しやすくなることで需要が増えるからです。しかし、株式分割したからといって企業の実質的な価値が高まるわけではないため、その後の株価の推移は企業の業績次第といえるでしょう。
直近2年以内に株式分割した企業の株価がどう変化したか、いくつかチェックしてみましょう。
●株式分割後に株価が上昇した企業
ゲーム業界大手の「任天堂(7974)」は2022年10月1日に「1:10」の割合で株式分割を行っています。分割直後の株価は5854円でしたが、その後順調に株価を伸ばし、2024年10月11日時点では7878円と約35%上昇しています。
また、ユニクロやGUでおなじみのアパレルメーカー「ファーストリテイリング(9983)」は2023年3月1日に「1:3」の割合で株式分割しています。分割直後の株価は2万6900円、2024年10月11日時点で5万4490円と2倍以上の上昇となっています。
●株式分割後に株価が低迷している企業
株式分割後に株価が伸び悩む企業もあります。通称NTTで知られている「日本電信電話(9432)」は、2023年7月1日に「1:25」の割合で株式分割を行いました。分割直後の株価は170.5円で、分割後半年ほどは上昇傾向でしたが、2024年4月以降は下落基調に転じ、さらに5月10日に発表された2024年度の業績予想で減益が見込まれることが明らかになった影響で株価が急落し、2024年10月11日時点の株価も148円と低迷しています。
東京ディズニーリゾートを運営する「オリエンタルランド(4661)」も株式分割後に株価が低迷している企業のひとつです。2023年4月1日に「1:5」の割合で株式分割を行い、直後の株価は4528円でした。分割後は上昇傾向が見られたものの、2024年3月以降は下落傾向にあり2024年10月11日時点の株価は3609円となっています。
このように株式分割の直後は一時的に値上がりすることが多く見られますが、その後も順調に株価が上昇するとは限りません。長期保有や株主優待を目的として購入するなら、株式分割による一時的な値上がりだけにとらわれず、業績や今後の成長性も見極めたうえで購入すべきかを検討しましょう。
株式分割は「好材料」だが、長期的な視点で吟味しよう
株式分割で投資単位あたりの株価が下がれば、これまで気になっていたけど株価が高くて手が出せなかった銘柄が買いやすくなるかもしれません。投資のリスクを抑えるためには、長期的な視点で吟味することが基本ですが、今後の株式分割の情報にも注目して、投資先の企業を選んでみてはいかがでしょうか。
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鈴木靖子 ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級DCプランナー(企業年金総合プランナー)
銀行の財務企画や金融機関向けコンサルティングサービスに10年以上従事。企業のお金に関する業務に携わるなか、その経験を個人の生活にも活かしたいという思いからFP資格を取得。現在は金融商品を売らない独立系FPとして執筆や相談業務を中心に活動中。
HP:https://yacco-labo.com
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