21/02/03
遺族年金がもらえないケースは? 複雑な受給条件がひと目でわかるチャートで解説
遺族年金とは、大黒柱の方に万が一のことがあった際に、残された遺族に支給される公的年金のことです。残された家族にとっては、生活費を確保するための大切な保障となります。
ほとんどの人が受けられる保障ですが、受けられない方もいるので受給条件は必ず確認しておきたいものです。なかでも、遺族基礎年金と遺族厚生年金は少し受給条件が違うので注意が必要です。
そこで今回、自分は遺族年金がもらえるのか、もらえないのかをわかりやすいチャート形式にまとめました。ご自身が受給対象となるのかご不安な方はこちらのチャートにてご確認頂ければと思います。
もらえるのはどの遺族年金?まずはチャートで確認しよう
遺族年金がもらえる場合でも、要件によってどの遺族年金をもらえるのかが異なってきます。どの遺族年金にも細かい要件があり、そのすべてを理解するのは大変です。そこで、最初にご自分がどの遺族年金に該当するのかをおおまかに確認できるチャートを用意しました。まずはこのチャートでどの遺族年金がもらえるのかを確認した上で、後の解説をお読みいただければと思います。
●もらえる遺族年金フローチャート
筆者作成
以下では、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2つについて、さらに詳しく解説を進めます。また、チャートの中には遺族年金がもらえない場合の救済策として支給される「寡婦年金」と「死亡一時金」も含まれていますので、最後に少しだけ解説します。
遺族基礎年金がもらえるのはどんな人?
遺族基礎年金とは、国民年金に加入していた故人が、受給要件を満たしている場合に、残された家族に支給される年金です。受給額は78万1700円(2020年度)+子どもの加算額(受給要件を満たす第1子・第2子は各22万4900円、第3子以降は各7万5000円)です。
どんな場合に遺族基礎年金を受け取れるかについては、上のチャートにも書いてありますが、さらに細かい要件もあります。亡くなった方と受け取れる方のそれぞれについて要件が定められているので、みていきましょう。
●(1)亡くなった方についての要件
遺族基礎年金を受け取るためには、亡くなった方が以下のいずれかの要件を満たしている必要があります。
① 国民年金に加入中だった
② 国民年金に加入していた60歳以上65歳未満の人で日本国内に住所がある
③ 老齢基礎年金を受給中だった
④ 老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていた
①か②に該当する場合は、保険料の納付状況にも注意が必要で、以下の2つの条件のいずれかを満たしていなければなりません。
・亡くなった日より2ヵ月前までの加入期間のうち、保険料納付済み期間(保険料免除期間を含む)が3分の2以上あること
・2026年(令和8年)3月31日までは、亡くなったときに65歳未満の人については亡くなった日の2ヵ月前までの1年間に保険料の滞納がないこと
●(2)受け取れる方についての要件
遺族基礎年金を受け取れる家族は、亡くなった方に生計を維持されていた「子どもがいる配偶者」または「子ども」です。
「生計を維持されていた」という要件を満たすためには、原則として亡くなった方と同居していて、遺族の前年の収入が850万円未満または所得が655万5000円未満であることが必要です。ただし、別居していても仕送りを受けている、健康保険の扶養親族であった等の場合はこの要件を満たします。
ここでいう「子ども」は以下の2つの条件のいずれかを満たす子どもで、結婚していない場合に限られます。
・18歳に到達した年度の末日(3月31日)までの子ども
・20歳未満で障害年金の障害等級が1級か2級の子ども
この条件を満たす「子ども」がいない配偶者は、遺族基礎年金を受け取ることはできません。
ただし、要件を満たせば寡婦年金か死亡一時金のいずれかを受け取ることができる場合があります。
遺族厚生年金がもらえるのはどんな人?
遺族厚生年金とは、亡くなった方が会社員や公務員で厚生年金に加入していて、受給要件を満たしている場合に、残された家族に支給されるものです。
遺族厚生年金の金額は、亡くなった方の厚生年金の加入期間や給与・賞与といった報酬の金額をもとに計算され、遺族基礎年金に上乗せして支給されます。
こちらも、亡くなった方と受け取れる方のそれぞれについて要件が定められています。
●(1)亡くなった方についての要件
遺族厚生年金を受け取るためには、亡くなった方が以下の①から⑤のうちいずれかの要件を満たしている必要があります。
【短期要件】
①厚生年金に加入中だった
②厚生年金に加入中に初診を受けた傷病により初診日から5年以内に亡くなった
③障害等級1級または2級の障害厚生年金の受給権者だった
【長期要件】
④老齢厚生年金を受給権者だった
⑤老齢厚生年金の受給資格期間を満たしていた
①か②に該当する場合は、保険料の納付状況にも注意が必要で、以下の2つの条件のいずれかを満たしていなければなりません。
・亡くなった日より2ヵ月前までの加入期間のうち、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あること
・2026年3月31日までは、亡くなったときに65歳未満の人については亡くなった日の2ヵ月前までの1年間に保険料の滞納がないこと
●(2)受け取れる方についての要件
遺族厚生年金を受け取れる家族は、亡くなった方に生計を維持されていた方のうち、以下の要件を満たす方です。番号が若いほど優先順位が高く、先順位の方がいれば高順位の方は遺族厚生年金をもらうことはできないルールになっています。
① 配偶者または子ども
遺族基礎年金と異なり、子どもがいない配偶者も遺族厚生年金を受け取ることができます。
ただし、配偶者のうち夫については55歳以上である場合に限られます。
また、受給する配偶者が30歳未満の妻である場合は、受給期間が5年間に限られます。
「子ども」の要件は遺族基礎年金の場合と同じです。
子どもがいる配偶者と「子ども」は遺族基礎年金も合わせて受給することができます。
② 55歳以上の父母
ただし、支給されるのは60歳になってからです。
③ 孫
「子ども」と同じ要件を満たす必要があります。
④ 55歳以上の祖父母
ただし、支給されるのは60歳になってからです。
寡婦年金や死亡一時金がもらえるケースも
寡婦年金(かふねんきん)と死亡一時金は、遺族年金がもらえない場合に、もらえる可能性があるお金です。寡婦年金とは、国民年金の第1号被保険者または任意加入被保険者として保険料を納めた期間(免除期間を含む)が10年以上ある夫が亡くなった時に、10年以上継続して婚姻関係にあり、生計を維持されていた妻に対して60歳から65歳になるまでの間支給される年金のことです。
死亡一時金とは、国民年金法に定める給付の一つで、国民年金の第 1号被保険者または任意加入被保険者として国民年金保険料を納めた期間が 3年以上の人が、老齢基礎年金、障害基礎年金のいずれも受けないまま死亡したときに、その人と生計を同じくしていた遺族(配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹)に支給されるものです。
まとめ
遺族年金は自動的に支給されるものではなく、遺族が請求する必要があります。つまり遺族年金の受給する権利がせっかくあっても請求しなければ受け取ることはできないのです。
したがって、自分の場合はどの遺族年金をもらえるのかについて、この機会に確認しておきましょう。もらえる金額のシミュレーションや、その他分からないことがあれば、放置せずに年金事務所や街角の年金センターに相談して、適切に遺族年金を受給しましょう。
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KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。
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