20/04/13
住宅ローンはフラット35より銀行ローンを選ぶべき? 銀行ローンのメリット・デメリットは
住宅ローンを組むとき、住宅金融支援機構が提供する「フラット35」にするべきか、それとも銀行が提供する住宅ローン(銀行ローン)にするべきか、迷うことがあるかもしれません。フラット35と銀行ローンは、どんなところが違うのでしょうか。そして、銀行ローンを選ぶべき人はどんな人なのでしょうか。フラット35と銀行ローンを4つのポイントで比較しながら、確認してみたいと思います。
住宅ローン4つの比較ポイント:①金利
住宅ローンで一番はじめに目がいくのは、やはり金利でしょう。
フラット35の最大の特徴は、全期間固定金利の住宅ローンだということ。完済するまでの返済額が一定なので、返済計画が立てやすくなります。ただ、借り入れをした時点より市場金利が下がっても、設定された金利は変わらないため、低金利のお得感はあまりかもしれません。
一方、銀行ローンの金利は、フラット35と同じ全期間固定金利型に加え、変動金利型、固定金利選択型を選ぶことができます。
変動金利型で設定された金利は半年ごとに見直され、返済額の見直しが5年ごとに行われます。とはいえ、返済額の増加は1.25倍までというルールがあるので、急激に返済額が増えることはありません。
固定金利選択型には、2年固定、3年固定、5年固定、7年固定、10年固定、15年固定、20年固定などがありますが、選択できる固定金利期間は金融機関により異なります。また、固定金利期間が終了すると、優先的に変動金利へ変更になるものと、固定金利と変動金利の選択が自由になるものがありますので、金融機関で確認しましょう。
フラット35の2020年3月現在の金利は、1.240%~1.870%となっています。これと比較して銀行ローンの場合は、金利の種類を問わず1%を切るものが多くなっています。傾向として、銀行ローンのほうが金利は低いのです。ただ、銀行ローンは変動金利の場合、5年ごとに返済額が見直されることから、返済計画が立てにくいかもしれません。
住宅ローン4つの比較ポイント:②審査基準
住宅ローンを借りるためには、所定の審査を受けなければなりません。この審査基準にも違いがあります。
フラット35の審査基準には、物件に対する要件と収入に対する要件があります。
【物件に対する要件】
・住宅金融支援機構が定めた技術基準に適合する物件であること
・自分や親族が住むための住宅、もしくはセカンドハウスであること
・住宅の床面積が一戸建ては70㎡以上、マンションは30㎡であること
(店舗付き住宅の場合は、居住部分が非居住部分より広いこと)
【収入に対する要件】
・年収に占める年間合計返済額の割合(返済負担率)が、
年収400万円未満の場合:30%以下
年収400万円超の場合 :35%以下 であること
これに対し、銀行ローンでは、最低年収は200~400万円で、勤続年数(自営業の場合は営業年数)が1年~3年以上という要件があります。
また、銀行ローンを組む際は、団体信用生命保険(団信・後述)に加入することが求められるため、健康状態に問題がないようにしておきたいものです。
さらに、重視されるのがローンを延滞したことがあるかという点。クレジットカード払いで延滞があったり、ローンを組んで支払いが滞ったりして指定信用情報機関にブラックリストとして載っていると、住宅ローンを組めない場合があります。
フラット35は返済負担率の基準が定められていますが、勤務形態や勤続年数などは問われないため、正社員でなくてもローンを組みやすい傾向にあります。しかし、銀行ローンの場合は、年収や勤続年数の基準が設けられ、収入の安定性も問われるため、正社員でないと借り入れがしにくいかもしれません。
住宅ローン4つの比較ポイント:③諸費用
一般的に住宅ローンの諸費用には、融資手数料・保証料・団体信用生命保険料・火災保険料・印紙税・登録免許税・抵当権設定費用などがあります。どれくらいの費用がかかるのかは金融機関により異なりますので、確認しておきましょう。
フラット35の場合は、保証人が不要であるため、保証料がかかりません。ただ、フラット35に申し込むと、住宅金融支援機構が定めた技術基準に適合するかどうかの調査が行われます。その際発行される適合証明書の費用が必要となります。
フラット35は保証料が不要のため、一見、諸費用がお得に感じられるかもしれません。しかし、ここには注意が必要です。なぜなら、フラット35を取り扱う金融機関に支払う融資手数料が、融資額に占める割合で設定されている場合があるからです。
融資手数料が定額のところは通常3万円~5万円程度ですが、「融資額×○%」と設定されているところは融資手数料が高額になります。銀行ローンでも融資手数料が定額のところと融資額に占める割合で設定されているところがあるので、住宅ローンを組む候補となる金融機関の諸費用がどう設定されているのかを必ずチェックするようにしましょう。
住宅ローン4つの比較ポイント:④団体信用生命保険
団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローンの契約者が死亡、あるいは高度障害状態になったときに、ローンの残債が返済不要となる生命保険のこと。住宅ローンを組む際は、加入したほうがよいものです。
フラット35は団信付きの住宅ローンなので、別途保険料を支払う必要がありません。
フラット35の団信には、新機構団信と新3大疾病付機構団信の2種類があります。
新機構団信は死亡または高度障害状態となった場合に保険金が支払われる団信です。一方の新3大疾病付機構団信は死亡、高度障害状態のほか、3大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)が原因となって一定の要件に該当した場合、あるいは、介護保険制度で要介護2から要介護5までのいずれかの状態になった場合に、残債が返済不要になります。
その点銀行ローンは、団信への加入が必須条件になっています。金利には、団信の保険料が組み込まれていることが多くあります。銀行ローンの団信にも三大疾病特約付、八大疾病特約付、がん保障特約付き、ワイド団信(引受条件緩和型)などがあります。なお、ワイド団信とは、持病などで通常の団信に加入できなかった人でも入りやすい団信です。
フラット35も銀行ローンも団信が金利に含まれています。そして、三大疾病などの特約を付けると、その分が金利に上乗せされます。なので、フラット35も銀行ローンも団信について大差はないでしょう。もし医療保障がほしいのであれば特約付き団信を、金利を重視する人は特約なしの団信を選ぶとよいでしょう。ただ、銀行ローンは団信に強制加入となりますが、フラット35は団信加入が強制ではありません。もし加入しない場合でも、金利は新機構団信の-0.2%になります。他に加入する生命保険の保障が充実しているのであれば、加入しないという選択肢もありますが、そうでない場合は加入したほうが安全です。
銀行ローンを選ぶべき人はどんな人?
以上を踏まえると、フラット35よりも銀行ローンを選ぶべき人は、次のような人が考えられます。
●できるだけ低金利で借りたい人
銀行ローンはフラット35より金利が低いので、少なくとも返済額が維持される5年間は支払いが少なくなります。
●ローン返済中でも貯蓄がしやすい人
ローン返済中の貯蓄で繰上返済を行えば、低金利のうちに返済を終えられる可能性があります。
●金利の動向を見ている人
金利が下がる傾向にあると、5年後返済額の見直しがあっても、支払いが増えることはありません。
無理のない返済プランを立てよう
住宅ローンを組むとき、留意しておきたいのは無理のない返済です。生活費のほか、教育費なども考慮しながら、返済可能な範囲内で借り入れをするようにしましょう。また、できれば現役で働いている間に完済できるよう返済期間を設定することも重要なポイントです。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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