20/01/26
【2020年税制改正】私たちの税金はどう変わる? 収入に関する変更点まとめ
昨今は、自分の状況や希望に沿って多様な働き方が選べるようになりました。会社員・公務員・自営業などという限られた選択肢だけではなく、フリーランス(個人事業主)・起業・副業など、いろいろな働き方があります。
2020年の税制改正では、働き方改革を後押しするなどの観点から、所得税の見直しが行われました。税金の計算のときに差し引く「控除」のしくみが変わるのです。
これにより、会社勤めで年収850万円を超える独身者や子供のいない世帯、年収が2500万円を超える高額所得者などは、所得税の負担が増えることになります。
そこで、2020年税制改正で、年末調整や確定申告に影響のある控除の変更点を6つ、挙げてみました。
【2020年税制改正】控除の変更点1:給与所得控除の見直し
●改正後の給与所得控除額
①控除額が一律10万円引き下げられました。
②収入金額が850万円を超えると、上限額が195万円になります。
【2020年税制改正】控除の変更点2:基礎控除の見直し
●改正後の基礎控除額
①合計所得金額が2400万円以下の場合、控除額が10万円引き上げられました。
②合計所得金額が2400万円を超えると段階的に控除額が減っていき、2,500万円を超えるとゼロになります。
例として、収入金額が850万円・870万円・900万円の場合の給与所得控除・基礎控除額をみていきましょう。
●改正前後の控除額の違い
収入金額850万円以下については、給与所得控除額は10万円引き下げですが、基礎控除の見直しで10万円引き上げられていますので、プラスマイナスされて新たな税負担はないものと考えられます。つまり、850万円以下ですと影響はありません。
しかし、表にあるように収入金額が850万円を超えると給与所得控除が10万円以上減ってしまいますので、改正後の方が控除額が少なくなってしまいます。収入金額870万円ならば2万円、900万円ならば5万円ほどのマイナスになる計算です。つまりその分、税金の負担が増えることになるでしょう。
【2020年税制改正】控除の変更点3:所得金額調整控除の創設
子育てや介護をする世帯の負担を軽減するため、新たに所得金額調整控除が創設されました。
その年の給与等の収入金額が850万円を超えていて、
ア.本人が特別障害者に該当
イ.23歳未満の扶養親族がいる
ウ.特別障害者である同一生計の配偶者または、扶養親族がいる
のいずれかに該当する場合に「(給与等の収入金額-850万円)×10%」の控除が適用されます。
(例)収入金額900万円の場合の控除額:
(900万円-850万円)×10%=5万円
なお、収入金額の上限は1000万円となっています。
年末調整において適用を受けるためには、「所得金額調整控除申告書」を提出する必要があります。
【2020年税制改正】控除の変更点4:合計所得金額要件の改正
各種控除を受けるための所得の要件が、以下の4つの区分について、それぞれ10万円引き上げられました。
●扶養親族等の合計所得金額要件
それぞれ10万円引き上げられてはいますが、これらの変更は給与所得控除が10万円引き下げられたことにあわせて行われたものにすぎません。ですから、例えば、パートで働く妻の給与収入が昨年と同じであれば、扶養親族になれる範囲に変更はありません。
【2020年税制改正】控除の変更点5:公的年金等控除の見直し
●公的年金等の控除額
①控除額が一律10万円引き下げられました。
②公的年金等にかかる雑所得以外の合計所得金額が1000万円を超えると、段階的に控除額が引き下げられます。
改正前の公的年金等の控除額は、公的年金等の収入金額のみで計算されるのに対し、改正後はそれ以外の収入と合わせて計算されます。
収入が公的年金のみ、またはそれ以外の収入金額が1000万円以下であれば控除額の引き下げは10万円です。この場合、基礎控除の引き上げ額は10万円ですから、プラスマイナスで税負担はないものと考えられます。
しかし、公的年金等の収入金額やそれ以外の収入金額と合わせて1,000万円を超えている場合、合計所得金額により控除額の引き下げ額は20〜30万円と大きくなるため、税負担が増すことになります。
【2020年税制改正】控除の変更点6:青色申告特別控除の見直し
個人事業主などの確定申告を青色申告で行うことで、税制優遇が受けられるしくみに青色申告特別控除があります。これまで、青色申告特別控除の控除額は最大65万円でしたが、これが55万円に引き下げられます。
ただし、e-Tax等による電子申告をした場合は控除額が65万円になります。10万円控除額が増えるのですから、電子申告を利用しない手はないですよね。今まで利用したことがない方は、今年はe-Taxを利用しみてはいかがでしょうか。
まとめ
2020年税制改正は一見複雑ではありますが、一般的な所得の方に対する配慮がなされ、一定額以上の高額所得者に対しては増税となっています。
基礎控除額が引き上げられたのは、フリーランスで働く方にとってはメリットですよね。
年末調整関係書類の様式が変更になったり、確定申告時に用紙に記入する控除額などの変更があったりするので、長年慣れ親しんだ様式や数字とは異なり、「おや?」と感じる方もいるかもしれません。
2020年税制改正で控除の恩恵が減ってしまった方は、これを機にiDeCo(イデコ・個人型確定拠出型年金)を利用するなどして、節税計画を立ててみるのもいいかもしれません。
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小河由紀子 「発達障害がある子」を育てる親御さんを元気にするFP
神奈川県出身。結婚・出産後に産婦人科で医療事務に従事。一念発起してCFP®と日商簿記2級の資格を取得。お金の勉強と数字の楽しさに目覚める。その後保険代理店勤務などを経て、2018年に独立系FPのためのプラットフォーム会社に所属。翌2019年に「FPオフィスOgawa」を開業。顧客がお金に振り回されず、自らコントロールする力を身に着けてもらえるよう、分かりやすい言葉で現実的なアドバイスを行っている。FP Cafe登録パートナー
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