25/05/12
介護休業中の社会保険料は免除されないのはなぜ?【理不尽な制度の穴】

家族に介護が必要になった場合、介護休業を取得できます。同じように、育児のために仕事を休める育児休業もあります。育児休業には休業中の社会保険料が免除される経済的な支援があります。しかし、介護休業は休業中でも社会保険料の納付が必要です。同じような制度なのに、どうして介護休業は社会保険料を免除されないのでしょうか?
今回は、介護休業制度の概要と、社会保険料が免除できない理由を解説します。
介護のために仕事を休める制度「介護休業制度」
介護休業制度とは、労働者が要介護状態の家族を介護するための休業です。介護休業制度は、パートやアルバイトなどで雇用期間が決まっている人でも、「介護休業の取得予定日から起算して93日を経過する日から6ヵ月を経過するまでに契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと」という要件を満たしていれば利用できます。
○対象となる家族
介護の対象となる家族として認められるのは、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。
〇利用回数と利用期間
介護休業を利用できる回数は、対象家族1人につき3回までで、利用できる期間は対象家族1人につき通算93日までとなっています。図のように、3回に分けて取得することもできますし、一度に93日分取得することもできます。
<介護休業の取得例>

厚生労働省リーフレット「知っておこう。介護休業制度」より
介護休業を利用したいときは、休業開始予定日の2週間までに、会社へ書面などで申し出ましょう。
介護休業中の社会保険料は免除されない
育児休業では社会保険に優遇制度があり、休業中は社会保険料の納付が免除されます。しかも、免除された社会保険料は納めたものとみなされるので、後から納める必要がありません。将来の年金も減額されません。
しかし、介護休業では仕事を休んでいる間も社会保険料の納付は必須です。そもそも介護休業には社会保険料が免除される仕組みがありません。そのため、休業中も健康保険料や厚生年金保険料を納める必要があるのです。では、なぜ介護休業は仕事を休み給与を受け取っていなくても社会保険料が免除されないのでしょうか?
●社会保険料の納付が免除されない理由
介護休業で社会保険料の納付が免除されない理由は、健康保険料や厚生年金保険料など社会保険料は日割りにはならず、月単位で保険料額が決まるからです。
通常、育児休業は1年間(パパ・ママ育休プラスでは1年2ヵ月)で、場合によっては延長して2年間の取得も可能です。つまり年単位で育児休業が取得できるので、月単位である社会保険料の制度とはなじみやすく、免除が制度化されています。
しかし、介護休業は93日までを3回に分けて取得可能なので、場合によっては取得期間が1ヵ月に満たなかったり、3回に分割したりするケースが考えられます。そのため、月単位での納付となる社会保険料の制度とはなじみにくく、免除を制度化しにくいのです。
介護休業を利用すると給付金がもらえる?
社会保険料の納付が免除されない介護休業制度ですが、育児休業と同じく休業中は給付金をもらうことができます。
●介護休業給付金
介護休業を取得している人が以下の2つの受給資格要件を満たしている場合、雇用保険から「介護休業給付金」をもらえます。
(1) 家族を介護するため介護休業を取得した雇用保険の被保険者
(2) 介護休業を開始した日の前2年間に被保険者期間が通算12ヵ月以上あること
上記2つの受給資格要件を満たしている場合、もらえる介護休業給付金の金額は「介護休業給付金の支給額=休業開始時の賃金日額×支給日数×67%」です。ただし、介護休業中に10日以上就業すると、介護休業給付金をもらえなくなるので注意しましょう。
また、介護休業給付金を申請できるのは、介護休業終了日の翌日から2ヵ月以内となっています。介護休業給付金を受給するための手続きは、原則として会社を通して行います。くわしくは会社に確認しましょう。
育児休業に比べると介護休業は理不尽な制度?
介護休業と育児休業はどちらも家族のために必要な制度です。それなのに、育児休業は社会保険料の納付免除が制度化されているのにもかかわらず、介護休業は休業中で給与が支給されていなくても、社会保険料を納めなければなりません。この部分だけを見ると、介護休業は理不尽な制度に映ります。
しかし、実際には理不尽なことばかりではありません。介護休業中は要件を満たしていれば、雇用保険から介護休業給付金をもらえるという利点もあります。要件を満たしている人は必ず受給手続きをして、介護休業給付金を介護休業中に支払った社会保険料や生活費を補てんするお金として活用しましょう。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。

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