25/10/03
「年金」と「生活保護」両方もらえるのは本当か

日本では、お金を稼げなくても最低限度の生活を送る権利は保障されています。
基本的に65歳になったら老齢年金を受け取れますが、それだけでは生活できない場合には、年金を受け取っている方でも生活保護を申請することができます。
では、どんな場合に年金と生活保護を両方受け取れるのでしょうか。
老齢年金の金額は人それぞれ
老齢年金は、基本的に65歳になると受け取ることができますが、その金額は一律ではありません。
国民年金に加入していた人が受け取れる「老齢基礎年金」は、毎年金額が見直され、2025年度の満額は、年間83万1700円、ひと月6万9308円です。
ただし、老齢基礎年金の満額は20~60歳の加入期間、ひと月も欠かさず保険料を納付していた方が65歳から受け取る場合の金額です。免除や未納などで納めていない月があったら、老齢基礎年金の金額はその分減ってしまいます。老齢基礎年金を受け取ったら誰でも月いくら、と決まった金額がもらえるわけではないのです。
会社員や公務員として厚生年金に加入していた人は、老齢基礎年金に加えて「老齢厚生年金」が受け取れます。
老齢厚生年金の金額は、現役時代の給料によって変わります。金額は複雑な計算によって算出されます。大まかに言うと給料が高ければ老齢厚生年金も高くなります。つまり、老齢厚生年金もまた、人によって金額が異なります。
生活保護を申請するには
老齢年金の収入だけでは生活が苦しい場合、生活保護の申請をすることができます。では、生活保護はどんな場合に受け取れるのか、条件を見ていきましょう。
●生活保護の受給の条件1:働けない、もしくは働いても足りない
働けるのであれば、働いて収入を得ます。それは、老齢年金を受け取っていても同じこと。
生活保護は最後の砦、「働くのは大変そう」といったレベル感ではなく、病気などで働けなかったり、働いても少なかったりする場合に、生活保護を検討します。
●生活保護の受給の条件2:資産がない、資産があっても足りない
生活保護は、持っているものをすべて出しても生活するには足りない、という場合に受けられるものです。預貯金の引き出しだけではなく、保険の解約、株式・自動車・貴金属などの売却もした上での判断になります。
不動産も基本的には売却ですが例外もあります。たとえば、自宅が持家で売却しても少額で、アパートなどに引っ越した方が高くつく場合などです。
自動車についても、生活必需品であると認められれば保有できる場合があります。
また、マイナスの資産も清算が必要です。生活保護で受け取ったお金は、借金返済には使えません。自己破産などで清算し、返済がなくなっても生活できないような時が生活保護の対象になります。
●生活保護の受給の条件3:家族・親戚の援助がない
収入がなく生活が苦しい場合、親、子、きょうだいなどからの援助が得られる場合もあるでしょう。家族や親戚からの援助は、生活保護よりも優先されます。
とはいえ、同居していない親族に相談したうえでないと申請できないわけではありません。
●生活保護の受給の条件4:他の制度を利用しても足りない
生活が苦しい時に利用できる制度は生活保護だけではありません。
自治体の窓口で相談をすると、利用できる給付金があれば、生活保護の前に利用するよう勧められるでしょう。生活困窮者に対する公的な融資制度である、生活福祉資金貸付制度もあります。また、就労支援や、家計指導などの相談支援も受けられます。
これらの条件を満たして、収入が「最低生活費」に満たない場合に、生活保護が適用されます。最低生活費は文字どおり、生活に最低限必要とされる生活費です。
最低生活費の金額は、地域と年齢によって異なります。
たとえば、東京23区内に住む、年金を受け取り始める65~69歳の単身者では、ひと月7万6880円とされています。
生活保護には生活費の他、住宅、医療、介護費用などもあります。
まさに、最低限の暮らしは守られる制度です。
いざという時のために、覚えておきたいですね。
老齢年金と生活保護は両方受け取れる?
年金を受け取っている方でも、上の条件を満たせば生活保護を受け取ることができます。ただし、気を付けなければならないのは、生活保護で受け取れるのは、あくまでも最低生活費から年金を引いた差額ということです。
年金を受け取っている人が生活保護を申請し、認められたからといって、生活保護が満額もらえるわけではありません。また、年金が最低生活費より多ければそもそも生活保護の対象になりません。
年金と生活保護費の両方を受け取れるようになったからといって、トクをするわけではないことも、あわせて覚えておきましょう。
生活保護を受給する条件のハードルは決して低くありません。
しかし「老齢年金だけの収入ではどうしても苦しい」という場合には、生活保護の申請をためらってはいけません。厚生労働省のウェブサイトにも「生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を必要とする可能性はどなたにもあるものですので、ためらわずにご相談ください。」とあるので、どうしても困ったときには相談しましょう。
ただ、「年金と生活保護を両方もらってトク」ではありませんので、ご注意ください。
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タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー

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