24/10/11
マイナ保険証だけでは大損!健康保険証に記載の重要情報を見逃すと医療費負担が激増
従来の健康保険証の発行が2024年12月2日から停止されるのはご存知でしょうか。マイナンバーカードを健康保険証とするマイナ保険証へ移行するからです。マイナ保険証には多くのメリットがあるものの、ある情報が記載されていないため、うっかりすると大損する人が続出するかもしれません。
今回は、健康保険証に隠された秘密をお伝えします。
日本の公的な医療保険
日本では、この国に住所を有する人は、いずれかの公的な医療保険制度に加入しなければなりません。公的な医療保険は、会社や団体などに勤務する人とその扶養家族が加入する「健康保険」、公務員や私立学校教職員とその扶養家族が対象の「共済保険組合」、自営業や健康保険を脱退した人などとその家族を対象とする「国民健康保険」の3つの種類があります。
そのうち健康保険は、保険者が主に中小企業に勤務する人とその扶養家族が加入する「全国健康保険協会(協会けんぽ)」と主に大企業に勤務する人とその扶養家族が加入する「健康保険組合」があります。健康保険組合には、1つの企業によってつくられている単一組合(被保険者700人以上)と同業または同一地域の企業が集まってつくる総合組合(被保険者3000人以上)があり、従業員の福利厚生のために法定以上の充実した給付を行っているところがあります。
マイナ保険証に記載されていない「保険者」
マイナ保険証には、過去に処方された薬や特定検診などの情報をスムーズに医療機関に共有できたり、確定申告の際に医療費控除の申請が簡単できたりするなどのメリットがあります。このようなメリットがある反面、マイナ保険証には「保険者」が記載されていません。
普段は保険者など、気に留めることはないでしょう。ところが保険者が共済組合や健康保険組合の場合には、高額療養費とは別に付加給付を行っているところがあります。
高額療養費は、1日~31日の1か月間にかかった健康保険の対象となる医療費のうち、一定の金額を超えた分を負担してくれる制度です。一般的には、収入に応じた自己負担額を支払います。たとえば、70歳未満で年収が約370万円〜約770万円の人が1か月に100万円の医療費を支払った場合、自己負担額は8万7430円です。100万円の医療費の自己負担が9万円しないのですから、これでも十分にありがたい制度でしょう。
しかし、1か月の医療費が100万円になっても、200万円になっても、収入に関係なく自己負担の金額が高額療養費制度よりも少なくて済む付加給付がある健康保険組合も存在するのです。マイナ保険証を利用することで付加給付があることに気づかなければ、大損してしまうかもしれません。
手厚い健康保険の付加給付の一例
それでは、みなさんがよくご存知の自動車メーカーの健康保険組合の例を見てみましょう。この健康保険組合では、高額療養費の自己負担は2万円です。医療費の請求が1か月に100万円かかっても、自己負担は2万円で済むのです。もし、そうと知らずに普通に高額療養費を利用していたとしたら、自己負担額が7万円近く増えてしまうところでした。
高額療養費の申請方法には、入院の前などに申請する「事前申請」と退院してから申請する「事後申請」があります。このうち事後申請では医療費が100万円かかったとすると、3割負担の30万円を医療機関に退院時に支払わないと退院することはできません。また、付加給付を超えて支払った金額は3か月後にしか受け取ることができません。
この健康保険組合では、高額医療の支払いに困ったときには、自己負担が4万4400円を超えた場合、その超えた分の80%までの医療費を無利子で貸付してくれる制度があります。
また、不妊治療の一部を補助してくれる制度もあり、1夫婦で10回まで、1回の上限は5万円となっています。
この他にも電話悩み相談、保養所やおトクに使える宿泊施設、さらにはレジャー施設、スポーツ施設の割引など保険給付以外にも健康づくりの面から従業員のサポートをしています。
マイナ保険証に移行すると損してしまうかも
自分の勤めている会社の福利厚生を隅から隅まで把握している人はほぼいないでしょう。病気やけがをしてから健康保険の手続きや内容を知る場合がほとんどではないでしょうか。民間の医療保険には入院やがん、先進医療特約など多くの種類があるので、「入っておいたほうが安心」と契約している方も多いでしょう。しかし、ちょっと待ってください。
健康保険に上乗せされた手厚い付加給付があれば、民間の保険でカバーしなくても備えとしては十分だという方も多いのです。そうすると、保険者の情報を知るだけで、入っている民間の医療保険の見直しにつながることもあるでしょう。
保険者の情報は、テレビのCMのように向こう側から教えてくれる性質のものではないからこそ、うっかりでは大損をしてしまうかもしれません。だからこそ、マイナ保険証に記載されていない保険者の情報に意識を向けて、どのような制度があるのかをぜひ確認しておきましょう。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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