24/05/02
50代からでも間に合う、公的年金を増やす3つのワザ
毎年誕生月に送付される「ねんきん定期便」には、50歳以降になると現在の収入をもとに60歳まで働く場合の老齢年金の受給見込額が記載されます。この受給見込額を確認した方の多くの反応は、「思っていたよりももらえる年金がかなり少ない」というもの。
今回は老後の年金額が減ってきている現状をふまえ、50代の方ができる対策について説明します。今からでも実践可能な、年金受給額を増やす方法を理解して、将来の老後資金をしっかりと備えましょう。
老後の年金額が少ない場合にできる3つの対策とは
ねんきん定期便を確認して、自分が将来もらえる年金額が少ない場合、以下のような方法で年金を増やせる可能性があります。
●老後の年金額を増やす対策1:会社員として働く期間を延ばす
老齢年金のうち基礎年金(国民年金)は60歳までの加入が原則となっていますが、一方で厚生年金では70歳まで加入することができます。そのため、会社員として働く期間を延ばすことで、厚生年金保険料の納付実績が増えます。50代といえば、多くの世帯では子どもが自立して、手がかからなくなるタイミングとも重なります。今まで専業主婦や扶養内で働いていた妻が厚生年金に加入して働いたり、体が元気なうちは夫婦ともに70歳まで長く働いて保険料を納め続ければ、将来の老齢厚生年金を増やすことができます。
●老後の年金額を増やす対策2:年金を繰下げ受給する
年金受給開始を遅らせる「繰下げ受給」を選択すれば、年金額が増えます。1か月遅らせるごとに0.7%増額するので、70歳まで繰下げると42%の増額です。さらに2022年(令和4年)4月から75歳までの繰下げが可能になったため、最高で84%もの増額が可能です。
ただし、繰り下げをするなら受給までの数年間を賄う生活資金が必要となります。総務省の「家計調査」によると、65歳以上の夫婦世帯の平均支出は月約26万円とされているため、仮に5年間繰り下げをして70歳から年金受給とした場合、その間の5年間の生活費は約1600万円(26万×12カ月×5年)ほど必要な計算になります。そのため、資金準備は50代のうちから計画的に準備しておくことが大切です。
また、厚生年金の加入期間がある配偶者が亡くなり、要件を満たして自分に遺族年金の受給権が発生するとその時点で繰り下げ増額はできなくなることにも注意しましょう。
●老後の年金額を増やす対策3:未納分を納める
未納になっている国民年金保険料がある場合、納期限から2年以内なら納めることができます。免除や納付猶予の申請をしていれば、納期限から10年以内の追納が可能です。未納分を払えば、老齢基礎年金を増やせます。納期限から10年を過ぎた未納分があった場合であっても、60歳から65歳の間に国民年金に任意加入することで納付可能です。
また、60歳以降に厚生年金に加入していれば、老齢基礎年金の満額に近づけることができる「経過的加算額」という仕組みがあります。例えば、大学生だった時には年金保険料を納めていなかった人や転職の際に加入しなかった期間のある人など60歳時点で国民年金の加入期間が40年に達していない方も多く存在します。そのような方が、60歳以降も厚生年金に加入すると老齢基礎年金に相当する部分が老齢厚生年金として計算され、「経過的加算額」が支給されます。つまり、60歳以降に厚生年金に加入していれば、国民年金に任意加入するのと同じ効果が得られます。
働き方や受給時期の工夫で実際にはどの程度増える?
これらの仕組みにより、ある程度は自分で年金を増やせることがわかりました。では、実際に働き方や受給時期の工夫で実際にはどの程度増えるのでしょうか。「会社員の夫と専業主婦世帯」と「夫婦とも会社員世帯」の場合のそれぞれで、働き方を変えたり繰り下げ受給をしたりすることで年金がいくら増えるかををご紹介いたします。
●「会社員の夫と専業主婦世帯」
まずは、会社員の夫と専業主婦世帯の場合でみてみましょう。
<働き方と繰下げ受給による年金額の変化(専業主婦世帯)>
筆者作成
表は試算の条件を簡単にまとめたもの、グラフはケース①からケース⑤まで資産した場合の世帯合計の年金額を示したものです。
40年間夫が働き、妻は専業主婦のケース①では、世帯合計で273万円ですが、妻が50歳から10年間パートで働きに出たケース②は、世帯合計で280万円と約7万円増えることが分かります。この夫婦が仕事を60歳~65歳も厚生年金を加入して仕事を続けた場合のケース③では、世帯合計で312万円まで増加します。
さらに、年金受給開始年齢を65歳ではなく70歳まで繰り下げした場合のケース④では世帯合計で443万円、さらに仕事を夫婦ともに70歳まで継続した場合のケース⑤では、世帯合計で465万円まで増やすことができます。
ここまで増やすことができれば、老後の夫婦2人での生活には困らない水準の年金額をもらうことができます。
●「夫婦とも会社員世帯」
次に、夫婦とも会社員世帯の場合でもみてみましょう。
<働き方と繰下げ受給による年金額の変化(会社員世帯)>
筆者作成
40年間とも夫婦が会社員として働いたケース①では、世帯合計で335万円ですが、夫婦が仕事を60歳~65歳も厚生年金を加入して仕事を続けた場合のケース②では、世帯合計で369万円まで増加します。
さらに、年金受給開始年齢を65歳ではなく70歳まで繰り下げした場合のケース③では世帯合計で524万円、仕事を夫婦ともに70歳まで継続した場合のケース④には、世帯合計で557万円まで増やすことができます。
老後も働くことで年金受給額は増やせる
60歳や65歳の定年を迎えた後も継続雇用などで働き続ける方が増えています。「人生100年時代」といわれる今、60歳や65歳はまだまだ働ける時代です。元気で働けるうちは働き、60歳以降も厚生年金に加入して保険料を納めることで、老後の年金受給額を増やすことができます。今回紹介した内容を参考にして、豊かな老後の生活を送るために、50代のうちから将来の働き方について考えてみてはいかがでしょうか。
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KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。
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