23/11/04
郵便貯金は20年放置で消滅!大損する前に手続きを 2024年1月から簡素化
郵政民営化前に預けた郵便貯金(以降、旧郵便貯金)は満期から約20年経つと払い戻せなくなることをご存じでしょうか?旧郵便貯金の満期から10年経っても払い戻しの請求がない人には、郵政管理・支援機構から注意喚起の通知が送られてきます。しかし「子供のために積み立てていた貯金の存在を忘れていた」「払い戻しに期限があることを知らなかった(通知が届かなかった)」などの理由で払い戻せなくなっている人がいるようです。
それが2024年1月からは払い戻しの要件が緩和され、これまで払い戻しの権利がなくなっていた人も払い戻せる可能性が出てきます。今回は毎年多額の旧郵便貯金の権利が消滅している実情を紹介したうえで、どのような人が新たに払い戻しの対象になるか解説します。
満期後に払い戻しをしていない昔の郵便貯金をお持ちの方、その可能性がある方は必見です!
2000億円以上の旧郵便貯金が消えている…
郵政民営化前、つまり2007年9月30日以前に預けた満期のある郵便貯金(定額郵便貯金・定期郵便貯金・積立郵便貯金など)は、満期が到来してから20年2か月経つと郵便貯金の権利がなくなることが法律で定められています。郵便貯金の権利が消滅すると国庫へ納付されるため、せっかく蓄えた貯金そのものがなくなってしまうのです。
消滅した郵便貯金の金額は、年度ごとに公表されています。
●消滅した郵便貯金の金額
独立行政法人 郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構「睡眠貯金残高・権利消滅額の推移」より筆者作成
権利が消滅した郵便貯金の額は直近3年間で1000億円を超え、郵政民営化以降の合計額はなんと2000億円を上回ります。さらに今後消滅する可能性がある旧郵便貯金の残高は約4400億円以上あるそうです。
銀行預金や郵政民営化以降の郵便貯金は満期後もなくなることはありませんが、旧郵便貯金に限っては払い戻しの期限があり、上表のように多額の貯金が消滅しているといった実態があるので注意が必要です。
2024年1月からは満期後20年以上過ぎていても払い戻しやすくなる
実は、郵便貯金は「真にやむを得ない理由」があったと認められれば貯金の権利がなくなった後も払い戻しできるのですが、その要件は厳しく設定されています。病気やケガ、災害などの理由で手続きできなかった人が対象で、払い戻しには原則通帳・証書が必要です。また「真にやむを得ない理由」があった事実を確認できる証明書(診断書など)が必要なため、払い戻しのハードルが高く請求していない人もいるようです。
このような実態をふまえて総務省は預金者に一層寄り添うべく、旧郵便貯金を管理している郵政管理・支援機構に払い戻しの要件を緩和する要請を出し、冒頭に紹介したとおり払い戻し要件が緩和されることになったのです。
2024年1月以降は、以下3つのうちいずれかに該当する人で「やむを得ない事情」があったと認められる場合には、旧郵便貯金の満期後20年2か月を過ぎていていも払い戻しを受けられる可能性があります。
・ 貯金の存在を認識していなかったこと
・ 催告書の存在または内容を認識していなかったこと
・ 払い戻しの請求をしなかったこと
また、請求者の負担を軽くするために以下のような対応も検討されています。
・「やむを得ない事情」の確認は、請求書の記載内容をもとに判断する(記載内容が真実である旨を請求人等が宣誓)
・払戻請求書の内容をわかりやすくする(事情の確認に係るチェック欄を設ける等)
さらに、これまで請求の手続きに必要であった通帳・証書がなくても申し出の内容を確認してもらえるそうです。そのため通帳・証書をなくしてしまった人や、以前に通帳・証書がないことで払い戻しを断られた人でも払い戻せるチャンスが出てきます。
このように払い戻し要件の見直し後は、現在の要件や手続きの難易度からかなりハードルが下がります。引き出せなくなって諦めていた郵便貯金がある人、昔の郵便貯金の存在を忘れている可能性がある人などは、忘れずに2024年1月以降に手続きすることをおすすめします。
心当たりがあるなら必ず問い合わせよう
旧郵便貯金は法律で払い戻しの期限が決められているとはいえ、ご自身が蓄えた大切な財産に違いはありません。旧郵便貯金の払い戻しの請求には本人の申し出が必要です。旧郵便貯金の払い戻し期限を過ぎていて見直し後の要件に当てはまる人は、2024年1月以降にゆうちょ銀行または郵便局の窓口へ問い合わせてみましょう。
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鈴木靖子 ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級DCプランナー(企業年金総合プランナー)
銀行の財務企画や金融機関向けコンサルティングサービスに10年以上従事。企業のお金に関する業務に携わるなか、その経験を個人の生活にも活かしたいという思いからFP資格を取得。現在は金融商品を売らない独立系FPとして執筆や相談業務を中心に活動中。
HP:https://yacco-labo.com
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