23/10/20
新NISA「成長投資枠」で買ってはいけない投資信託4選
2024年から始まる新NISAでは、旧NISAのつみたてNISA同様の「つみたて投資枠」と一般NISA同様の「成長投資枠」を併用して運用益非課税の投資ができます。このうち、成長投資枠では、つみたて投資枠では購入できない投資信託も買うことができます。だからといって、どんな投資信託でも買っていい!というわけではありません。今回は、新NISAの成長投資枠で買えても買ってはいけない投資信託を紹介します。
成長投資枠で購入できる投資信託は約2000本あるが…
新NISAの成長投資枠では、旧NISAの一般NISAと同じく、株・投資信託・ETF・REITに投資ができます。積立投資だけでなく、一括で投資することもできます。たとえば投資信託の場合、つみたて投資枠で対象外の指数に連動するインデックスファンドや、一般NISAの対象外となっているアクティブファンドを買うこともできます。
ただ、一般NISAとは違い、成長投資枠では投資できない投資信託もあります。具体的には、
①信託期間が20年未満の投資信託
②高レバレッジ型等のデリバティブ(金融派生商品)を利用する投資信託
③毎月分配型の投資信託
が該当します。いずれも、長期で安定的な資産形成には適さないという理由で、そもそも除外されているのです。ちなみに、成長投資枠では株の「監理銘柄・整理銘柄」にも投資ができません。監理銘柄は上場廃止の見込みがある銘柄、整理銘柄は上場廃止される銘柄ですから、これらもやはり、長期で安定的な資産形成には向かないですよね。
投資信託協会のウェブサイトでは「NISA成長投資枠の対象商品」として、成長投資枠で投資できる投資信託のリストが公開されています。2023年6月以降、リストはたびたび更新されていて、2023年10月時点ではおよそ1680本の投資信託が記載されています。最終的には、2000本程度になると見られています。
これらの投資信託は、上で紹介した「成長投資枠では投資できない投資信託」の3つの条件に当てはまらない投資信託ですし、もちろん成長投資枠で買うことができます。しかし、もし買おうとしている投資信託が次のような投資信託であれば、購入しないほうが賢明でしょう。
新NISA「成長投資枠」で買ってはいけない投資信託1:信託報酬の高い投資信託
信託報酬は、投資信託を持っている間にかかる手数料です。信託報酬は「年○%」と年率で記載されており、投資信託の資産から毎日一定の割合で差し引かれます。信託報酬は、ほんのわずかな差でも将来大きな差になるため、なるべく安いに越したことはありません。
投資信託は、数十年にわたって保有し続けることもある商品です。新NISAで非課税投資期間が無期限になったのですから、今後なおさら長期間投資しようと考える方が増えるでしょう。
ただ、成長投資枠の対象商品をよく見ると、同じような投資先に投資する投資信託がたくさんあります。たとえば同じ「S&P500に連動を目指すインデックスファンド」であれば、どの投資信託でも値動きにそれほど大きな差は生じないと考えられます。しかし、信託報酬にはばらつきがあります。同じような成果が出る投資信託であれば、当然信託報酬が安いものを選んだ方がいいというわけです。お使いの金融機関で選べるもっとも安いものを選ぶようにしましょう。
新NISA「成長投資枠」で買ってはいけない投資信託2:テーマ型の投資信託
テーマ型の投資信託とは、世の中の話題にマッチする企業や業界に投資する商品です。テーマ型の投資信託は昔からあり、時代とともに移り変わります。成長投資枠の商品リストを見てもAI、ロボット、気候変動、メタバースなど、テーマ型の投資信託が多く見られます。
確かに、これらのテーマが世の中で話題になっているときにはいいのですが、テーマには旬があります。旬を過ぎたテーマ型の投資信託は投資家が見向きもしなくなり、資金流入が減ってしまいます。すると、純資産総額も小さくなり、運用が続けられなくなり、しまいには途中で運用が終了してしまう可能性もあるのです。
そもそも、テーマ型の投資信託が新たに設定されるころがそのテーマの旬になっていることも少なくありません。これでは、設定されてすぐに買ったところで大きな上昇は望みにくいでしょう。しばらくしてから価格が徐々に下落し、その後は値上がりが期待できない、という状態に陥る可能性があります。
そのうえ、テーマ型の投資信託はアクティブファンドで、信託報酬も1%から2%などと高いものが多くあります。テーマ型はさも値上がりしそうで、金融機関もよく勧めてくるのですが、それは金融機関が儲かる商品だからです。もちろん、成長投資枠でも買わない方が賢明でしょう。
新NISA「成長投資枠」で買ってはいけない投資信託3:特定の地域に投資する投資信託
日本以外の国や地域に投資する投資信託もたくさんあります。分散投資の観点で考えれば、「地域の分散」もリスクの分散に大切なことです。しかし、世界経済の中心である米国など、メジャーな国ならばまだしも、あまり馴染みのない国や地域に投資するような投資信託は、選ばないほうがいいでしょう。その国や地域に何かしらの問題が発生したとき、資産が大きく減ってしまう可能性があります。
また、こちらもやはり信託報酬が2%を超えるなど、高いものも多くあり、純資産総額が少ないものも多く見られます。純資産総額が少ないと、場合によっては途中で運用を終了する繰上償還が行われる可能性もあります。
外国に投資する場合は、市場規模の大きな米国株式型や、世界全体に投資できる全世界式型を選ぶのが無難です。投資の格言に「人の行く裏に道あり花の山」(投資では他人と違うことをしたほうが成功する)というものがありますが、こと投資信託に関してはあえて裏を狙わず、正攻法で進めたほうがいいでしょう。
新NISA「成長投資枠」で買ってはいけない投資信託4:隔月分配型の投資信託
冒頭にお話しした毎月分配型の投資信託は、分配金を毎月支払ってくれる投資信託です。一見よさそうですが、新NISAの成長投資枠では購入できません。なぜなら、毎月分配型の投資信託は、運用益が出なかったときに元本を取り崩して分配金を支払うからです。元本を取り崩していては、いつまで投資を続けても資産が増えていかないので、成長投資枠では投資ができないのです。
しかし、成長投資枠の対象商品の中に、隔月分配型の投資信託はあります。隔月分配型の投資信託は、文字どおり2か月に1度分配金がもらえる投資信託です。
ただ、隔月分配型も元本を取り崩して分配金を支払うことがある点は毎月分配型と同様です。元本を取り崩してしまえば、当然資産が増えていきません。そしてやはり信託報酬も毎月分配型同様1%から2%程度と高くなっています。
もっとも、このような投資信託にも需要はあります。たとえば年金生活者です。隔月分配型の投資信託の大部分は、奇数月に分配金が支払われるようになっています。年金の支給月は偶数月で、2か月分がまとめて支払われます。そのため、奇数月に分配金が支払われる隔月分配型の投資信託を購入すれば、老後に毎月収入がある状態を作り出せます。
隔月分配型の投資信託も、新NISAで投資していれば分配金は非課税でもらえます。定期的に分配金が受け取れれば、生活資金に回しやすいですし、売却タイミングを考える必要もない、というわけです。
ただ、資産を増やす観点でいうと、やはり分配金を出さない商品(再投資する商品)を選んだ方がいいでしょう。どうしても隔月分配型を選ぶ場合は、信託報酬ができるだけ安いもの、利益を出せているもの(トータルリターンがプラスのもの)を選ぶようにしましょう。
つみたて投資枠の対象商品を選ぶ方法も
新NISAの成長投資枠で買ってはいけない投資信託を紹介しました。お金を増やしたいから投資信託に投資するのに、商品選びで失敗したばかりに損をするのは嫌ですよね。これから投資でお金を増やしたいならば、これらの投資信託を避けて、お金が増える投資信託を選ぶようにしましょう。
なお、新NISAではつみたて投資枠だけで1800万円の生涯投資枠を使い切ることができます。毎月の投資額が10万円以下なのであれば、つみたて投資枠だけでコツコツと積立投資をするのもいいでしょう。
毎月10万円以上投資できて成長投資枠を使いたい場合も、成長投資枠でつみたて投資枠の対象商品に投資できます。つみたて投資枠の対象商品は金融庁の定める基準を満たし、手数料が安く、長期での資産形成に向いている投資信託になっています。投資先の投資信託を選ぶ際に、ぜひ検討してみてください。
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畠山 憲一 Mocha編集長
1979年東京生まれ、埼玉育ち。大学卒業後、経済のことをまったく知らないままマネー本を扱う編集プロダクション・出版社に勤務。そこでゼロから学びつつ十余年にわたり書籍・ムック・雑誌記事などの作成に携わる。その経験を生かし、マネー初心者がわからないところ・つまずきやすいところをやさしく解説することを得意にしている。2018年より現職。ファイナンシャル・プランニング技能士2級。教員免許も保有。趣味はランニング。
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