23/09/20
「定年後お金持ち」維持するために退職金でやってはいけない5つのこと
定年退職後も、お金に困ることなく穏やかな老後の生活を送りたいと考えるのは、みなさん同じだと思います。そんな穏やかな生活を実現するために重要な鍵を握るのが、退職金の使い方です。では、一生に一度手にするかしないかというこの大きな金額を、どのように活用すればよいのでしょうか。決して難しいことはありません。「やってはいけない」5つのポイントを押さえておくだけで、さまざまなリスクを回避することができ、退職金でいざという時のために備えることができます。
退職金の相場はいくら?
退職給付(一時金・年金)の相場は、企業規模や業種、勤続年数、年齢によっても異なりますが、勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者で、1,000万円から2,000万円程度が目安とされています。20年前から比べると、給付額は減少傾向にあるものの、多くの方にとっては人生で最も大きな収入を獲得できる機会であることには変わりありません。
●平均退職給付額(勤続20年以上かつ45歳以上の退職者)
厚生労働省「就労条件総合調査」より筆者作成
退職金を元手にした投資デビューは危険がいっぱい
「退職金を元手に資産運用をして、より豊かな老後を暮らしたい」と、投資デビューを考えている方も多いかもしれません。投資をすること自体は悪くありませんが、これまで投資をしてこなかった方が陥りやすい罠を2つ紹介します。
●退職金でやってはいけないこと①:金融機関に勧められた商品を購入する
退職金を手にしたばかりの定年退職者は、手数料の高い商品を販売したい金融機関にとって絶好のターゲットです。
金融機関は、退職者向けのセミナーや特別プランを用意して、退職者との接点を持とうとしますが、予備知識を持たないままセミナーに参加することや、窓口で話を聞くことは、おすすめしません。
彼らが勧めてくる商品は一見魅力的ではあるものの、実際の仕組みは複雑で、期待されるリターンには到底見合わない、リスクと手数料だけが高い商品だと思っておくとよいでしょう。退職金プランや仕組債、ファンドラップ、外貨建て保険、毎月分配型の投資信託などを勧められた場合には特に注意が必要です。
【金融機関から勧められたら注意すべき主な商品】
筆者作成
●退職金でやってはいけないこと②:不動産投資
現役中からローンを組んで不動産投資をすでに行っているならまだしも、不動産業者に勧められるがまま、退職金を元手に不動産投資を始めることは慎重に考える必要があります。
賃貸収入が定期的に入ってくることは不動産投資の魅力ですが、税金や維持費、利息などのコストも考慮すると、投資元本の回収にはかなりの時間を要する上に、空室リスクも考慮しなければなりません。
また、売却には時間もかかってしまうことから、資金の流動性の観点からも注意が必要です。
今回紹介したもの以外にも、暗号資産やNFTなど、自分がよく分からないものに投資をしないことが、定年退職前後の投資における大原則です。
退職金で老後の不確実な支出に備える
医療費など、定年退職の時点では予期できない支出もこれから増えていくため、退職金をしっかりと管理しておく必要があります。
●退職金でやってはいけないこと③:不要な保険の購入
保険は人生におけるさまざまなリスクに備える大切な手段ですが、定年退職は保険の見直しを行うチャンスです。見直しの一環として、これまでよりも保険料の安い保険に加入することは得策かもしれませんが、まずは自分や家族が本当に必要としている保障内容かどうかを厳しく見極めるようにしましょう。
特に忘れがちなのが、公的な医療保険や介護保険、高額療養費制度、遺族年金の存在です。老齢期に発生するリスクは、公的制度でカバーできるものも多いため、不要な保険は解約してなるべくキャッシュを手元に残しておくようにしましょう。
●退職金でやってはいけないこと④:世界一周クルージング
定年退職後に、これまでの慰労も兼ねた世界一周クルージングなどの旅行に出かたいと思っている方も多いのではないでしょうか。もちろん、旅行に出かけるのは悪いことではありませんし、体力のあるうちに出かけた方がより楽しめることは間違いありません。
しかし、旅行資金として退職金をあてにするのは非常に危険です。もし夢を叶えたい場合には、退職金にはほとんど手を付けずに済むような資金計画を早い段階から立てて、積立をしておくことがおすすめです。
●退職金でやってはいけないこと⑤:孫へのプレゼント
「孫の喜ぶ顔が見たい」と、退職金をお孫さんのために使う方も多いはずです。その気持ちは理解できますが、1度あたりの金額が大きい場合や、頻度が高いと、ご自身の老後資金を圧迫しかねません。お孫さんへのプレゼントは節度を保って行うようにしましょう。
もし老齢期の生活に不自由しないほどの資産をすでに持っている方の場合には、教育資金の贈与という形でお孫さんを支援する方が、お子さんご夫婦にも喜ばれるかもしれませんので、十分に話し合った上で大切に使うことをおすすめします。
まとめ
退職金でやってはいけない5つのことを紹介しました。退職金の使い方に関する正しい情報や知識を持つことも大切ですが、実はどれも自分自身のマネープランを持っていれば、防ぐことができるものばかりです。
マネープランの作成を通じて、ご自身の資産や負債、退職後の収入や支出をしっかり把握しておくことが、冷静な判断には何より欠かせません。ファイナンシャルプランナーをはじめとする専門家とともに、豊かな老後生活に向けた準備を始めていきましょう。
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神中 智博 ファイナンシャルプランナー(CFP®)
1992年宮崎県生まれ。関西学院大学会計大学院を修了後、NTTビジネスアソシエ西日本で、NTT西日本グループの財務や内部統制等の業務に従事。2022年10月に兵庫県神戸市で独立系FP事務所ライフホーカーを開業し、現在に至る。家計相談に加えて、公的年金や確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)を活用した資産形成に関するテーマを中心に、執筆・講演活動も展開。「老後不安バスター」として、だれもが老後に向けて自信を持てる社会を目指して奮闘している。CFP®(日本FP協会認定)の他、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、1級DCプランナー、企業年金管理士(確定拠出年金)、一種外務員資格等を保有。
X(旧Twitter)→https://twitter.com/lifehawker
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