23/09/10
「貯蓄無し・綱渡り家計」が陥る破綻の末路
健康で仕事が順調な日々を過ごしていると、貯蓄無しでも特に困ることもなく、家計を見直す必要性も感じないかもしれません。
しかし、そんな家計は、綱渡り家計です。実は細い綱の上を渡っているので、ちょっとしたアクシデントであっという間に破綻の危機が待っています。
今回は、そんな貯蓄無しの綱渡り家計の人が陥る、家計破綻の末路についてお伝えします。
平均貯蓄額1150万円でも、貯蓄無しは4人に1人
金融広報中央委員会の調べによると、貯蓄の平均額は1150万円。これだけ見ると、ほとんどの人が1000万円以上の貯蓄をしているかのようですが、実態はそうではありません。
平均値は、一部の高額貯蓄保有者によって引き上げられてしまうので、必ずしも実態を反映した数値にはなりません。
●貯蓄額ごとの割合(総世帯)
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[総世帯]」より筆者作成
調査結果をよく見ると、貯蓄なしは26.9%と4人に1人は貯蓄ゼロです。
そして、より実態をあらわすとされている中央値(全体の真ん中の世帯の金額)は280万円。決して十分な金額とは言えないのではないでしょうか。
貯蓄がないことで陥る家計破綻の末路
貯蓄が少ないのは、必要性を感じていないからかもしれません。健康で仕事が順調であれば、貯蓄がなくても日々の暮らしにはさして困ることはないでしょう。
しかし、まとまったお金が必要になることは決して珍しいことではありません。
具体的に、どんなことが考えられるでしょうか。
●電化製品などが壊れて出費がかさむ
冷蔵後、エアコン、洗濯機、パソコン、テレビなど、当たり前のように使用している生活必需品が、突然壊れてしまうことがあります。
買わざるを得ないとはいえ手持ちの資金がない時、現実的な方法は分割払いでしょう。
家電量販店で扱っていることもありますし、クレジットカードの分割払いを利用することもできます。
ただし、分割払いは借金のひとつ。月々の支払いを少額にすることはできますが、利息や手数料がかかります。そして、電化製品が壊れることって、なぜか続くことが多いですよね。
分割払いの支払いが終わらないうちに次々壊れてしまったら、借金が膨らむ一方です。
分割払いが複数あると、月々の支払い金額は高くなります。しかし、ここでリボ払いを選ぶことは避けたいところ。リボ払いは毎月の支払い金額は同額ですが、残高がわかりにいことが難点です。
最悪の場合、いつまでたっても支払いが終わらないということにもなりかねません。
壊れるリスクはどんな物にもありますので、あらかじめ貯蓄で準備しておくことがおトクな買物につながります。
●ケガや病気で医療費がかかる
また、予想外のケガや病気で治療費がかかる場合があります。
軽いものであれば治療費も安くすむことが多いでしょうが、入院、手術が必要なものになると治療費も高額になってきます。
保険治療であれば、高額療養費制度によって自己負担の上限額が定められていますが、それでも年収500万円ほどでも1カ月10万円程度はかかります。
【高額療養費制度(70歳未満)】
筆者作成
療養が長期になり、12カ月の間に、高額療養費制度の上限額を超えた月が3回あったら、4回目からは「多数回該当」として、上限額がさらに少額になります。
とはいえ、いつもの生活費のほかに治療費がかかることになるのですから、安心して治療できるように、お金の備えもしっかりしておきたいところです。
手持ちのお金がない場合、病院に支払いを少し待ってもらう交渉もできなくはありませんが、それは支払いができる見込みがあればこそ。貯蓄がない場合、親族などにお金を借りることも考えられます。
とはいえ、きちんと返済できないと人間関係が壊れます。
親族からの借金は無利子無担保でお願いできるケースが多いので、いざという時に助け合える関係は大切。甘えすぎると、孤立してしまうかもしれません。
●仕事ができず収入が減る
ケガや病気の治療が長引けば、仕事に支障が出て収入が減ることになります。
会社員など、社会保険に加入していれば傷病手当金が給付されますが、金額は給料のおよそ3分の2です。
それまでの家計が給料を使い切って貯蓄ができなかったのであれば、収入が減って支出が増えるのですから、かなりのピンチは避けられません。
それ以外にも収入が減るリスクは、勤務先の倒産や雇止めなどが考えられます。
コロナ禍で仕事が激減した飲食店のように、予想もしていなかったことで収入が減ることもあり得ると誰もが気づいたことでしょう。
収入がなくて生活費に困った場合、借金に頼るのは避けるべきです。
借金すれば今月の生活費はまかなえますが、収入自体が減っているなら来月も生活費には足りません。さらに返済もしなくてはならないとすれば、収入よりも支出が多いので家計が破綻するのは当然です。
生活費が足りなくなったら、まずは公的機関の支援を調べましょう。
そして、生活の見直しが急務です。借金をして今月を乗り切っても、それは問題の先送りでしかありません。
生活費のための借金をするなら一定期間だけにとどめ、返済の見込みを立ててからが理想です。
まとめ
貯蓄無しの家計はアクシデントに弱く、破綻のリスク大です。
借金で乗り切ろうとしても、そもそもの家計が「あればあるだけ使う家計」であれば、返済の余裕がなく、家計が破綻してしまいます。
また、何かあった時、頼れる人がいても甘えっぱなしでは人間関係が壊れます。
貯蓄無しは、家計も人間関係も綱渡り状態です。
その危険性に少し手も早く気づいて、貯蓄の習慣を作っていただきたいと思います。
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タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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