23/06/02
6月からの電気代「42%値上げ」は本当か
燃料価格の高騰などを背景に、2022年ごろから電気代は毎月のように値上がりしてきました。家計が悲鳴をあげている状態ですが、2023年6月からは地域によっては最大で「42%値上げ」が見込まれていることをご存じでしょうか。今回は、大手電力会社の電気代値上げのニュースと、値上げによって電気代がいくら値上がりすることが見込まれるのかを紹介します。
2023年6月から「規制料金」が値上がりする
家庭用の電気料金には、2016年4月の電力自由化以前から提供され続けている「規制料金」と、電力会社が自由に設定できる「自由料金」の2種類があります。このうち、家庭で多く利用されている規制料金の値上げは、国に申請して許可を得る必要があります。
2022年11月に東北・北陸・中国・四国・沖縄の各電力5社、2023年に1月には北海道・東京の2社が規制料金の変更の認可申請を出しました(中部・関西・九州は変更の認可申請を出していません)。これをうけて、経済産業省が申請内容を査定しました。
経済産業省の査定では、有識者会議によって燃料費、購入・販売電力量、人件費、修繕費・減価償却費、その他の費用について各電力会社が示した引き上げ額が妥当か確認されました。また、各社の経営効率化や料金設定などについてもチェックが行われました。
そして経済産業省は、2023年5月16日に規制料金の引き上げを認可する方針を示しました。
電気代はいくら上昇するのか
各電力会社が当初申請した電気料金の値上げ率と、経済産業省の査定結果の値上げ率は、次のようになっています。
●電気料金の値上げ率
経済産業省「特定小売供給約款の変更認可申請に係る査定方針【概要版】」より(株)Money&You作成
経済産業省の査定結果の値上げ率は、各社が当初申請した値上げ率よりは下がっていることはわかります。しかし、東京電力エナジーパートナーで15.3%、北陸電力では実に39.7%もの値上げが認可された、というわけです。
また、経済産業省によると、標準的な家庭(30アンペア・400kWh/月使用する家庭)の電気代の試算結果(2022年11月と2023年7月請求分を比較)は、次の表のようになると説明しています。
●標準的な家庭の電気代の試算結果
経済産業省「特定小売供給約款の変更認可申請に係る査定方針【概要版】」より
「申請前」の電気代と「査定結果」の電気代を比べて、変動率が少ない順に並べると、
・東京電力エナジーパートナー:14,444円→16,522円(+14%)
・北海道電力:15,662円→18,885円(+21%)
・東北電力:13,475円→16,657円(+24%)
・四国電力:12,884円→16,123円(+25%)
・中国電力:13,012円→16,814円(+29%)
・沖縄電力:14,074円→19,397円(+38%)
・北陸電力:11,155円→15,879円(+42%)
となっています。
東京電力エナジーパートナーで14%、北陸電力にいたっては42%の電気代増が見込まれているというわけです。
負担軽減策によって値下がりする?
しかし、経済産業省によると、2023年7月請求分の電気代は、2022年11月よりも低い水準になることが多いとしています。なぜなら、電気代を抑える負担軽減策が行われているからです。
今度は、上の表の「申請前」と「改定後」の金額を見比べてみましょう。
・東京電力エナジーパートナー:14,444円→12,190円(-16%)
・北海道電力:15,662円→14,609円(-7%)
・東北電力:13,475円→12,285円(-9%)
・四国電力:12,884円→11,931円(-7%)
・中国電力:13,012円→12,402円(-5%)
・沖縄電力:14,074円→14,681円(+4%)
・北陸電力:11,155円→11,647円(+4%)
北陸電力と沖縄電力を除く5社の改定後の電気代は、申請前の電気代より5%から16%安くなっています。また、北陸電力と沖縄電力でも、値上がり率は4%と小幅に抑えられています。
電気代が減っている要因には、次のものがあります。
●FIT賦課金
正式には「再生エネルギー賦課金発電促進賦課金」(再エネ賦課金)と呼ばれるもの。電力会社は、再生エネルギーによる電力を買い取っています。この買い取り費用の一部を利用者が負担しています。FIT賦課金は2012年度に導入されて以来値上がりしてきましたが、2023年度は1kWhあたり3.45円から1.40円と大幅に値下げされました。
●燃料費調整
こちらは軽減策ではなく、7月請求分の電気代を試算する際に、6月分の燃料費調整額を適用した場合に値下がりすることを示したものです。あくまで試算なので、実際は燃料費によって増減します。
●激変緩和措置
激変緩和措置は、電気代の高騰から家計を守るために、2023年2月請求分より電気代を1kWhあたり7円(低圧契約・主に家庭向け)値引きするというもので、この例では毎月2,800円ずつ電気代を安くすることにつながっています。
しかし、このうちもっとも影響が大きい激変緩和措置が適用されるのは現状2023年10月請求分まで。しかも、2023年10月請求分は1kWhあたり3.5円と、値引き額が半分になってしまいます。確かに、2023年7月請求分の時点では安くなるのかもしれませんが、このままでは2023年10月以降、電気代が上昇していくことは免れない状況です。さらに、燃料価格が高騰することがあれば、いっそう電気代が上がる可能性があります。
まとめ
大手電力会社の電気料金、規制料金の値上げについてご紹介しました。激変緩和措置によって、電気代は確かにいくらか抑えられていることは事実ですが、現状このままでは、2023年冬は電気代が大幅に上がってしまいます。暖房を使うなど、冬は電気の消費量が大きくなる季節です。電気の節約とともに、政府のさらなる対策が望まれます。
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畠山 憲一 Mocha編集長
1979年東京生まれ、埼玉育ち。大学卒業後、経済のことをまったく知らないままマネー本を扱う編集プロダクション・出版社に勤務。そこでゼロから学びつつ十余年にわたり書籍・ムック・雑誌記事などの作成に携わる。その経験を生かし、マネー初心者がわからないところ・つまずきやすいところをやさしく解説することを得意にしている。2018年より現職。ファイナンシャル・プランニング技能士2級。教員免許も保有。趣味はランニング。
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