23/05/12
70代、貯蓄いくらあれば安心?
「70歳代、その先の人生を安心して暮らすにはどのくらいの貯蓄が必要?」
現役時代に老後資金の準備を考えるとき、多くの方が知りたい疑問です。
老後、安心して暮らせる貯蓄は、個々にどのような老後を過ごしたいかが違うため、一概に「○○円があれば大丈夫!」と言い切れるものではありません。しかし、一般的な水準での老後資金は統計を基に、算出できます。
今回は、70歳代の貯蓄額、高齢世帯の家計収支、年金受給額などのデータをもとに、おおよその不足額から老後資金の準備目安を算出します。70代を安心して迎えるために、今のうちからできることも紹介します。
70歳代以降を安心して迎えるための貯蓄額はいくら?
まずは、老後に必要な1か月あたりの生活費を確認してみましょう。
総務省統計局「家計調査報告2022(令和4)年度版」のデータによれば、2022(令和4)年度における老後に必要な1か月あたりの生活費は、独身世帯で約15万円、夫婦世帯で約27万円という結果でした。
●老後に必要な1か月あたりの生活費(2022年度)
総務省統計局「家計調査報告2022(令和4)年度版」をもとに筆者作成
老後に必要な金額をシミュレーション
上記の結果から、老後に必要な生活費をシミュレーションしてみましょう。内閣府が発表した「高齢社会白書2022(令和4)年版」によると、2065(令和47)年には、平均寿命が男性84.95歳、女性91.35歳になると見込まれています。20年後、30年後に必要な生活費をシミュレーションした結果は、以下のとおりです。
●老後に必要と予想される生活費
「家計調査報告2022(令和4)年度版」をもとに筆者作成
上記の結果は、生活費に限定した結果です。家の修繕費、車の車検代、家電の買換え、旅行費用、慶弔費、介護費用や葬儀費用などの支出は含まれていません。
もし、生活費以外のさまざまな費用を含めたものを「老後の安心」と捉えるとするなら、生命保険文化センターの「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」での1か月あたりの平均生活費、約37万9000円が目安になり、1年間では約450万円、20年間では約9000万円、30年間では1億3500万円という結果になります。
●老後に受け取る公的年金の平均受給額
続いて、老後に受け取る公的年金の平均受給額について確認しましょう。
厚生労働省「厚生年金・国民年金事業の概況2021(令和3)年度」によると、老齢厚生年金(老齢基礎年金含む)の平均受給額は次のとおりです。
・平均年金月額:14万3965円
・男性平均年金月額:16万3380円
・女性平均年金月額:10万4686円
老齢厚生年金(老齢基礎年金含む)の平均受給額を年単位に換算して、先述した「老後に必要と予想される生活費」と比較すると、次のような結果となります。
なお、夫婦世帯は、男性が平均年金月額の14万3965円、女性は6万6250円(2023年度老齢基礎年金の満額)を足した金額となっています。
●老後の予想年金受給額
厚生労働省「厚生年金・国民年金事業の概況2021(令和3)年度」をもとに筆者作成
以上より、「予想年金受給額-予想生活費」を計算すると、老後生活で不足すると考えられる生活費がわかります。
●老後生活で不足すると考えられる生活費(予想年金受給額-予想生活費)
「家計調査報告2022(令和4)年度版」「厚生年金・国民年金事業の概況2021(令和3)年度」をもとに筆者作成
老後生活で不足すると考えられる生活費は、70歳から85歳までの15年間で、独身世帯が207万5400円、夫婦世帯で1049万940円となりました。いいかえれば、70代でこれだけの貯蓄が用意できていれば、まずは安心といえるのではないでしょうか。
もっとも、老後の年金額は、個々に違いがあります。
たとえば、自営業者の方は、国民年金から支給される老齢基礎年金のみの場合もあるでしょう。厚生年金に加入している会社員なども、年収と加入期間で金額が異なる場合があります。そのため、すべての人に上記の計算結果があてはまると言い切れませんが、ひとつの目安となるのではないでしょうか。
ただひとつ言えることは、公的年金だけを老後資金の頼りにするのは難しいということです。
お金が足りない70代とならないために
「老後にお金がない…」とならないために、今からできることを紹介します。
●70代に備える今からできること1:70歳まで働く
お金に余裕があるケースは別ですが、多くの場合65歳でリタイアして収入がなくなるのは、その先の長い老後を考えれば心配になるはずです。それなら、働けるうちは働き、収入を確保してはどうでしょう。雇用側も、働く意欲があれば、年齢に関係なくという企業が増えています。
ただし、週5日稼働は体力的にキツいかもしれません。もちろん、働けるならばそれでもいいのですが、難しければ週3~4日などと減らすのもいいでしょう。今までの経験を活かした仕事を続けましょう。
厚生年金保険は、70歳まで加入できます。その間の年金額は、厚生年金を掛けた期間(前年9月から当年8月まで)を反映して、毎年10月分(12月受取分)から改定されます。
働いた分、年金にスピーディに増額される点が嬉しいですね。
●70代に備える今からできること2:年金を繰り下げる
厚生年金や国民年金は原則65歳からもらうことができます。しかし、もらう時期を繰り下げることで、1か月あたり0.7%年金額を増やすことができます。仮に、70歳まで繰り下げた場合は42%、最長75歳まで繰り下げれば84%も多くの年金がもらえます。
たとえば、先ほどの例で65歳から年額14万円の年金をもらえる人が繰り下げ受給をした場合、
・70歳まで繰り下げ:14万円×1.42=19万8800円
・75歳まで繰り下げ:14万円×1.84=25万7600円
という具合に、年金額を増やせます。
年金を繰り下げしている間は、年金がもらえません。厚生年金と国民年金の両方を繰り下げるのはムリという場合もあります、その場合は、両方ではなくどちらか一方だけを繰り下げることも可能です。年金の繰り下げは、出来る範囲で検討するとよいでしょう。
●70代に備える今からできること3:年金の範囲で家計管理する
前述の「老後生活で不足すると考えられる生活費」の1か月あたりの赤字は、独身世帯が1万1530円、夫婦世帯では5万8283円でした。もし、1か月あたりの生活が年金の範囲で賄え、赤字にならなければ、それに越したことはありません。
収入の多かった現役時代と同じ金銭感覚を引きずることのないよう気をつけましょう。まずは、通信費、保険料、住宅費、水道光熱費、駐車場代、サブスクの定期購入代、スポーツジム会費などの固定費管理から見直しましょう。
保険料に複数加入しているのであれば、重複した保障がないか確認しましょう。スマホは料金プランを見直したり、格安SIMに乗り換えたりしましょう。自動車は必要性を考え、台数を減らしたり、小型な車に乗り換えたりすれば、維持・管理費を抑えられます。
スポーツジムは、利用頻度に見合っているか。解約し忘れたサブスクはないかなど、細かくチェックしましょう。固定費は一度見直せば、削減効果が高く、継続性もあります。少し面倒と感じるかもしれませんが、今のうちに月に1個ずつでも見直しましょう。
まとめ
老後のお金に不安を感じたら、まずは、自分がもらえる年金額を確認しましょう。そこから、いつまで、どのくらいの年収で働き、年金はいつまで繰下げるかという予定を立てましょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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