22/11/15
故人の銀行口座が凍結されるタイミングはいつ?口座凍結はどうすれば解除できるのか
亡くなった人が持っていた銀行口座や認知症の方の銀行口座は凍結されてしまう場合があります。銀行口座が凍結されると、お金が引き出せなくなってしまいます。今回は、金融機関が口座を凍結するタイミングや、凍結を解除してお金を引き出す方法について説明します。急に口座凍結をされても慌てないよう、手続きの概要を把握しておきましょう。
口座が凍結される理由と凍結のタイミング
口座の凍結とは、金融機関が口座の入出金ができないよう処理を行った状態です。金融機関が口座の凍結をする原因はいくつかありますが、代表的なものは口座の名義人が死亡したときです。銀行口座の名義人が死亡すると、その口座は凍結され、一切の入出金ができない状態になります。
●口座はなぜ凍結される?
亡くなった人の預貯金は、亡くなった時点で相続財産となります。相続人は一人とは限りません。預貯金を誰が相続するか確定する前に一人の相続人が引き出してしまうと、トラブルになる可能性があります。こうしたことから、口座名義人が死亡したときには、金融機関は口座を凍結する扱いをするのです。
●口座凍結のタイミングは?
金融機関が口座を凍結するのは、口座名義人死亡の事実を知ったタイミングです。ただし、役所に死亡届を出したら自動的に口座凍結されるわけではありません。役所から銀行に死亡の連絡をするしくみはないからです。
銀行が死亡の事実を知るのは、一般には親族から問い合わせがあったときでしょう。亡くなった人の親族は、相続手続きについて銀行に問い合わせをすることが多いはずです。逆に、親族が問い合わせしなければ、口座はいつまでも凍結されないこともあります。なお、新聞の訃報欄などで銀行が独自に口座名義人の死亡を確認したときにも、口座は凍結されます。
●口座凍結の影響は?
口座が凍結されると、カードでも窓口でも入出金ができません。また、引き落としもストップします。
たとえば、亡くなった人の口座から家賃や公共料金を自動引き落としにしていた場合には、支払いができなくなってしまいます。そのままにしておくと、家賃を滞納した扱いになり、督促を受けるかもしれません。公共料金が落ちなければ、電気やガスを止められる可能性もあります。
凍結を解除するにはどうすればいい?
口座の凍結は、放っておいても解除されません。凍結を解除するには、金融機関で預貯金の相続手続きを行う必要があります。預貯金を誰が相続するのかを明確にし、必要書類を揃えて銀行に提出すれば、解約や払い戻しの手続きができます。
●預貯金の相続手続きには何が必要?
預貯金の相続手続きを行う際には、亡くなった人の遺言書がある場合には遺言書を、遺言書がない場合には相続人全員で遺産分割協議を行って遺産分割協議書を添付する必要があります。遺産分割について、家庭裁判所の調停や審判で決まった場合には、調停調書や審判所を添付します。このほかに、戸籍謄本や相続人の印鑑証明書なども必要になります。
凍結解除前でも相続人は仮払いを受けられる
相続手続きを行って口座の凍結を解除してもらうには、遺産分割協議をしたり必要書類を集めたりしなければならず、時間がかかります。実際には、手続きが終わるまでに、亡くなった人の入院費用や葬儀費用の支払いがあり、お金を引き出したいケースも多いでしょう。亡くなった人の口座から払い戻しを受けたい場合、家庭裁判所の仮処分を受ける方法もありますが、やはり時間はかかってしまいます。
相続開始時のこうした不便を解消するために、家庭裁判所の判断を経ずに相続人が一定額までの預貯金の仮払いが受けられる制度が2019年7月にスタートしました。
●預貯金の仮払い制度で払い戻しできる金額は?
各相続人が単独で仮払いを受けられる金額は次のとおりです。
払い戻し可能な額=相続開始時(亡くなった時)の預貯金額×1/3×法定相続分
※ただし、同一の金融機関からの払い戻し額の上限は150万円
法定相続分とは、民法で定められた相続割合です。たとえば、相続人が妻と長男、次男の場合、妻の法定相続分は2分の1、長男、次男の法定相続分は各4分の1です。相続開始時の預貯金額が300万円とすると、それぞれの払い戻し可能額は次のようになります。
妻 300万円×1/3×1/2=50万円
長男 300万円×1/3×1/4=25万円
次男 300万円×1/3×1/4=25万円
●預貯金の仮払い制度の必要書類は?
預貯金の仮払い制度を利用して銀行に払い戻しを請求するときには、相続関係がわかる戸籍謄本一式と、払い戻しをする人の印鑑証明書が必要です。
認知症でも口座が凍結されるかも
口座が凍結されるのは、口座名義人が亡くなったときだけではありません。口座名義人が認知症になった場合にも、口座が凍結されることがあります。
●認知症の人の口座はなぜ凍結される?
認知症とは記憶力や判断能力が低下している状態です。認知症になると、自分でお金を適切に管理できなくなってしまいます。他人に言われるままに現金を引き出してしまったり、詐欺にあって高額の買い物をしてしまったりするリスクも出てきます。こうしたことから、金融機関は認知症の人の財産を守るために、口座を凍結することがあります。
●認知症の人の口座が凍結されるケース
家族が認知症になった場合、金融機関に相談し、本人の口座を凍結してもらうことも可能です。また、金融機関側で口座を凍結するケースもあります。たとえば、窓口で高額のお金を引き出そうとした高齢者が意味不明な内容を話せば、金融機関は認知症と判断して口座を凍結することが考えられます。
●認知症の人の口座凍結を解除するには
認知症の人の口座が凍結された場合、凍結が解除されても本人は財産の管理ができません。認知症の人の財産管理を行うためには、成年後見人が必要です。成年後見人とは、認知症などの理由で判断能力が低下した人のために財産管理を行う代理人です。
既に認知症になっている人については、家庭裁判所に申立てをして、成年後見人を選任してもらいます。成年後見人選任後、金融機関に届出すれば、凍結は解除されます。選任された成年後見人は、本人に代わって口座の入出金を行うことができます。
●あらかじめ任意後見人を選んでおくこともできる
将来認知症になった場合に備えて、正常な判断能力があるうちに、自分で成年後見人を選んで契約(任意後見契約)をしておく方法もあります。任意後見契約により依頼する成年後見人は、任意後見人と呼ばれます。任意後見人は、親族に依頼してもかまいませんし、弁護士や司法書士などの専門家に依頼することもできます。
任意後見契約を結んでおけば、認知症になったときに速やかに任意後見人に財産管理を任せられます。
●家族信託で口座の管理を一任する方法も
認知症の人に成年後見人が付けば、口座の入出金を含めた財産の管理を任せられます。しかし、成年後見制度には家庭裁判所への報告義務や専門家の報酬が発生するなどのデメリットもあります。
認知症の人の口座を管理するには、家族信託という方法もあります。家族信託は、財産の所有者が、財産の管理・処分の権限だけを切り離して家族などに与える方法です。契約により自由に内容を定められるので、財産の管理や処分を柔軟に行うことができます。
高齢になると認知症になる可能性が高くなります。将来判断能力が低下した場合に備えて、家族と財産管理について話し合っておき、適切な方法を考えておきましょう。
口座凍結で慌てないために
家族が亡くなった後、すぐに現金が引き出せないと困ることがあります。仮払い請求ができるよう、家族が普段使っている銀行は把握しておきましょう。通帳や印鑑など大事なものはまとめておくと、手続きする際にもスムーズです。
口座凍結前であっても、亡くなった人の預貯金を引き出すときには、他の相続人の同意を得る必要があります。何にいくら使ったのかがわかるよう記録を残しておき、後日のトラブルを予防しましょう。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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