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23/02/09

家計・ライフ

金利「実質利上げ」で私たちの生活はどうなる?メリット・デメリットをお金のプロが解説

金利「実質利上げ」で私たちの生活はどうなる?メリット・デメリットをお金のプロが解説

2022年12月、日銀は長らく続けてきた大規模緩和を修正する方針を決めました。日銀が10年物国債の許容幅を上限0.5%程度にすると発表したのです。
誰もが予想しないサプライズを、相場関係者は実質的利上げととらえました。この決定を受け午後から債券相場は急落し、大幅な株安・円高に振れる大荒れの展開になりました。
では、この政策修正は、私たちの生活にどのように影響していくのでしょうか。

2022年12月の日銀会合で決まったこと

2022年12月の日銀金融政策決定会合では、長期金利の変動許容幅を従来の0.25%程度から0.5%程度に引き上げることを決めました。円安が進み物価の上昇に不満を抱く人が多いなか、この決定は内容もタイミングも突然でした。

この12月の日銀金融政策決定会合後、黒田総裁は会見で「利上げや金融引き締めではない」と発言しています。しかし、以前は「0.25%の変動許容幅を広くしたら、明らかに金融緩和の効果を阻害する」とも話していました。そのため、金融市場では発表後、長期金利が急騰し、事実上の利上げと受け止める動きになったのです。

●2022年12月日銀会合の主な決定内容

筆者作成

金利の決まり方と金融緩和政策

金利には、短期金利と長期金利があります。短期金利は、現状の景気や物価などから金融政策で決まります。

短期金利は、日銀のマイナス金利政策によって、マイナス0.1%の金利に誘導しています。
一方、長期金利は、経済の動向や物価の予想を織り込んで市場で決まるのが一般的です。なかでも期間が10年の国債利回りは長期金利の代表的な指標です。先行き景気がよくなれば金利が上がり、景気が悪くなりそうだと金利が下がります。市場関係者は、景気の先行きを予想しながら取引します。

しかし、金融緩和政策の一つとして、2016年9月から、短期金利と長期金利を両方操作して目標の水準に誘導しようとする「長短金利操作」が行われています。長期金利は日銀が大量に国債を買うことで、10年物国債利回りをゼロ%程度に誘導しています。本来は市場で決まるはずの長期金利を、日銀が固定(ピン止め)しているのです。

通常、金利は期間が短いと低く、長くなると高くなります。グラフにすると右肩上がりの期間に応じた金利の曲線グラフになります。この期間に応じた金利の折れ線グラフのことを「イールドカーブ」といいます。

日銀は、物価上昇率2%の安定的な実現を目標にしているため、短期金利と10年物国債利回りの2点を低く抑えています(イールドカーブ・コントロール(YCC))。そのため、他の年限の利回りは上昇し、10年だけが不自然に沈んだへこみがある曲線になっています。そのゆがみから円安にともない、政策変更を見越して投機筋が債券売りを加速させ、市場機能が大きく損なわれる状況が出てきたのです。

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実質的な利上げのメリットとデメリット

2022年12月の日銀金融政策決定会合では、長期金利の変動幅が変更されました。この政策修正では短期金利に内容変更がないため、当面は短期金利が影響する商品には影響は小さいと考えられます。

今回は実質的な利上げですが、今後利上げが続くとなると、為替が円高に振れることから、輸入コストが抑えられて食料品や資源の値上がりが緩やかになり可能性があります。そうなれば、家計にプラスに働きます。また、債券を運用している場合には、運用利回りの改善が期待できます。実際、2023年1月に募集された個人向け国債(変動10年)は適用利率が0.33%(税引前)とにわかに上昇しています。

しかし、長期金利は、従来の金利より上がることによってデメリットも生じます。実際、大手銀行では、2023年1月からの10年固定金利の住宅ローンが0.1~0.34%の幅で引き上げられています。企業では借り入れのコストが増し、社債を発行する場合には利払いが増加することから、中小企業には負担が大きくなります。さらに債券で安定的な収益が確保できるようになれば、株価にはマイナス要因となります。

次の追加修正・物価の行方はどうなる?

日銀が追加の利上げを行うのではないかという思惑から、1月の日銀会合は大変注目されました。しかし、2023年1月17~18日の金融政策決定会合では金融緩和策の維持を決めました。そのため長期金利が急低下し、一時0.36%まで下がってしまいました。

今後は、12月に行った政策修正の効果が出てきて国債市場の機能が回復してくるのか、物価2%目標が達成できるのかが政策のカギになります。安定的に物価上昇率2%が達成できるまでは、短期金利は上がらないという見方が大半ですが、経済は何が起こるかわかりません。住宅ローンの変動型は短期金利に、固定型は長期金利に連動します。短期金利が上がり始めたから固定金利に乗り換えようと考えても、すでに固定型の金利は上昇している可能性が大きいので、今後の金利の動向には注意が必要です。

池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®

証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー

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