20/01/11
2020年から年収850万円を超えると手取りが減る! サラリーマンの増税に要注意
新しい年が明け、慌ただしい仕事はじめが一息付けるころに、すぐにやってくるのが確定申告です。自営業者のみならず、サラリーマンでも、医療費控除などで確定申告が必要な人は大勢います。筆者の周りは税務関係の業を行う友人が多いので、毎年春先までは各誘いを控えています。
さて、2020年からみなさんの収入に対する税金「所得税」が、増えるかもしれない事をご存じでしょうか。
税額が決まるまでのしくみ
「かもしれない」という言い方をするのは、所得額や控除項目によって、所得税額がその人その人、異なるからです。まず所得税額が決まる仕組みを確認しましょう。
(筆者作成)
(国税局ホームページより)
所得税額を計算するときは、まず収入(いわゆる額面)から社会保険料を含む14種類の「所得控除」を行い、控除後の額(課税所得額)に5%から45%の税率をかけます(①)。日本は累進課税制度が採用されていますので、課税所得額が多い人ほど、高い税率がかかる仕組みです。
そして、算出された税額から「税額控除」を行います(②)。近年話題になった、ふるさと納税などの寄付金控除や、国内法人から受け取る株式配当の配当控除などが、この「税額控除」に該当します。税額控除後の金額が所得税額となります。
つまり、所得控除・税額控除が多い人ほど、同じ所得額でも税額が低くなる仕組みです。
近年の給与所得控除の減額による、実質増税
なぜ、「控除」が存在するのかというと、少し聞きなれない言葉になりますが、「担税力(たんぜいりょく)」に応じた税額を算出するためです。
担税力とは、実際に税を受け持つことのできる能力を指します。たとえば、同じ収入額の2人で、養育する子供や親がいる人と、そうでない独身者に同じ税金を課したとすると、養育する子供や親がいる人の方が納税の負担が大きいと考えられます。控除は、そうした納税負担をなるべく公平に保つための措置、と解釈いただくと良いでしょう。
さて、今回の「サラリーマンの増税」の基となる控除は、「給与所得控除」です。
給与所得控除は、上記図の①にあたる、所得控除の1つです。自営業者が仕入れにかかった経費などを差し引くのと同じ要領で、サラリーマンも一定の「経費に近いもの」を差し引くことができるのです。給与所得者の所得額に応じて、一定の控除額が認められています。
実は、この給与所得控除は年々減らされています。直近では、2013年、2016年、2017年、そして2020年の4回も変更されています。
●年収と給与所得控除額の変化(2013年~2020年)
(国税局ホームページより筆者作成)
上の図をご覧ください。縦軸は給与所得控除額、横軸は年収です。年収が高くなるほど、給与所得控除額が上がり、上限に達するとあとは年収がいくら増えても一定になっています。
これまで給与所得控除額が下がっているのは、年収が1000万超のいわゆる「高額所得者」でした。しかし、2020年の改正ではとうとうすべての年収の方が一斉に下がっていることが分かります。
控除できる金額が減るということは、課税所得額が増えることを意味します。つまり、納税額も実質的に増えることになります。
給与控除と基礎控除の相殺ラインは、年収850万円
しかし、実は給与所得控除が10万円減ったかわりに、増えた控除があります。それは、所得控除の中で誰もが受けられる「基礎控除」です。
所得税の計算に使う基礎控除は、これまで一律で38万円でした。しかし、2020年以降は最大で48万円までと、10万円増えます。
●基礎控除額一覧(2020年以降)
(国税局ホームページより)
したがって、給与所得控除が10万円減ったかわりに基礎控除が10万円増えたという方の場合は、差し引き0円ですから、所得税の額はこれまでと変わらないでしょう。
しかし、先ほどの給与所得控除のグラフをよく見てください。年収850万円超の方の場合、年収がいくら上がっても給与所得控除は一定になっていますね。年収850万円超の方の場合、給与所得控除は10万円以上減っているのです。ですから、基礎控除が10万円増えたところで、控除できる金額はこれまでよりも減ってしまうので、税金も増えることになります。
仮に年収900万円として計算してみると、控除額が減った関係で増える課税所得額は5万円。ここに税率をかけるので、実際の増税額は1〜2万円になります。年収が高くなればなるほど差額と税率が増えますので、実際の増税額は大きくなります。
まとめ
高額所得者ほど税金を負担するという、資産の再分配の構造ができているのは良いことですが、「がんばって収入を増やしても、実際の手取りが同じようには増えない」という仕組みは、今後収入増を目指す若者には、トーンダウンの材料になりかねませんね。
また、増える税金に対応するために、iDeco(イデコ・個人型確定拠出年金)や企業型DC(企業型確定拠出年金)など、効率よく節税ができる制度を取り入れていく必要性も増していくでしょう。
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佐々木 愛子 ファイナンシャルプランナー(AFP)、証券外務員Ⅰ種
国内外の保険会社で8年以上営業、証券IFAを経験後、リーマンショック後の超低金利時代、リテール営業を中心に500世帯以上と契約を結ぶ。FPとして10代のうちから金融、経済について学ぶ大切さを訴え活動中。
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