22/05/26
つみたてNISAの資産は亡くなっても非課税の恩恵は受けられる?
つみたてNISAは毎年40万円までの投資の利益が最長20年間にわたって非課税にできる制度です。2042年の投資分が2061年まで非課税になるつみたてNISAですが、長い運用期間の間には、資産を残したままお亡くなりになる方もいるでしょう。そこで今回は、もしもつみたてNISAを利用している人が亡くなったら、資産はどうなるのかを紹介します。
つみたてNISAの資産は「つみたてNISA口座」では引き継げない
ある人が亡くなったとき、その人の財産を引き継ぐことを相続といいます。亡くなった人を「被相続人」、被相続人の財産を引き継ぐ人を「相続人」といいます。
相続の対象になる財産には、現金や預金といったお金、土地や建物といった不動産、株式や債券といった有価証券があります。そして、つみたてNISAで投資する投資信託も、同じように相続の対象となる財産です。したがって、つみたてNISAの資産も、被相続人から相続人に投資信託のまま引き継ぎ(移管)を行います。
ただし、つみたてNISAの資産の相続は少し特殊です。というのも、被相続人のつみたてNISAの資産を相続人のつみたてNISA口座で引き継ぐことはできないからです。
たとえば、亡くなった親(被相続人)がつみたてNISAで300万円の資産を持っていたとします。つみたてNISAの資産は相続の対象です。しかし、このつみたてNISAの資産を子ども(相続人)であるあなたが引き継ぐ場合、たとえあなたがつみたてNISA口座を持っていたとしても、つみたてNISA口座で引き継ぐことはできません。相続で手に入れた資産は、課税口座(特定口座または一般口座)で引き継ぎます。
親のつみたてNISAの運用益非課税の恩恵は受けられる
親のつみたてNISA口座から子である自分の課税口座に資産が引き継がれるとなると、気になるのは税金の扱いでしょう。せっかく親が非課税で運用していたのに、自分の課税口座で引き継ぐと税金がかかってしまうのでは? そう心配になる方もいるかもしれません。
しかし、結論からいうと大丈夫です。親のつみたてNISA口座から自分の課税口座に資産を移すとき、その移した価格が新しい取得価格となるからです。
たとえば、親がつみたてNISAで200万円投資し、値上がりして資産の合計が300万円になったとします。100万円の含み益がある状態です。この300万円をあなたが相続した場合、新たに「300万円で取得した」とみなされます。そのため、親がつみたてNISAで増やした100万円は、資産を引き継いだ後も非課税です。つまり、親のつみたてNISAの非課税の恩恵を受けることができます。なお、この後あなたが運用を続け、さらに50万円増やした(350万円になった)場合、増やした50万円に対しては課税されます。
ただし、親がつみたてNISAで400万円投資し、値下がりして資産の合計が300万円になっていた場合(100万円の含み損がある状態)でも、あなたが相続すれば新たに「300万円で取得した」とみなします。仮にここから50万円増やした(350万円になった)場合、トータルで見れば依然50万円の損失を抱えていますが、増えた50万円に対しては課税されてしまう点は押さえておきましょう。
また、つみたてNISA口座の含み益が非課税になったとしても、引き継ぐ資産は相続税の課税対象になることにも注意が必要です。相続税には「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」の基礎控除があります。しかし、引き継ぐ投資信託とその他の相続する資産の合計額が基礎控除額を超えた場合、引き継ぐ資産額に応じて相続税が発生するのです。
相続税の税率は1,000万円以下で10%、引き継ぐ資産額が増えると相続税の税率は段階的に上昇します。つみたてNISAの資産を引き継ぐことで、相続税が発生する(高くなる)のであれば、含み損の状態でもらったほうがいいでしょう。
なお、余談ですが、iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)を利用している人が亡くなった場合に受け取れる死亡一時金は「みなし相続財産」として、法定相続人1人につき500万円まで非課税で受け取れます。つみたてNISAには、iDeCoのような非課税がない、というわけです。
家族に「どの金融機関でつみたてNISAをしているか」を伝えよう
つみたてNISAの利用者が亡くなったら、相続人は亡くなったことを知った日以後遅滞なく、金融機関へ「非課税口座開設者死亡届出書」を提出する必要があります。この書類は、被相続人が利用していた金融機関から取り寄せて提出します。金融機関と相続人の間での相続手続きが完了したら、資産が引き継がれます。
また、被相続人と相続人の金融機関は同じでなくてはなりません。たとえば、親がSBI証券、自分が楽天証券を利用している場合、親のSBI証券の資産を自分の楽天証券の課税口座に移すことはできない、というわけです。自分もSBI証券に口座開設をしたうえで、相続を行う必要があります。
以上を踏まえて、つみたてNISAを利用している人は、あらかじめ家族に「どの金融機関でつみたてNISAをしているか」「自分が亡くなったらどんな手続きが必要か」を伝えておくといいでしょう。万が一自分が亡くなったときに、つみたてNISAを利用していることを遺された家族が知らなければ、そもそも金融機関に届出などのやりとりをすることもできないからです。縁起でもない話ですが、あの世にお金は持っていけませんので、家族に活用してもらうようにしましょう。
まとめ
つみたてNISAの利用者が亡くなった場合、資産は遺された人が相続できます。被相続人のつみたてNISA口座の資産は相続人の課税口座にしか移せませんが、つみたてNISA口座での値上がり益は課税口座に移ったあとも非課税です。
万が一のときに「つみたてNISAの資産があるなんて知らなかった」などとならないよう、家族にはあらかじめどの金融機関でつみたてNISAを利用しているかを伝えておきましょう。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
畠山 憲一 Mocha編集長
1979年東京生まれ、埼玉育ち。大学卒業後、経済のことをまったく知らないままマネー本を扱う編集プロダクション・出版社に勤務。そこでゼロから学びつつ十余年にわたり書籍・ムック・雑誌記事などの作成に携わる。その経験を生かし、マネー初心者がわからないところ・つまずきやすいところをやさしく解説することを得意にしている。2018年より現職。ファイナンシャル・プランニング技能士2級。教員免許も保有。趣味はランニング。
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