22/03/03
高齢者の就業率はどのくらい?正社員の割合は
時代の変化とともに高齢者の労働環境も変化しています。多くの企業が定年年齢の引き上げや、高齢者雇用の試みを行っており、社会全体として高齢者の労働環境が整いつつあるからです。そのような中、これからも働く年金世代は増えていくものと思われます。今回は高齢者を取り巻く労働環境と、働くことで得られるメリット3つについてご紹介いたします。
コロナ禍でも働く年金世代は増加傾向
2021年(令和3年)の総務省「労働力調査」によると、労働人口の総数は6667万人。2年連続で減少しています。その一方で、2021年の高齢就業者数は、2004年以降、18年連続で前年に比べ増加し、912万人と過去最多となっています。将来においても、若い世代の働き口が減る一方、65歳以上の高齢者(いわゆる年金世代)の労働者数は増加する傾向にあります。
●高齢就業者数の推移(2010年〜2021年)
※数値は単位未満を四捨五入しているため、合計の数値と内訳の数値が一致しない場合がある
※2011年は、東日本大震災に伴う補完推計値
厚生労働省「労働力調査(基本集計)」より筆者作成
各年齢の人口に占める就業者の割合(就業率)は60歳〜64歳が71.5%、65歳〜69歳が50.3%。70歳以上も含めた「65歳以上全体」でみると25.1%ですが、60代はまだまだ働いている様子が見て取れます。
また、高齢雇用者数の推移を雇用形態別にみると、非正規の職員・従業員が75.9%を占めており、一番多いのはパート・アルバイト(52.2%)となっています。一方、正規の職員・従業員(いわゆる正社員)は24.1%で65歳以上の高齢就業者の4人に1人の割合が正規雇用となっている点も注目です。これは企業も高齢者を重要な戦力として認識するようになってきている証拠だと感じます。
●雇用形態別高齢雇用者の内訳(2021年)
厚生労働省「労働力調査(詳細集計)」より筆者作成
働く年金世代が増えている3つの理由
働く年金世代が増えている理由には、国が高齢者の働きやすい環境づくりを政策面で後押ししていることが背景にあります。具体的には、以下の3つがあります。
●①雇用年齢の引き上げ(高年齢者雇用確保措置)
企業には、希望する全員が65歳まで働けるよう「定年の延長」「定年制の廃止」「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置を取ることが義務化されました。さらに2021年4月からは70歳までの雇用確保措置が「努力義務」となっています。近い将来、70歳の雇用確保措置が義務化されるのではないかと思われます。
●②在職老齢年金制度の緩和
現状、老齢厚生年金をもらいながら働く場合、年金額と賃金の月額合計が60~64歳であれば28万円、65歳以上ならば47万円を超えてしまうと、その超えた全部または一部の年金が減らされる「在職老齢年金」という制度があります。これが2022年4月からは60~64歳の方も47万円に緩和されます。60歳以降に老齢厚生年金をもらいながら雇用継続される方などは、賃金月額をあまり気にせず働けるというわけです。年金が減るから働く意欲が削がれる、ということも少なくなるでしょう。
●③在職定時改定の導入
さらに、2022年4月からは65歳以上で老齢厚生年金をもらいながら働く方について、65歳以降に納めた厚生年金保険料を毎年10月からの年金額に反映することになります。これを在職定時改定といいます。
これまでは、退職し厚生年金を脱退しなければ老齢厚生年金額の改定が行われませんでしたが、今回の改定により退職することなく65歳以降に払い込んだ保険料が毎年の年金額として反映されますので、年金を受給しながら働く方のモチベーションのアップにつながることが期待できます。
仕事することで得られるメリット3つ
以上、国として高齢者が働きやすい環境を整備しようという動きについて確認しました。とはいえ「老後は年金をもらいながらゆっくり余生を過ごす」というスタイルに憧れ、高齢になっても働くことに抵抗があるという方もまだまだ少なくありません。しかしながら現実には定年を迎え、いざ無職の身となると、今まで仕事が与えてくれていたものに気が付くことが多いようです。
ここでは高齢者になっても働くということのメリットを3つご紹介します。当たり前のことかもしれませんが、もう一度改めて考えてみましょう。
●メリット①:毎月一定の収入がある安心感
年金の支給が65歳に先送りされた状態で、60歳で定年退職をしたら、5年間は収入が無くなり退職金・貯金で生活する事になります。貯金が減っていく不安というのは精神衛生上よくないものです。しかし働くことで、そのような不安を減らすことができるというのは大きなメリットです。もし、貯金が底を突くような事態が実際に起こると、その頃には今よりさらに高齢になっており、働くことへのハードルが高くなっているかもしれませんので、事前に計画を立てて進めていくことが大切です。
●メリット②:社会との繋がりを感じられる満足感
仕事をせずに家にいる状態になると、外部との関係が絶たれてしまい孤独を感じる方が多いです。しかし、仕事をしていると、職場の同僚・部下とのコミュニケーションや、仕事を通じて人に喜んでもらうなど様々な刺激もあり、人の役に立つことの喜びを感じる機会を得ることで生きていることへの満足感アップに繋がります。
●メリット③:規則正しい生活で健康維持ができる
健康面でのメリットとしては、起床や就寝などの生活リズムが規則正しくなる、仕事で何かと頭を使うので認知症の予防になる、軽作業などの仕事内容が程よい運動になる、雇用形態によっては人間ドックや健康診断を会社負担で受診することもでき病気を早期発見できる可能性が高まる点などが挙げられます。
まとめ
働く年金世代は年々増えており、その傾向は現在のコロナ禍でも変わりありません。また国は働く意欲のある高齢者を後押しする政策を各方面で推進しており、今後もそれを拡充していくものと思われます。「定年後は家でのんびり過ごす」というライフプランは、ひと昔の時代では当たり前でしたが、今となって実現できる方は、もはや少数派となるでしょう。
「定年を迎えて生きがいを失ってしまった。」「将来のことを考えると仕事をしないと生活費が尽きてしまうのではないか。」「定年退職して家にいる旦那に働きに出て欲しい。」など、高齢者と仕事の話はいろいろと話題が尽きないテーマではありますが、今後もより働きやすい状況へと変化していくと思います。ぜひ、健康のためにも積極的に働きに出ることを検討してみてはいかがでしょうか。
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KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。
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