22/02/03
高齢者の医療費控除の注意点 年10万円以上超えなくても適用になる?
高齢になると若いときとは違い、病気やケガで医療費が膨らんでいく傾向にあります。しかし、医療費控除で税金が安くなることは知っていても、医療費が10万円を超えないから申告できないとあきらめてしまっている方が多くいます。
しかし、実は医療費が10万円を超えなくても申告できる場合があります。申告をしないままだと所得税だけではなく、住民税にも影響します。
今回は、勘違いしやすいシニア世代の医療費控除の注意点を確認していきましょう。
医療費控除で所得税が還付になる場合
医療費控除では、1月1日から12月31日までの1年間で、家族全員の医療費の合計が高額になった場合に、確定申告をすることで所得税の還付を受けることができます。ここでいう家族とは「生計を一にする親族」なので、同居の親族以外にも、別居で仕送りしている親族の医療費も計上できます。
医療費控除は計算方法が決まっています。その年にかかった医療費の合計額から生命保険や損害保険から受け取った給付金や、健康保険から受け取る高額療養費などを差し引いて、実質負担した金額が10万円を超えた場合に医療費控除が利用できます。ただし、その年の総所得金額等が200万円未満の場合には、「総所得金額等の5%」を超えると利用できます。
なお、医療費控除の上限は、200万円です。つまり、退職して年金収入だけという人なら、医療費の負担が10万円以下でも医療費控除が受けられる場合があります。
●医療費控除の計算式
その年に支払った医療費の合計額-保険金や給付金で補填される金額-10万円*=医療費控除(上限200万円)
*その年の総所得金額等が200万円未満の場合は、総所得金額等の5%の金額
勘違いしやすい医療費控除の対象
医療費控除は、病院にかかったり、処方された薬を薬局でもらったりする以外にも、市販薬を自分で購入した場合にも対象になります。また異常や重大な病気が見つかった場合の健康診断や人間ドック代も対象になります。通院で電車やバスなどの交通機関を利用した場合の交通費や、公共交通機関が利用できない場合のタクシー代も、医療費控除の対象になります。一方、自家用車で通院した場合のガソリン代や駐車場代は、医療費控除の対象外です。
高齢者になると、病院以外にも介護サービスを利用することが多くなりますが、介護保険制度で提供された一定の施設や居宅サービスの自己負担額も医療費控除の対象になるものがあります。
たとえば、訪問介護や訪問でのリハビリテーション、数日間施設で介護を受ける短期入所療養介護(ショートステイ)、医療機関での通所リハビリテーションなどは医療費控除の対象になります。利用している介護サービスが医療費控除の対象になる場合には、領収書に「医療費控除対象額○○円」という記載があります。わからない場合には、国税庁のタックスアンサー内で、チャットで相談することができます。また、寝たきりの状態が6か月以上続き、医師から「おむつ使用証明書」を発行してもらった場合には、おむつ代も医療費控除の対象にすることができます。
見落としやすいものとして、入院などの付き添いの費用があげられます。入院してしまえば付き添い保健師、看護師、准看護師によるお世話がありますが、高齢になると自分ひとりで入院するのは難しいことがあります。この付き添い料は、医療費控除の対象にすることができます。しかし、同じ付き添い料でも、親族に支払う付き添い料は、医療費控除とすることができません。
医療費控除の計算方法と申告の注意点
医療費控除を計算する場合には、家族1名ごとに利用した医療機関や薬局別に医療費を計算していきます。そして、家族全員分の医療費を合計して、一定額を超えた場合には、医療費控除が利用できます。
このとき、医療費から差し引く給付金等は、給付にかかる病気やケガにかかるものに限定されます。
たとえば、その年にはガンで入院して、通院で眼科にかかっているケースで考えてみましょう。ガンが見つかり、大病院に入院して保険会社から入院費用より多い金額の入院給付金をもらった場合には、差し引くのはそのガンの入院費のみで、眼科の医療費から差し引く必要はありません。眼科の医療費からも差し引いてしまうと、医療費控除できる金額が減る(医療費控除できない)と勘違いするもとになりますので、注意しましょう。
また医療費控除となるのは、1月1日から12月31日に実際に支払った医療費の金額が対象になります。その年の未払い分は、実際に支払った年の医療費控除となります。支払った日付がベースになることを覚えておきましょう。
所得税の確定申告の期間は、2月16日から3月15日までと限られているため、計算が間に合わず期限が過ぎてしまうと申告ができないと勘違いしている方も多いようです。しかし、あきらめる必要はありません。医療費控除はすでに納めた所得税の還付なので、もし忘れていても5年前の分までさかのぼって申告することができます。
まとめ
確定申告で医療費控除を受けるためには、医療費または医療品購入費の明細書を確定申告書に添付して提出する必要があります。このほかにも医療保険者から交付を受けた医療費通知を添付することによって、医療費控除の明細書の記載を簡略化することができます。領収書そのものの添付は不要です。
また確定申告期限から5年間は、税務署長から領収書の提示や提出を求められた場合には応じなければならないので、申告が終わっても領収書等の保管はきちんとしておきましょう。
年金が主な収入源になると、わずかな支出でも負担を感じます。自治体では医療費控除後の住民税の税額をもとに介護保険料などを決めています。確定申告は手間がかかりますが、税金以外のところにも影響するので、医療費控除を利用しましょう。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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