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22/01/11

相続・税金・年金

「年金特別徴収」で天引きされるお金、初年度の年金は大きく減る可能性大

「年金特別徴収」で天引きされるお金、初年度の年金は大きく減る可能性大

老後に支給される年金は、生活を支える重要なお金となります。ところで、年金からは税金や社会保険料が天引きされるので、その分手取りが減ってしまうのをご存じでしょうか?今回は、年金からの源泉徴収や特別徴収について説明します。特に、年金生活初年度は手取りが減ることに注意しておきましょう。

年金受給者の税金や社会保険料は年金から天引き

個人の所得に対してかかるのが、所得税や住民税といった税金。働いて得た収入に税金がかかることは誰もが認識していますが、国などから支給される公的年金にも税金がかかることは意外と知らない人も多いのではないでしょうか?

また、年金受給者も公的医療保険や介護保険に加入することになるため、社会保険料の負担があります。

65歳以上の年金受給者の税金や社会保険料は、支給される年金から天引きされる仕組みになっています。額面どおりの年金が受け取れるわけではないことを知っておきましょう。

以下、年金から天引きされるものを、具体的に説明します。

●所得税

公的年金は「雑所得」として課税されるため、年金から源泉徴収が行われます。65歳未満で年金受給額108万円以下の場合、65歳以上で年金受給額158万円以下の場合には、所得税が課税されないため源泉徴収はありません。

・年金のうちどの部分に課税される?
雑所得のうち公的年金や一定の企業年金については、「公的年金等控除」が受けられます。このほかに、社会保険料控除や配偶者控除など各種の控除が受けられるので、控除分を差し引いた所得が課税対象になります。
なお、配偶者控除や扶養控除を受けるには、扶養親族等申告書の提出が必要です。扶養親族等申告書は毎年9月頃送られてくるので、定められた期限までに提出しましょう。

・源泉徴収される額は?
源泉徴収税額は、年金額から各種控除を差し引きした所得の5.105%(復興所得税含む)です。

・確定申告はどうなる?
所得税はその年の所得にかかるものなので、1年終わらないと税額が確定しません。源泉徴収される税額は仮の金額ですから、原則的には確定申告が必要です。ただし、年金受給者については、確定申告の負担を減らすために、確定申告不要制度が設けられています。以下の①②の条件をいずれもみたす場合には、確定申告をしなくてもかまいません。

①公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下
②公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下


●住民税

公的年金受給者の住民税は、特別徴収として年金から天引きされます。公的年金の受給額が年間18万円未満の場合には、特別徴収はありません。

・年金特別徴収の仕組み
公的年金受給者の住民税は、納付書を使って払う「普通徴収」ではなく、年金から天引きされる「特別徴収」です。年金特別徴収では、前年度の収入にもとづき計算された住民税を4月から翌年3月までの1年間に払います。公的年金は偶数月に2か月分が支給されるため、住民税もそれに合わせて徴収されます。つまり、1年分の住民税を年6回に分けて支払うということです。

・特別徴収される金額
住民税の年金特別徴収額は、毎回均等ではありません。住民税の年税額が決まるのはその年の6月頃。年度初めには今年度の税額が決まっていないため、8月までは仮の金額を引き落とすのです。また、初年度については、特別徴収の準備に時間がかかるため、8月までは天引きがありません。
以上のような事情から、年金受給者の住民税の納付金額は、次のようになっています。

(1) 初年度
・年税額の2分の1を、6月と8月の2回に分けて普通徴収(納付書または口座振替)
・年税額の残り2分の1を、10月、12月、2月の3回に分けて特別徴収

(2) 2年目以降
・前年度の税額の2分の1の額を、4月、6月、8月の3回に分けて特別徴収(仮徴収)
・今年度の税額から仮徴収した金額を差し引きした額を10月、12月、2月の3回に分けて特別徴収(本徴収)

・年金受給初年度の住民税は高くなる!
所得税や住民税は、収入に応じて税額が決まります。ここで注意しておきたいのは、所得税は今年度の収入にもとづき計算しますが、住民税は前年度の収入を基準に計算するという点です。会社を退職して年金生活に入った場合、初年度の住民税は、会社員時代の収入に対応した額になります。つまり、年金生活になって収入は減ったのに、初年度だけは住民税が高くなってしまうということが起こるのです。

さらに、年金特別徴収のしくみにより、住民税をまとめて払わなければならない月があるため、戸惑ってしまうことがあります。
たとえば、年金生活初年度の住民税の年税額を36万円とすると、各月の支払金額は次のようになります。

・年金生活初年度の住民税の支払金額(年税額36万円の場合)

上の表を見るとわかるとおり、年金生活初年度の6月と8月の支払金額が大きくなってしまいます。10月、12月、2月は、少し支払金額が減ります。2年目からは住民税の年税額自体減りますから、初年度の6月と8月さえ乗り切れば、後はだんだん楽になるでしょう。

●社会保険料

年金受給者が加入する社会保険は、介護保険と公的医療保険(国民健康保険または後期高齢者医療制度)です。いずれも年金受給額が18万円を超える場合に、年金からの特別徴収が行われます。

・介護保険料
65歳以上の人は、介護保険の第1号被保険者とされ、保険料が年金から特別徴収されます。

・国民健康保険料または後期高齢者医療保険料
65歳以上75歳未満の人は国民健康、75歳以上の人は後期高齢者医療の被保険者となり、保険料が年金から特別徴収されます。

PayPay証券

年金特別徴収が中止される場合とは?

年金特別徴収をされると、年金の手取りが減ってしまいます。納付書を使って払いたい人もいるかもしれませんが、希望により特別徴収を中止してもらうことは原則的にできません。
一方、本人の意思とは関係なく、年金特別徴収が中止される場合があります。年金特別徴収が中止された場合には、特別徴収される予定だった税額は普通徴収に切り替えて徴収されます。
年金特別徴収が中止されるのは、次のようなケースです。

・特別徴収されている年金の支給が停止された場合
たとえば、年金の現況届を期限までに提出しないと、年金の支払いが停止になることがあります。複数の年金受給権があり、いずれかを選択しなければならない場合にも、選択しない年金の支給が停止されます。このように、年金の支給が停止された場合には、特別徴収も停止します。

・特別徴収の対象となる税額が変更された場合
年度の途中で特別徴収税額が変更になった場合、特別徴収は中止され、普通徴収に切り替わることがあります。

・年金受給権を担保に借入をしている場合
高齢者が年金受給権を担保に融資を受けられる年金担保融資制度があります。年金担保融資制度を利用すると、返済が完了するまで特別徴収がされません。

・年金受給額が減った場合
年金の受給調整などで年金受給額が減って、特別徴収額を下回るようになった場合には、特別徴収が中止されます。

・介護保険料が特別徴収されなくなった場合
住民税の特別徴収は、介護保険料が特別徴収されている人を対象に行われることになっています。介護保険料の特別徴収がなくなると、住民税の特別徴収も行われません。

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まとめ

年金からは税金などが差し引きされるため、額面と手取りには差があります。特に、会社を退職して年金生活に入った場合、年金特別徴収の仕組みにより、初年度は住民税の負担を大きく感じます。年金をもらうようになっても税金はかかるということを認識しておき、あらかじめ資金を準備しておきましょう。

森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー

Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。

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