22/11/06
離婚後の「年金分割」が受けられない6つのケース
離婚時の年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金保険料の納付記録を、夫婦で分け合う手続きです。婚姻期間中に払った厚生年金保険料が少ない側は、離婚時に相手の保険料納付記録を分けてもらうことで、将来の年金受給額を増やせます。
年金分割が受けられれば離婚後の安心感も大きくなりますが、どんな夫婦でも年金分割ができるわけではありません。今回は、夫から年金分割を受けたいと考えている妻を想定し、年金分割が受けられないのはどんなケースかを説明します。
「年金分割」が受けられないケース1:夫が自営業者(個人事業主)
年金分割は、公的年金のうち、厚生年金を分割してもらうものです。夫が自営業者(個人事業主)の場合、厚生年金に加入していないので、妻は年金分割を受けられません。
ただし、婚姻期間中、夫が会社等に勤務していた期間がある場合には、年金分割を受けられる可能性があります。
「年金分割」が受けられないケース2:「合意分割」が必要なのに夫と合意していない
年金分割には、「3号分割」と「合意分割」の2種類があります。
3号分割は、2008年(平成20年)4月以降第3号被保険者(専業主婦や扶養内のパート)だった人を対象とするものです。3号分割は相手の同意がなくても手続きが可能で、納付記録の2分の1を受け取れます。しかし、3号分割の対象となる部分以外の年金は、相手の同意を得て合意分割をする必要があります。
たとえば、婚姻期間中ずっと共働き(双方厚生年金加入)だった夫婦の場合には、合意分割しかできません。そのため、離婚時に夫婦間で年金分割の合意をした上で、年金事務所で手続きする必要があります。夫と合意していなければ、妻は年金分割を受けられません。
なお、合意分割をしたいのに夫と話し合いができない場合には、離婚前であれば離婚調停、離婚後2年以内であれば年金分割調停(または審判)を家庭裁判所に申し立てることができます。家庭裁判所で合意分割が成立すれば、年金分割が受けられます。
「年金分割」が受けられないケース3:婚姻期間中、夫より多く稼いでいる
年金分割は、婚姻期間中に払った厚生年金保険料が多い側から少ない側へ分割するものです。厚生年金保険料は、収入が多い人ほど多く払っています。たとえ離婚時に妻の方が夫より収入が少なくても、婚姻期間中をトータルして妻の方が多く稼いでいれば、妻は年金分割を受けられません。この場合、もし夫から年金分割を請求されれば、妻から夫の方に年金の一部を渡さなければならないことになります。
「年金分割」が受けられないケース4:離婚後2年以内に手続きしていない
年金分割を受けるには、離婚後2年以内に年金事務所で標準報酬改定請求の手続きをしておかなければなりません。老後に年金をもらう段階になってから手続きするものではないので、くれぐれも注意しておきましょう。
なお、年金分割の合意のため家庭裁判所で年金分割調停(または審判)を行っている間に2年を経過してしまった場合には、「調停成立(または審判確定)から6か月以内」に期限が延長されます。
「年金分割」が受けられないケース5:離婚後夫が死亡したのに1か月以内に手続きしていない
上に記載したとおり、年金分割の手続き期限は離婚後2年以内です。ただし、離婚した夫が死亡した場合には、夫の死亡後1か月以内に手続きしていないと、年金分割が受けられません。2年もあるからと手続きを後回しにしていると、知らない間に元夫が亡くなっていて手続きできなくなる可能性があります。
離婚した元夫が亡くなっても、すぐに連絡が来ないこともあるでしょう。年金分割の手続きは離婚後速やかにすませておくのがおすすめです。
「年金分割」が受けられないケース6:年金に加入していた期間が10年未満
公的年金をもらうには、国民年金または厚生年金に加入して保険料を払った期間が10年以上なければなりません。公的年金の受給資格がなければ年金分割を受けることも不可能です。
まとめ
離婚するときには年金分割が受けられるかどうかを確認しておきましょう。特に、婚姻期間中専業主婦(夫)や扶養内パートだった期間が長い人は、年金分割を受けなければ、老後の年金がかなり少なくなってしまいます。
年金分割が受けられる場合、離婚後2年以内に年金事務所で手続きをしなければなりません。配偶者との合意が必要なケースもあるので注意しておきましょう。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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